不動産投資を始めたいけれど、予算や利回りのイメージが持てず一歩を踏み出せない──そんな悩みを抱える方は少なくありません。特に「5000万円前後で高利回りを実現できる収益物件はあるのか」という疑問は初心者の定番です。本記事では、東京23区の平均利回りデータや2025年時点の融資環境を踏まえながら、投資額5000万円で高利回りを目指す具体的な戦略を解説します。読み進めることで、物件選びから融資交渉、リスク管理までの流れを体系的に理解できるはずです。
高利回りの基準と5000万円の絶妙な価格帯

ポイントは、利回りの水準を客観的データで把握し、5000万円という金額の特徴を理解することです。日本不動産研究所によると、2025年時点の東京23区平均表面利回りはワンルームで4.2%、アパートで5.1%にとどまります。
まず、高利回りとは平均利回り+2%程度を一つの目安にすると判断がしやすくなります。具体的には、表面利回り7%以上であれば「高利回り」と呼ぶ投資家が多い状況です。5000万円の予算であれば、築20年前後の木造アパートや地方中核都市のRCマンション一室など、物件の選択肢が一気に広がります。また、購入価格が1億円を超える物件に比べ融資審査が通りやすく、自己資金のハードルも抑えられる点が強みです。言い換えると、5000万円は初心者でも挑戦しやすい上限と、プロが利回りを伸ばしやすい下限が交わる絶妙なボリュームゾーンと言えます。
次に、収益計算のイメージを持つことが重要です。例えば、購入価格5000万円、表面利回り8%の木造アパートなら年間家賃収入は400万円になります。ここから管理費や固定資産税など年約80万円を差し引くと、実質利回りは6.4%程度です。空室率を10%想定しても5%以上を確保できるため、平均利回りとの差別化が可能になります。つまり、運営コストを正確に把握し、購入前に実質利回りを試算することで、高利回りの目標達成は現実的な計画になります。
立地選定で利回りを守る発想

まず押さえておきたいのは「賃貸需要の強さが利回りを支える」という原則です。高利回りを狙って周辺相場よりも賃料が高い物件を選んでも、入居者が決まらなければ意味がありません。
重要なのは、人口流入が続くエリアで物件を探すことです。総務省の住民基本台帳によれば、2025年も東京23区と政令指定都市の中心部は転入超過が続いています。たとえば、23区内でも再開発が進む北区や足立区は坪単価が比較的抑えられ、7%超の利回り物件がまだ見つかります。一方、郊外駅徒歩15分以上の物件は表面利回りが9%を超えていても、将来の人口減により空室リスクが急増する恐れがあります。
また、ワンルーム規制の有無もチェックが必要です。条例が厳しい区では新築供給が制限されるため、中古ワンルームの需給バランスが改善しやすい傾向にあります。この現象を利用すれば、築古物件でも家賃を下げすぎずに高稼働を維持できます。具体的に現地を歩いて、平日の昼間に周辺の賃貸看板を確認し、空室が少ないかどうかを調べると実態がわかるでしょう。
さらに、近隣の大学や工業団地といった施設の存在が長期的な需要を下支えします。募集サイトで同エリアの成約賃料を調べ、購入予定物件が家賃を維持できるかを検証してください。まとめると、立地は単に駅距離だけでなく、人口動向と規制、生活インフラの総合評価で判断することが、高利回りを継続させる鍵になります。
融資戦略とキャッシュフロー計算
実は、高利回りを実現しても融資条件が悪ければ手残りは減ってしまいます。そのため、金融機関選びと返済計画は物件選定と同じくらい重要です。
まず、2025年現在のメガバンク投資用ローン金利は変動で2.3〜3.5%が目安です。一方で、信用金庫やノンバンクなら3.5〜4.5%台でもフルローンに近い融資額が期待できます。自己資金を20%入れて金利を下げるか、自己資金を抑えて高金利を受け入れるかは、キャッシュフローの試算で判断する必要があります。たとえば、5000万円を金利3%・期間25年で借りると毎月返済は約23万円です。年間家賃収入400万円の場合、経費後の手取りが約140万円残り、自己資金500万円なら投資利回り28%になります。
ポイントは、長期修繕費と金利上昇リスクを織り込んだシミュレーションを作ることです。空室率15%、金利+1%のストレスをかけてもキャッシュフローが黒字なら、安定運用の可能性が高まります。また、2025年度の住宅ローン減税は投資用に適用されませんが、不動産取得税軽減や登録免許税の特例は引き続き利用できます。これらの諸費用を削減すれば、自己資金を少しでも事業用資金に回す余地が生まれるでしょう。
