古いアパートは空室が多くて収益が不安定、そんなイメージを持っていませんか。確かに築年数が経つほど物件価値は下がりやすいものの、適切に運用すれば新築にはない魅力が見えてきます。実際、マネーフォワードの調査によると、築古アパートは「節税効果」「利回りの高さ」「少額からの投資可能」という三つのメリットが注目されています。
本記事では「築古アパート投資のメリット」を軸に、購入から運営、出口戦略までのポイントを詳しく解説します。購入価格を抑えながら安定収入を得たい初心者の方にこそ役立つ内容なので、ぜひ最後までお読みください。
築古アパート投資で得られる5つのメリット

築古アパートへの投資には、新築物件では得られない独自の強みがあります。ここでは代表的な5つのメリットについて、具体的な数字を交えながら説明していきます。
初期費用を抑えた低価格での取得
築古アパートの最大の魅力は、購入価格の安さにあります。新築物件と比較すると、築古アパートは2〜4割ほど安い価格帯で取引されることが多く、都心近郊でも土地値に近い水準で取得できるケースがあります。たとえば新築で6,000万円の物件であれば、同等の立地・間取りの築古物件なら3,600万〜4,800万円程度で購入できる可能性があるのです。
自己資金を2割投入すれば融資額が小さくなり、毎月の返済負担も軽減されます。結果としてキャッシュフローがプラスになりやすく、次の投資に向けた資金を蓄えやすい構造が生まれます。不動産投資の入り口として、築古アパートは非常に取り組みやすい選択肢といえるでしょう。
高い利回りを実現できる仕組み
投資において重要な指標となるのが利回りです。利回りには大きく分けて「表面利回り」と「実質利回り」の二種類があります。表面利回りは年間家賃収入を物件価格で割ったもので、実質利回りはそこから管理費や修繕積立金などの経費を差し引いて計算します。
築古アパートの場合、購入価格が低いため表面利回りは8〜12%程度になることも珍しくありません。新築アパートの表面利回りが4〜6%程度であることを考えると、約2倍の利回りが期待できるわけです。もちろん、経費を差し引いた実質利回りで比較することが重要ですが、取得価格の低さが高利回りの源泉となっているのは間違いありません。
減価償却による節税効果
築古アパートの隠れた利点として、減価償却費を活用した節税があります。木造建物の法定耐用年数は22年ですが、耐用年数を超えた築古物件では「法定耐用年数×20%」のルールが適用され、残存年数を約4年で償却できます。つまり、購入後すぐに多額の経費計上が可能になり、課税所得を大幅に圧縮できるのです。
特に給与所得が高い会社員の方にとって、この減価償却費は実際のキャッシュアウトを伴わない経費として税負担を軽減する強力な手段となります。国税庁のタックスアンサーでも、この耐用年数の計算ルールが明示されているため、正確な数字を把握したうえで活用するとよいでしょう。
2025年度の補助金・融資優遇制度
築古アパートへの投資では、公的な支援制度を活用することで実質的な投資効率を高められます。2025年度の住宅省エネ改修補助金では、断熱窓や高効率給湯器の導入に対して1住戸あたり最大45万円の補助が受けられます。賃貸オーナーも対象に含まれるため、工事内容が補助要件に合致すれば自己負担を大きく減らせるのです。
融資面でも変化が見られます。中古市場活性化の流れを受け、近年は築30年を超えた物件でも、修繕計画さえ明確であれば20年融資が通るケースが増えています。金利は1.5〜2.0%台が中心となっており、返済期間と家賃収入のバランスを適切に設計すれば、十分なキャッシュフローを確保できます。
固定資産税・都市計画税の負担軽減
見落としがちなメリットとして、保有コストの安さがあります。築古物件は評価額が低いため、固定資産税が抑えられる傾向にあります。都市計画税も固定資産評価額に連動するため、築年数が経過した物件ほど長期保有コストが安くなるのです。これらの税負担の軽減が、手取り収益の向上に直接つながります。
築古アパート投資のリスクと具体的な対策

メリットの多い築古アパート投資ですが、当然ながらリスクも存在します。重要なのは、リスクを正しく把握したうえで、適切な対策を講じることです。Ki-groupの分析でも指摘されているように、リスクは事前の準備と計画で大幅に軽減できます。
空室リスクと賃料下落への対応
築古アパートでまず心配されるのが空室リスクです。ただし、国土交通省の住宅統計によると、2025年8月時点の全国アパート空室率は21.2%で、前年より0.3ポイント改善しています。この数字からも分かるとおり、古い物件だからといって必ずしも空室が増えるわけではありません。
