不動産の税金

もめない・損しない「不動産 相続」の進め方:2025年版ガイド

不動産を相続するとき、「税金はいくらになるのか」「兄弟でどう分ければいいのか」「物件を売るか貸すか」など、悩みは尽きません。現金と違い、不動産は分けにくく、評価額や税制も複雑です。本記事では、2025年12月時点で有効な制度と実務に基づき、初心者でもつまずかないための考え方を整理します。読めば、相続発生前に準備すべきことから、発生後の運用まで一連の流れがイメージでき、自分と家族に合った選択肢を判断しやすくなるでしょう。

相続の基本と不動産特有の課題

相続の基本と不動産特有の課題のイメージ

まず押さえておきたいのは、相続財産を正確に把握し、誰がどの割合で取得するか決める「遺産分割」がスタートラインになる点です。民法では法定相続分が定められていますが、遺言書があればそれが優先されます。現金であれば均等に分けやすい一方、不動産は場所や用途が異なり、評価額も変動するため、公平な分割が難しくなります。

加えて、不動産を共有名義にすると、売却や賃貸の判断に全員の同意が必要になります。時間が経つほど共有者は増え、意思決定が重くなるため、専門家は「単独名義か持分調整」を勧めることが多いです。遺言や生前贈与であらかじめ名義を整理しておけば、相続発生後のトラブルを減らせます。

さらに、相続登記が2024年施行の改正不動産登記法で義務化され、2027年4月までの猶予期間が設けられています。放置すると10万円以下の過料となるため、登記手続きは速やかに行う必要があります。つまり、不動産 相続では「分割」「名義」「登記」の三つを早めに決めることが肝心です。

2025年度の税制と評価額の考え方

2025年度の税制と評価額の考え方のイメージ

重要なのは、相続税は現金ではなく評価額に課税される点です。不動産の相続税評価額は「路線価方式」または「倍率方式」で算定され、市場価格の八割程度が目安とされています。国税庁路線価図によると、都市部では2020年代前半から緩やかな上昇が続き、2025年度も平均2〜3%の伸びが見込まれています。評価額が上がれば、同じ物件でも納税額が増えるため要注意です。

相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人」で、2025年度も変更はありません。たとえば相続人が配偶者と子二人なら4,800万円までは課税されません。ただし都心部のマンションを複数所有している場合、この枠を超えるケースが増えています。

自宅については「小規模宅地等の特例」が2025年度も有効で、被相続人の自宅を配偶者や同居親族が引き継ぐと、330㎡まで評価額を80%減額できます。これにより高額物件でも課税対象から外れることが多いのですが、別居の子が取得すると適用されない点に注意が必要です。また、賃貸用物件は200㎡まで50%減額が可能で、複数棟所有の大家にとって節税効果が大きいといえます。

一方、令和6年度税制改正で導入された「納税猶予の特例住宅取得資金」については、2025年度も存続していますが、期限は2027年12月までと決まっています。適用要件が厳しく、利用には税理士による詳細なシミュレーションが欠かせません。

節税対策としての生前対策のコツ

実は、相続発生後よりも生前に動いたほうが節税の選択肢は広がります。たとえば「暦年贈与」は年間110万円まで非課税で贈与でき、長期にわたり活用すれば財産を計画的に移転できます。2024年の改正で相続時精算課税と併用しやすくなり、2025年度は65歳未満の親からも利用しやすくなりました。

もう一つの手段が「不動産の建替えや賃貸化」です。更地にアパートを建てると、土地は貸家建付地評価となり、建物は固定資産税評価額で算定されるため、市場価格に比べて評価が圧縮されます。たとえば都内200㎡の更地を賃貸併用住宅にすると、相続税評価額を3〜4割下げられるケースがあります。ただし、空室リスクと建築コストが伴うため、収支計画を慎重に立てることが前提です。

保険商品を利用した納税資金の確保も有効です。被相続人を契約者・被保険者とし、相続人を受取人に指定すれば、保険金は「500万円×法定相続人」の非課税枠が使えます。納税資金を現金で準備しづらい場合、終身保険で備える方法が選ばれています。