最後に、元利均等返済と元金均等返済の違いも理解してください。前者は初期返済が軽い一方、元金の減りが遅くなります。後者は返済額が段階的に減るため、長期的なキャッシュフローが安定しやすいメリットがあります。実際に複数パターンで試算し、自身のリスク許容度に合ったプランを選ぶことが成功への近道です。
リノベーションと管理で利回りを高める
重要なのは、購入後に利回りを押し上げる工夫を続ける姿勢です。築古物件では、表面利回りを上げた状態で購入しても、内装や設備が古ければ退去のたびに家賃が下落します。そこで、入居者ニーズに沿ったピンポイントのリノベーションが効果を発揮します。
例えば、単身者向け物件ならインターネット無料設備と宅配ボックスの設置が高い費用対効果を示します。設置費用が合計60万円でも、月額3000円の家賃アップが実現できれば、年間3万6000円の増収で約17年で投資回収が完了します。家賃維持だけでなく募集期間短縮につながるため、実質利回りはさらに向上します。
一方、管理会社の選定も収益に直結します。手数料は月額賃料の5%が一般的ですが、リーシング力の高い会社なら空室期間を短縮し、結果的に総収入を増やします。管理委託契約を締結する際は、入居者募集の広告費や修繕手数料の上限を事前に明確化し、収支計画にズレが出ないよう注意してください。
加えて、大規模修繕の長期計画を立てると、急な出費を抑えられます。屋根や外壁は15年周期が目安とされ、先に積立を行うと資金繰りが安定します。つまり、リノベーションで収入を底上げしつつ、計画的な修繕で支出を平準化することが、高利回り物件を維持するうえで欠かせない戦略なのです。
2025年度の制度活用とリスク管理
まず、制度面で押さえておきたいのは、不動産取得税や固定資産税の軽減措置が2027年3月まで延長されている点です。新耐震基準を満たす住宅用建物を取得した場合、課税標準額が1,200万円控除されるため、5000万円クラスの物件でも税負担を数十万円単位で削減できます。また、2025年度の省エネ改修促進税制を利用し、断熱工事を行えば翌年の所得税から控除が受けられます。こうした施策は頻繁に改正されるため、取得前に自治体窓口で最新情報を確認する習慣をつけましょう。
一方で、制度に頼りすぎないリスク管理も重要です。自然災害が増える昨今、火災保険に加えて地震保険の加入が欠かせません。保険料は高く見えても、震度6強以上の被害を受けた場合の修繕費用を考えれば実質的なコスト削減になります。さらに、長期金利の上昇リスクにも備える必要があります。日本銀行がイールドカーブ・コントロールを微調整した2024年以降、長期金利は緩やかに上昇傾向です。借り換え特約や繰り上げ返済を活用できるよう、手元流動性を確保しておくと安心感が違います。
最後に、出口戦略を意識しておくと資金計画に柔軟性が生まれます。築30年超の木造アパートは、減価償却が進む一方で建物評価が下がりやすいため、取得から10年程度で売却益を取りに行く戦略が有効です。逆に、構造がRCで立地が良い区分マンションは、長期保有でインフレヘッジを図れる場合があります。このように、物件の性質と市場サイクルを踏まえた出口戦略を最初に決めておくことが、予期せぬ環境変化に対する最大の保険になるでしょう。
まとめ
ここまで、5000万円で高利回りを目指す不動産投資の具体策を見てきました。平均利回りを上回る物件を選び、堅実な立地分析と融資交渉を行うことで、実質利回り5〜6%台の安定運用が可能になります。さらに、リノベーションと計画的管理で収支を底上げし、制度活用と保険でリスクを抑えれば、長期的なキャッシュフローは大きく改善します。まずは、本記事で紹介したシミュレーションを参考に、自身の資金計画を書き出してみてください。知識を行動に移すことで、あなたの不動産投資は着実に前進します。
参考文献・出典
- 日本不動産研究所 – https://www.reinet.or.jp
- 総務省 住民基本台帳人口移動報告 – https://www.soumu.go.jp
- 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp
- 東京都 建築物ワンルーム条例一覧 – https://www.metro.tokyo.lg.jp
- 国税庁 令和7年度税制改正の概要 – https://www.nta.go.jp