空室対策の基本は、管理会社との緊密な連携にあります。周辺の家賃相場を毎年確認し、募集条件を柔軟に見直すことで長期空室を防げます。賃借人の視点で考えると、家賃と設備のバランスが重要です。築浅より家賃が低めでも、エアコンやインターネット環境など入居者が重視するポイントが整っていれば、十分に選ばれる可能性があります。
修繕費用の想定と計画的な積立
築年数が経過した建物では、修繕費用の発生は避けられません。屋根の防水工事や給水管の交換など、構造部分に関わる大規模修繕は10〜15年のスパンで費用が発生します。重要なのは、これらの支出を計画的に想定しておくことです。
購入時には修繕積立として100万〜200万円を確保しておくと安心です。クラウド型の管理ソフトを活用すれば、支出予定と実績を一目で比較でき、資金繰りの見通しが立てやすくなります。突発的な修繕が必要になった場合でも、事前の準備があれば慌てずに対応できるでしょう。
融資条件の確認と金融機関選び
築古物件への融資では、金融機関ごとに条件が異なるため、事前の確認が欠かせません。同じ金利でも、元利均等払いと元金均等払いでは返済総額に差が出ます。試算ソフトを使い、空室率20%・金利1%上昇のシナリオでも黒字を維持できるか確認しておくと、長期的な資金繰りに自信が持てます。
日本政策金融公庫の融資事例集を参考にすると、築古物件でも融資を受けた実例が複数紹介されています。融資審査では修繕計画の明確さが評価されるため、購入前から計画を練っておくことをおすすめします。
利回り計算と収支シミュレーションの方法
築古アパート投資を検討するうえで、収支シミュレーションは欠かせません。マネーフォワードでも推奨されているように、表面利回りだけでなく実質利回りまで計算することで、実際の収益性を正確に把握できます。
表面利回りと実質利回りの計算式
表面利回りの計算式は「年間家賃収入÷物件価格×100」です。たとえば、年間家賃収入が300万円で物件価格が3,000万円であれば、表面利回りは10%となります。一方、実質利回りは「(年間家賃収入−年間経費)÷(物件価格+購入諸費用)×100」で計算します。
年間経費には管理費、修繕積立金、固定資産税、火災保険料などが含まれます。購入諸費用としては、登記費用、仲介手数料などで物件価格の6〜8%を見込むのが一般的です。先ほどの例で年間経費が60万円、購入諸費用が210万円だとすると、実質利回りは約7.5%になります。
具体的な数値でのシミュレーション例
ここでは、埼玉県の築32年アパートを例にシミュレーションしてみましょう。aoyama-e.comで紹介されている事例では、補助金120万円を活用することで実質利回りを11%から12.5%に高めることに成功しています。
たとえば物件価格2,500万円、年間家賃収入280万円の物件があったとします。年間経費が50万円、購入諸費用が175万円であれば、実質利回りは約8.6%です。ここで省エネ改修補助金を活用して120万円の設備投資を行い、賃料を月額3,000円アップできれば、年間36万円の増収になります。投資回収期間は約3年3ヶ月で、その後は純粋な収益増加となるのです。
物件選びで確認すべきチェックポイント
築古アパート投資の成否は、物件選びの段階でほぼ決まるといっても過言ではありません。立地、建物の状態、管理履歴など、複数の観点から慎重に判断する必要があります。
立地と人口動態の分析
まず重視すべきは立地です。地方であっても、大学や工業団地の周辺は賃貸需要が底堅い傾向にあります。総務省の経済センサスなどを活用して地域の雇用状況を調べ、将来的な人口動態も確認しておきましょう。人口減少が進むエリアでは、長期保有のリスクが高まります。
駅からの距離や周辺の生活利便施設も重要な判断材料です。コンビニやスーパーが徒歩圏内にあるか、最寄り駅までのアクセスはどうか。これらの情報は入居率に直結するため、現地を実際に歩いて確認することをおすすめします。
建物構造とインスペクションの活用
築古物件では建物の状態を正確に把握することが不可欠です。専門家によるインスペクション(建物状況調査)を依頼し、構造部分の劣化状況や修繕の必要性を確認しましょう。報告書をもとに今後の修繕費用を見積もることで、資金計画の精度が大きく向上します。
