不動産投資に興味はあるものの、自己資金の少なさや物件管理の手間が心配で一歩を踏み出せない。そんな悩みを持つ方にとって、少額から参加できる「不動産クラウドファンディング」は心強い選択肢です。特に築年数が古い「築古」物件は利回りが高く、リノベーションによる価値向上も狙えます。本記事では、築古物件を対象としたクラウドファンディングの仕組みから始め方、2025年度の最新制度までをわかりやすく解説します。
不動産クラウドファンディングの仕組みを押さえる

まず押さえておきたいのは、不動産クラウドファンディング(以下、クラファン)が「不動産特定共同事業法」に基づく投資商品だという点です。事業者が複数の投資家から資金を集め、取得・運用した物件の賃料や売却益を分配します。投資家は匿名組合契約などを通じ、運用は事業者に一任するため管理負担がありません。
一方で、クラファンは株式や投資信託と異なり流動性が限定的です。途中解約ができない案件も多く、運用期間中は資金がロックされます。また、元本保証はなく、事業者の倒産リスクも存在します。それでも最低一万円程度から参加できる点は魅力で、総務省家計調査が示す平均貯蓄額を踏まえれば、多くの人が投資経験を積みやすい仕組みです。
さらに、2023年改正の不特法によりオンライン完結型の小規模クラファンが拡大しました。2025年10月時点ではプラットフォーム数が60社を超え、築古物件に特化した案件を扱うサービスも登場しています。つまり、投資家は自分の投資スタイルに合った案件を選びやすい環境が整っています。
築古物件がクラファンで注目される理由

ポイントは、築古物件の高いキャッシュフローとリノベーション余地です。築20年以上のマンションや中古戸建ては取得価格が低いため、賃料とのバランスが良く利回りが伸びやすい傾向にあります。国土交通省「不動産価格指数」によると、築25年超の物件価格は新築比で平均45%まで下落していますが、賃料は60%水準で推移しています。
また、リノベーションによるバリューアップが期待できる点も見逃せません。古い間取りを現代的に改修することで賃料を引き上げ、最終的に売却益を狙う手法が一般化しました。クラファンではこのリノベーション費用も含めて資金を集めるため、投資家は少額で付加価値向上のメリットを享受できます。
一方で、築古物件特有の修繕リスクや空室リスクも存在します。設備の故障やアスベスト対応などで追加コストが発生する可能性があります。しかし、運用計画に長期修繕積立金や空室率シナリオが盛り込まれていれば、想定外の損失を抑えられます。重要なのは、案件概要で提示されるコスト試算を細かく確認する姿勢です。
プロジェクトの選び方と始め方の手順
実は、クラファンを始める際に最も効果的なのは、プラットフォームの比較から入ることです。運営会社の財務状況、募集実績、償還率をチェックし、信頼性を見極めましょう。金融庁の登録事業者リストで正規登録されているか確認する習慣も欠かせません。
次に案件の内容を精査します。利回りだけでなく、物件所在地、築年数、運用期間、優先劣後構造を必ず確認してください。優先劣後構造とは、損失が発生した際にまず事業者が一定割合を負担する仕組みで、劣後出資比率が高いほど投資家保護が厚くなります。築古案件では20%超が一つの目安です。
口座開設から投資完了までの流れはオンラインで完結します。本人確認書類の提出後、審査に通れば専用口座が開設され、募集開始と同時に入金・申し込みを行います。人気案件は数分で満額になることもあるため、事前に資金を準備しておくとスムーズです。
最後に、クラファン特有の分配スケジュールを理解しておきましょう。多くの案件は四半期ごとに配当が行われますが、築古のリノベーション案件では工事完了後に一括分配となるケースもあります。予定表を確認し、手元資金の流れを把握することがリスク管理の第一歩です。
リスク管理と運用中に意識したいポイント
重要なのは、分散投資でリスクを薄める戦略です。築古物件は高利回りが魅力な反面、個別リスクが大きくなりがちです。そこで、運用期間やエリアが異なる複数案件に少額ずつ投資し、資金を分散させることでポートフォリオ全体の変動幅を抑えられます。
また、運用レポートの定期確認を習慣化しましょう。クラファン事業者は法律上、四半期ごとに運用状況を報告する義務があります。空室率の推移や修繕進捗が当初計画とずれていないかをチェックし、問題の兆候を早期に把握する姿勢が大切です。もし懸念点があれば、問い合わせ窓口を通じて情報を集めましょう。
さらに、税務面の備えも欠かせません。クラファンの分配金は「雑所得」に区分され、年20万円を超えると確定申告が必要です。損失が出た場合は同一年のクラファン所得と相殺できますが、他の所得との損益通算はできません。会計ソフトや税理士を活用し、記録を適切に残すことでトラブルを防げます。
最後に、再投資戦略を持つことが長期的な成績を左右します。分配金をそのまま生活費に充てるのではなく、新たな築古案件へ回すことで複利効果が生まれます。目標利回りに届かない場合はポートフォリオを見直し、常に改善を図る姿勢が収益最大化につながります。
2025年度の制度と法規制の最新動向
まず押さえておきたいのは、2025年度も継続する「不動産特定共同事業税制の優遇措置」です。一定の要件を満たすクラファン事業者に出資した個人投資家は、配当から源泉徴収される所得税が20.315%で固定されます。期限は2027年3月までで、現時点では延長の見通しは未定です。
一方、住宅省エネ改修促進税制が2025年度まで延長され、築古物件の断熱改修を行うプロジェクトは補助金を活用できます。クラファン案件においても、事業者が補助金申請を行うことで工事費の最大半額が補填され、投資家利回りが向上するケースがあります。ただし、対象となるのは断熱性能をBELS★3以上に高める計画が承認された案件に限られます。
法規制面では、2024年に施行された改正電子取引法が引き続き適用され、クラファン事業者は電子交付書面の保存義務が強化されています。投資家はマイページで重要書類を何度でも閲覧できるため、目論見書や事業計画書のアップデートを定期的に確認しましょう。
最後に、金融庁は2025年8月にクラファン事業者向けガイドラインを改訂し、劣後出資比率の下限を10%から20%に引き上げました。築古物件は追加コストが読みにくい点から、投資家保護を厚くする狙いです。この改訂により、今後募集される案件は従来よりも安全性が高まると期待されています。
まとめ
築古物件を対象にした不動産クラウドファンディングは、少額から高利回りを狙える魅力的な投資手段です。まずは仕組みと法的枠組みを理解し、信頼できるプラットフォームを選ぶことが成功の第一歩となります。さらに、優先劣後構造や運用レポートを通じてリスクを把握し、分散投資と再投資を継続することで安定した運用が可能になります。最後に、2025年度の税制優遇や補助金を活用すれば、利回りをもう一段引き上げる余地もあります。ぜひ本記事を参考に、自分に合った築古クラファン案件で投資体験をスタートしてみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp/
- 総務省 家計調査 2024年版 – https://www.stat.go.jp/
- 金融庁 不動産特定共同事業者登録一覧 – https://www.fsa.go.jp/
- 経済産業省 住宅省エネ改修促進税制 2025年度版 – https://www.meti.go.jp/
- 金融庁 クラウドファンディング事業者ガイドライン 2025年改訂 – https://www.fsa.go.jp/guideline