なお、2025年4月施行の「相続土地国庫帰属制度」は、不動産を手放したい相続人の救済策ですが、宅地の場合は管理費や管理困難度によって「負担金」が発生します。手続きには申請から審査まで半年以上かかるため、利用を考えるなら早めに専門家に相談しましょう。

相続後の運用シナリオとキャッシュフロー管理

ポイントは、相続した不動産を「売る」「貸す」「自分で使う」のどれが家計にプラスかを数字で比較することです。国土交通省『不動産価格指数』によれば、2025年は地方圏でも小幅な価格上昇が続いており、売却益を狙えるチャンスがあります。ただし、売却すると取得費加算の特例を使わない限り譲渡所得税がかかります。相続発生から3年以内なら取得費を上乗せできるため、この期限を見逃さないようにしましょう。

賃貸に回す場合、家賃収入から管理費・修繕費・固定資産税を差し引いたキャッシュフローが黒字になるか試算します。たとえば築20年、家賃12万円のマンション一室を引き継いだ場合、年間収入144万円に対し、空室率10%、経費30%で計算すると実質手取りは約90万円です。これが相続税の延納や老後資金に充てられるかが判断基準となります。

一方、自宅として使う場合には、住居費の節約効果と将来の売却・賃貸可能性を考え合わせます。住宅ローン控除は取得時のみですが、持ち家はインフレ局面で資産価値の保全にも寄与します。ただし、維持費と固定資産税を上回るメリットがあるか精査することが大切です。

これらのシナリオを比較する際は、税理士が作る「資産シミュレーションシート」を活用すると便利です。未来の金利や家賃下落率を複数パターンで試算し、最悪ケースでも資金ショートしないか確認すると、意思決定がぐっと楽になります。

専門家の選び方と手続きの流れ

まず、相続開始後は「税理士」「司法書士」「不動産会社」の三者を中心にチームを組むとスムーズです。税理士は申告と節税プラン、司法書士は名義変更登記、不動産会社は査定と運用提案を担当します。それぞれ得意分野が異なるため、ワンストップで請け負う事務所でも担当者の資格と実務経験を確認しましょう。

専門家を探すときは、日本税理士会連合会や全国司法書士会連合会の無料相談窓口を活用すると、初回面談で費用感や提案内容を比較できます。最近はオンライン面談に対応する事務所も増えており、遠方に住む相続人でも情報共有しやすくなりました。

ここで手続きの大まかな流れを整理します。

  • 死亡届提出から10か月以内に相続税申告・納税
  • 相続人調査と遺産分割協議書の作成
  • 不動産の相続登記(2027年4月までに義務化)
  • 納税資金の確保と延納・物納の検討

この順序を意識すれば、期限超過でペナルティを受ける心配が減ります。費用については、登記は固定資産税評価額の0.4%が登録免許税、税理士報酬は財産総額の0.5〜1%が相場です。報酬体系が明朗かどうかも専門家選びの重要な基準になります。

まとめ

本記事では、不動産 相続が抱える三つの壁「分割の難しさ」「税制の複雑さ」「運用判断の多様さ」を整理し、2025年度の制度に沿って具体策を紹介しました。生前から名義や評価額を見える化し、節税対策と納税資金を確保しておくことで、相続後の選択肢は広がります。まずは家族で財産目録を共有し、信頼できる専門家とシミュレーションを行うことが第一歩です。面倒に見えても、早めの準備が家族の資産を守り、次世代の暮らしを豊かにします。

参考文献・出典

  • 国税庁 路線価図・評価倍率表 2025年度版 – https://www.rosenka.nta.go.jp
  • 国土交通省 不動産価格指数(2025年10月公表値) – https://www.mlit.go.jp
  • 総務省 改正不動産登記法ガイドライン 2024年版 – https://www.soumu.go.jp
  • 日本税理士会連合会 相続税申告手続きQ&A 2025年 – https://www.nichizeiren.or.jp
  • 全国司法書士会連合会 相続登記義務化特設ページ – https://www.shiho-shoshi.or.jp

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