不動産の税金

私のREIT利回り体験談から学ぶ、安定収益を得るための5つの視点

不動産投資に興味はあるものの、多額のローンや管理の手間に不安を抱く人は少なくありません。そこで脚光を浴びているのが上場不動産投資信託、いわゆるREIT(リート)です。少額から分散投資できるうえ、配当として受け取れる利回りの水準も魅力です。本記事では、私自身の投資体験を交えつつ、REIT利回りの基本と銘柄選びのポイントを丁寧に解説します。読み終えた頃には、「まず何を調べ、どの順序で資金を動かせばいいのか」が具体的にイメージできるはずです。

REITのしくみと利回りの読み方

REITのしくみと利回りの読み方のイメージ

重要なのは、REITの利回りが「分配金利回り」と呼ばれ、株式の配当利回りに近い性格を持つ点です。分配金は賃料収入が原資となるため、不動産の稼働率や賃料改定の動向に左右されます。

まず、日本取引所グループのデータによると、2025年10月時点の東証REIT全体の平均分配金利回りは3.9%前後で推移しています。これは長期国債利回り(約1.1%)を大きく上回り、利回り差が2.8ポイントあることを意味します。つまり、低金利が続く日本ではインカムゲイン(配当収入)を確保しやすい投資商品といえます。また、REITは投資法人税制により利益の90%以上を分配すれば法人税が実質非課税になるため、税引き前の収益をそのまま受け取れる仕組みも利回りを底上げしています。

一方で、利回りが高い銘柄ほどリスクが高い場合もあります。賃貸需要が弱い地方オフィスやテナントの入れ替えが頻繁な商業施設を中心に運用しているREITは、空室率が上昇すると分配金が減る恐れがあります。利回りの数字だけで判断せず、物件ポートフォリオの中身と運営方針を必ず確認しましょう。

私のREIT投資体験談:失敗と成功の分岐点

私のREIT投資体験談:失敗と成功の分岐点のイメージ

まず押さえておきたいのは、私自身が初めてREITを購入した2014年当時、利回りを数値のみで比較し、最も高い銘柄を選んだ点です。結果として半年後の分配金は期待どおりでしたが、その後テナントの退去が相次ぎ、基準価額は15%下落しました。数字の裏側を読み取れなかった苦い経験です。

次に取った行動は、物件の立地と分散を重視する方針への転換でした。都心オフィス主体のREITと、物流施設に特化したREITを組み合わせて10万円ずつ積み立てたところ、2020〜2024年のコロナ禍でも配当はほぼ維持され、含み損も限定的でした。運用報告書を読み込み、賃貸契約の平均残存年数やテナント属性をチェックする習慣が功を奏した形です。

実は、この期間の平均利回りは3.6%と決して高くありません。しかし安定したキャッシュフローが得られ、暴落局面でも精神的な負荷が小さかったことで長期保有が可能になりました。つまり、利回りとリスクのバランスを取ることが、中長期での成功要因だったと言えます。

銘柄選びで重視したい4つの数字

ポイントは、分配金利回り以外にも必ず確認すべき指標があることです。以下の4項目を押さえると銘柄の健全性が見えてきます。

まずNOI利回りです。NOI(Net Operating Income)は不動産の純収益を示し、この数値が高いほど実力値としての収益性が高いといえます。目安として4%以上あれば優秀とされますが、エリアや用途による差も大きいため同業種内で比較しましょう。

次にLTV(Loan to Value)です。総資産に対する借入金の割合を示し、50%を超えると財務リスクが高まります。2025年10月のREIT平均LTVは約43%で、ここより低い銘柄は保守的な運用と判断できます。

三つ目は含み益率です。含み益が多いと物件売却時に利益を確定しやすく、特別分配金の原資にもなります。運用報告書で「物件含み益率10%以上」を目安にすると安全性が増します。

最後に平均稼働率です。住居系で95%、オフィス・物流系で97%を下回る銘柄はテナント確保に課題がある可能性があります。日本不動産研究所の市場レポートでは、東京23区オフィスの平均稼働率が95.8%とされるため、これを下回る銘柄は注意が必要です。

2025年度NISAとREIT投資の相性

実は、2024年から恒久化された新NISA制度は2025年度も継続しており、年間投資枠は成長投資枠で240万円あります。REITは上場株式と同様に非課税の対象となるため、分配金にかかる20.315%の税負担を回避できます。例えば利回り4%のREITを100万円購入すると、通常は年間4万円の分配金に対し約8,000円が税金として差し引かれます。NISA口座ならこれがそのまま手取りになるため、実質利回りが約0.8ポイント上乗せされる計算です。

一方で、NISA枠は再利用できない点がネックです。価格変動が大きい銘柄を短期売買すると枠を浪費する恐れがあります。ゆえに、安定配当を見込める大型銘柄を中心に長期保有する戦略が合理的です。金融庁も「長期・積立・分散」を推奨しており、REITはその理念に合致しています。

市場環境と今後の戦略

まず、国内REIT市場は物価上昇と金利動向のはざまで揺れています。日本銀行は2025年4月にマイナス金利を終了しましたが、長期金利の上昇は緩やかで、借入コストは依然として低水準です。これにより、REITの財務負担は限定的であり、分配金の安定につながっています。

また、物流施設への需要はEC市場の拡大が支えており、国土交通省の統計では2024年度の国内EC化率が9.2%に達しました。これを背景に、物流特化REITの稼働率は平均98%と高い水準です。一方、地方オフィスやホテル系は需要回復が鈍く、銘柄選別の難易度が増しています。

ポイントは、用途を分散しつつ、借入金比率が低い銘柄を組み合わせるポートフォリオ戦略です。私は2025年に入り、新たにヘルスケア施設特化型REITを購入し、医療モールや介護施設の長期賃貸契約による安定収入をポートフォリオに加えました。結果として年間利回りは3.8%ながら、景気変動に左右されにくいキャッシュフローを手に入れています。

まとめ

この記事では、REITの利回りを正しく理解する方法と、私の体験談を通じて学んだ失敗回避のコツを紹介しました。数字が高い利回りには裏がある場合があり、物件の質や財務の健全性を見抜く力が欠かせません。まずはNOI利回り、LTV、含み益率、稼働率の4指標を確認し、NISAを活用した長期・分散投資を検討しましょう。安定配当を受け取りながら市場の値上がり益も狙えるREITは、資産形成の強力な選択肢です。今日から月1万円でも構いません。小さく始めて経験を積むことで、着実にキャッシュフローを拡大していきましょう。

参考文献・出典

  • 日本取引所グループ(JPX) – https://www.jpx.co.jp
  • 日本不動産研究所「不動産投資家調査」2025年10月版 – https://www.reinet.or.jp
  • 金融庁「新しいNISAの概要」 – https://www.fsa.go.jp
  • 日本銀行「長期金利推移」 – https://www.boj.or.jp
  • 国土交通省「物流施設市場動向調査」 – https://www.mlit.go.jp

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