資産運用の運用益には、ご存知の通り大きく分けてインカムゲインとキャピタルゲインの2種類があります。
現在の日本での不動産投資は、基本的にインカムゲインがメインだと言われますが、キャピタルゲインも無視できない存在です。
というのは、一般の金融商品と比べて不動産はそもそも金額が大きくなりがちなことと、借り入れでレバレッジをかけることが多く、自己資金のみでの運用以上に売却益(損)が出がちだからです。
運用の成否にキャピタルゲイン(ロス)の及ぼす影響が大きいことを考えると、不動産投資をする際に欠かせない視点に、「継続保有の可否を意識すること」が挙げられます。
というのは、市況を予測することは金融商品等と同様、簡単ではないからです。価格が安い時に購入して高い時に売却できれば良いのですが、思うようにいかないことも多々あります。だとすれば保有中、思いがけない市況の下落にも耐えられるかどうか、を判断基準のひとつにしたいところです。
仮に不動産市況が悪い時でも、ローン支払いが継続でき保有し続けられれば、市況の回復を待つことが可能です。市況や自身がどのような状況でも、ローン支払い継続ができるかどうか、ということを想定しながら購入のシミュレーションをしておくとよいでしょう。
市況が回復するまでの数年、着実にローン返済を進め、残債が減った状況で売却できれば手元のキャッシュが多く残ることも考えられます。
というわけで、不動産を中長期で保有するために着目しておきたい点を挙げてみます。
【物件の立地について】
物件の良し悪しが大事なことも当然ですが、それ以上に、自身では変えようのない「立地・インフラ」に着目しておくことは必須です。日々の生活を送る上で利便性が高いところは、資産価値が落ちにくいことは言うまでもありませんが、長い目で見るのであれば現在の状況だけではなく将来についても調べておきたいところ。 将来の開発計画について、役所等で確認すればある程度はわかるはずです。
将来のことに加えて、その街が出来た経緯やその後の推移といった、地盤も含めた周辺の過去についても確認しておくと良いでしょう。ご承知のように、年々自然災害も増えています。これまで以上に、地盤にも注意を払ったエリア選びをしたいところです。
また少々視点は異なりますが、都市圏では、ターミナル駅からのアクセスが便利、ということも頭に入れておきたいところです。ターミナル駅に貸家を探しに来た方に、仲介さんが、「手頃な賃料で、ターミナル駅から比較的アクセスが良い物件」として紹介してくれる場合があるからです。
【需給バランスについて】
いくら「立地が良い」といっても、需要以上に供給が多くなれば、空室発生や家賃減少の可能性は大きくなります。大規模な開発地域は、話題性もあり一時的に注目を浴びがちですが、それだけ供給数も増える確率が高くなります。大切なのは、双方のバランスが持続するかどうかです。
需要を見るには、まずは人口流出入の推移を自治体のHPなどで確認しておく必要があります。一過性のものではなく、持続性があるかどうかという視点で見ましょう。その際、全体の人口だけではなく、世代別までチェックできると良いでしょう。特に、若い層の流入を数年単位で見ておきたいところ。若い世代の存在は、街の活性化に大きな影響があるため、若年層の流入次第で5年後、10年後の街の様子は変わってくるはずです。
【自治体の特徴について】
その自治体が現在どのような状況にあって、将来何に力を入れていこうとしているのか、また予算組みを見ておくことも、将来の街づくりに関してのヒントとなりそうです。
資金力のある自治体は、それだけ住民に還元することも可能ですから、住民が恩恵を受けるサービス等を調べることで、住みやすいかどうかの判断材料のひとつにもなるでしょう。
例えば、子育て世帯にやさしいというキーワードと共に実際に様々な支援や対策に取り組むことで、ファミリー世帯に支持され、若い層の人口が増えている地域もあります。
HPや広報紙などを定期的に確認することや、他の自治体との比較もしてみると、強みや特徴がわかりやすいと思います。
不動産市況には必ずサイクルがありますが、市況の良し悪しを予測することは難しいといえます。
市況の大きな流れを見極めることは大切ですが、それに振り回され過ぎない、長い目で見てご自身のタイミングに合わせてできる不動産投資・賃貸経営を目指すことが、結局は上手くいくのではないかと感じます。