特に注意すべきは、屋根の防水状態、外壁のひび割れ、給排水管の劣化、シロアリ被害の有無です。これらの項目に問題があれば、購入後すぐに大きな出費が発生する可能性があります。事前に把握しておけば、価格交渉の材料にもなるでしょう。
管理履歴と入居者属性の確認
過去の管理履歴も重要な判断材料です。どのような修繕が行われてきたか、入居率はどの程度で推移してきたかを確認しましょう。レントロール(賃借人一覧表)を入手して、現入居者の属性や契約期間もチェックしておくと安心です。
長期入居者が多い物件は、家賃が相場より低く設定されている可能性があります。退去後に適正賃料に引き上げる余地があるかどうかも、収益性を判断するポイントになります。
出口戦略の重要性と具体的な選択肢
投資を始める段階で出口戦略を考えておくことは、リスクコントロールの観点からも重要です。Ki-groupの分析でも指摘されているように、出口の選択肢を複数持っておくことで、状況変化にも柔軟に対応できます。
売却のタイミングと想定価格
築40年を過ぎたあたりが、建て替えか売却かを検討する一つの目安となります。周辺で再開発が進み地価が上昇しているエリアであれば、更地価格を意識した売却益を狙えるかもしれません。逆に人口減少が進む地域では、早めの売却で資金回収を図る選択肢も検討すべきです。
売却価格の見積もりには、キャップレート(還元利回り)を用いる方法が一般的です。年間純収益をキャップレートで割ることで、理論上の物件価値を算出できます。地域の取引事例を参考にしながら、現実的な売却価格を想定しておきましょう。
建て替えと解体費用の試算
売却ではなく建て替えを選ぶ場合、解体費用の見積もりが必要です。木造アパートの解体費用は、一般的に坪あたり3〜5万円程度が目安となります。延床面積200坪の建物であれば600万〜1,000万円の費用がかかる計算です。
建て替えによって収益性が向上する見込みがあるかどうか、シミュレーションを行ったうえで判断しましょう。立地によっては、更地のまま土地を売却したほうが有利なケースもあります。
築古アパート投資が向いている人・向いていない人
どのような投資にも向き不向きがあります。マネーフォワードでも投資家のセグメント化が推奨されているように、自分に合った投資かどうかを見極めることが大切です。
築古アパート投資が向いている人
給与所得が高く、節税効果を重視する方には築古アパート投資が適しています。減価償却による課税所得の圧縮効果が大きいためです。また、初期投資を抑えて不動産投資を始めたい初心者の方にも向いています。購入価格が低いため、最初の一歩を踏み出しやすいでしょう。
ある程度の手間をかけられる方も、築古アパートに向いています。リノベーションによる価値向上や、管理会社との密なコミュニケーションを通じて、物件の収益性を高める余地があるからです。
築古アパート投資が向いていない人
一方、修繕リスクを避けたい方や、手間をかけずに運用したい方には新築アパートのほうが適しているかもしれません。築古物件では突発的な修繕が発生する可能性があり、その都度対応が必要になります。完全に手放しで運用したい方には、負担に感じられるでしょう。
融資条件に不安がある方も、注意が必要です。築古物件への融資は金融機関によって条件が厳しい場合があります。自己資金が十分に用意できない場合は、まず資金計画を見直すところから始めることをおすすめします。
まとめ
築古アパート投資には、購入価格の安さ、高い利回り、減価償却による節税、補助金を活用した価値向上など、多くのメリットがあります。一方で、空室リスクや修繕費用といった課題は、計画的な準備と情報収集によって十分に軽減できます。
まずは立地調査と資金計画を丁寧に行い、利回りシミュレーションで収支を具体的に把握してみてください。リノベーションによる付加価値向上や出口戦略も、投資を始める前に検討しておくことをおすすめします。正しい知識と準備があれば、築古アパートは安定収益を生む頼もしい資産になるはずです。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅統計調査 – https://www.mlit.go.jp/statistics/
- 総務省 統計局 経済センサス – https://www.stat.go.jp/
- 中小企業庁 住宅省エネ改修補助金概要(2025年度) – https://www.chusho.meti.go.jp/
- 日本政策金融公庫 融資事例集 – https://www.jfc.go.jp/
- 国税庁 タックスアンサー 減価償却 – https://www.nta.go.jp/