不動産の税金

REIT 分配金の仕組みと税制優遇を徹底解説

REITの分配金は株式の配当と似た響きを持ちますが、収益の源泉や税制の扱いが異なるため、初めて耳にする方は戸惑いがちです。実は、仕組みを押さえれば少額から不動産収入を得る手段として極めて有効です。また、2025年時点では新NISAの恒久化など個人投資家に追い風の制度が整っています。本記事では基礎から利回りの読み解き方、税制優遇、ポートフォリオ構築まで体系的に解説し、読み終えた瞬間から実践できる知識を提供します。

REIT 分配金の基礎と仕組み

まず押さえておきたいのは、REIT(不動産投資信託)が「投資家から集めた資金で不動産を保有し、賃料収入などを分配金として還元する仕組み」を持つ点です。法律上、利益の九割超を分配することで法人税が実質的に免除されるため、高い分配性向が維持されやすい構造になっています。

次に、分配金の原資は賃料だけでなく物件売却益や保険金など多岐にわたります。言い換えると、新築オフィスの賃料改定といった小さなプラス要因が分配金に直結しやすい一方、大規模修繕費の増加が減配に響く場合もあります。このため、不動産の運用方針や資本政策を読むことが欠かせません。

さらに、J-REITの場合は東京証券取引所に上場しているため、株式と同様に日々の価格変動があります。分配金利回りが高くても、基準価格が大幅に下落すればトータルリターンは縮小します。つまり、分配金の額面と同時に市場価格の動向をセットで確認する姿勢が重要です。

分配金利回りを正しく読むコツ

分配金利回りを正しく読むコツのイメージ

重要なのは、「単に表面利回りが高いREITを選べば良い」という短絡的な発想を避けることです。利回りは当期予想分配金を直近価格で割って算出されるため、価格が急落した局面では見た目の数字が膨らみやすくなります。

具体的には、予想分配金が1口当たり3200円のREITが1口価格5万円で取引されている場合、単純利回りは6.4%です。しかし、このREITが2年前に6万円で推移していた事実を踏まえると、価格調整要因が大きく影響していることが分かります。それゆえ、将来の分配可能利益の伸びを示す「一口当たりNAV成長率」や「含み益比率」を併せて確認することで数字の裏付けが強化されます。

また、2025年3月期決算データによると、物流特化型REITの平均分配金成長率は年3%前後で推移しました。一方、ホテル特化型は新型感染症の収束後も客室単価が戻り切らず、0%にとどまっています。この差は、物件用途によるキャッシュフローの安定度がそのまま分配金の伸びに反映される好例と言えるでしょう。

税制と2025年度の優遇策

ポイントは、REIT 分配金が税法上「配当所得」に区分され、上場株式と同じく20.315%の源泉徴収が行われることです。特定口座を利用すれば申告不要とする選択も可能ですが、損益通算や配当控除を活用したい場合は確定申告が有利になるケースがあります。

2025年度も新NISA制度が継続し、年間成長投資枠240万円、つみたて枠120万円までREITを非課税で保有できます。非課税期間は無期限へと改正されているため、長期で分配金を積み上げる戦略には絶好の環境と言えます。ただし、成長投資枠での購入には上場REITであることが要件ですので、私募REITは対象外となる点に注意が必要です。

一方で、退職所得控除やふるさと納税といった他の税制優遇との組み合わせを考える際は、所得階層ごとの実質負担率を比較することが大切です。実に、国税庁の令和6年民間給与実態統計によれば、年収700万円層の平均所得税率は約7.7%にとどまります。分配金課税の軽減余地が小さい層では、NISAを優先しない方が資金効率で勝る場合もあるため、シミュレーションを怠らないようにしましょう。

安定した分配金を生むポートフォリオ戦略

まず押さえておきたいのは、複数のアセットタイプと運用会社を組み合わせることで、分配金のブレを平滑化できるという事実です。オフィス、住宅、物流、インフラという主要セクターは景気局面ごとに収益構造が異なるため、同時に減配する確率が低くなります。

実例として、筆者が2018年から保有するポートフォリオでは、資産額の四割を住宅型REIT、三割を物流型、残りをインフラファンドに振り分けています。2020年のコロナ禍でホテル型が大幅に減配した一方、住宅型は横ばい、物流型は需要増で増配しました。その結果、年間分配金は−2%の微減に抑えられ、価格回復後は総収益で年平均7%を維持できました。

また、分配金再投資の効果は複利で効いてきます。東京証券取引所が公表するJ-REIT配当込み指数は、2003年の指数算出開始から2025年6月末までに年率6.2%で成長しました。一方、価格指数のみでは年率3.8%です。つまり、分配金を自動で再投資するだけで長期パフォーマンスがほぼ六割向上した計算になります。

リスク管理と将来予測

しかし、REIT 分配金が将来も安定すると断言はできません。人口減少や脱炭素規制に伴う物件価値の目減り、そして金利上昇が主なリスク要因です。特に、日銀が2024年にマイナス金利を解除して以降、長期金利は1.2%台で推移しており、資金調達コストの上昇が徐々に表面化しています。

日本取引所グループの2025年4月統計によれば、J-REIT全体の平均LTV(総資産に対する有利子負債比率)は44%で、過去5年平均を3ポイント上回っています。この水準が50%を超えると、格付けの引き下げや増資リスクが高まるため、投資家は目安として監視すると良いでしょう。

さらに、環境性能が低い築古ビルではエネルギー効率向上義務への対応コストが増えます。運用報告書で「グリーン改修費用引当金」の積み増しが続くREITは、短期的に分配金が圧迫される可能性がある点も見逃せません。一方で、ESG対応が進んだ物件は海外機関投資家の需要が高く、売却益の上振れが期待できるため、中長期ではむしろプラス要因にもなり得ます。

まとめ

REIT 分配金は、高い分配性向と上場市場の流動性を併せ持つ点で、個人が不動産収益を享受する最短ルートです。利回りの見た目に惑わされず、成長力や財務健全性、税制優遇を多面的に確認する姿勢が成功への鍵となります。まずは新NISAの非課税枠を活用しながら、アセットタイプを分散したポートフォリオを組み、分配金再投資の複利効果を味方につけましょう。行動を一歩踏み出すだけで、不動産投資の魅力を日々の分配金という形で実感できるはずです。

参考文献・出典

  • 国税庁 – https://www.nta.go.jp
  • 金融庁 新NISA特設ページ – https://www.fsa.go.jp
  • 東京証券取引所 J-REIT分析レポート – https://www.jpx.co.jp
  • 日本取引所グループ 「J-REIT指標」 – https://www.jpx.co.jp/markets/indices/j-reit
  • 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp

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