不動産の税金

不動産 相続 相続税対策で資産を守る最新ガイド

不動産を相続する場面では、納税資金の不足や共有トラブルなど、思わぬ課題が一度に押し寄せます。私は長年にわたり数百件の相談を受けてきましたが、悩みの多くは「具体的に何から手を付ければいいのか分からない」という点に集約されます。本記事では、不動産 相続 相続税対策に絞り、評価額を下げる仕組みから2025年度の最新特例までを丁寧に解説します。読み終えるころには、自分に合った対策の方向性が見えてくるはずです。

不動産が相続税対策に向く理由

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重要なのは、土地や建物を活用すると課税対象額そのものを抑えられる点です。国税庁の評価ルールでは、現金と異なり不動産には「路線価」や「借家権割合」など複数の控除要因が設定されています。つまり同じ1億円でも、現金をそのまま残す場合と賃貸アパートという形で持つ場合では、課税対象額に大きな差が生まれます。

まず基礎控除を確認しましょう。2025年12月現在、相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人」です。配偶者と子2人なら4,800万円まで非課税となります。しかし都市部の自宅や複数の投資用物件を持つ家庭では、この枠を簡単に超えてしまいます。そこで不動産の評価減を上手に使い、課税価額を圧縮する戦略が有効になります。

一方で、評価額が低くても現金化しづらい点は注意が必要です。納税は原則として現金一括納付のため、手元資金を完全に不動産へ振り替えると「払えない」という状況になりかねません。相続開始後に慌てて売却しないよう、あらかじめ納税資金を残す設計が欠かせません。

評価減を最大化する具体的な方法

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ポイントは「貸す」「分ける」「建てる」の三つの視点を組み合わせることです。貸家を建てれば借家権割合が30%程度控除され、さらに小規模宅地等の特例を使うと宅地評価が最大50%から80%減額されます。例えば200㎡の土地に賃貸マンションを建築したケースでは、現金1億円を持つのに比べて課税対象が半分以下になる例も珍しくありません。

さらに、不動産を複数の区分所有に分けることで、一人当たりの相続分を細かく調整できます。相続人が共有名義になると将来の売却で意見が割れやすいため、最初から部屋ごとに名義を分けるほうが実務上スムーズです。分筆や区分登記には登記費用がかかりますが、長期的なトラブル防止効果を考えると十分に回収できる投資といえます。

また、生命保険の活用も忘れてはいけません。死亡保険金は「500万円×法定相続人」の非課税枠があり、納税資金を確保しつつ評価減を図れる手段です。不動産と保険を組み合わせることで、物件を売らずに納税できる設計が完成します。

2025年度の特例と最新制度を押さえる

まず押さえておきたいのは、2025年度も小規模宅地等の特例が継続している点です。被相続人の自宅は330㎡まで80%評価減、賃貸用宅地は200㎡まで50%評価減が受けられます。適用には「相続開始前3年以内に新たに貸付事業を開始した土地は除外」といった細かい要件があるため、開始時期の計画が重要です。

一方、2025年度税制改正では「相続時精算課税制度」の使い勝手が改善されました。110万円の年次贈与非課税枠が併用可能となり、生前に不動産を分散贈与しつつ、将来の相続時にまとめて精算する柔軟な設計が可能です。適用を受けるには贈与年の翌年3月15日までに届け出が必要なので、カレンダーに期限を記入しておきましょう。

さらに、環境配慮型の賃貸住宅を新築する場合、2025年度は「住宅省エネ2025事業」の補助金が利用できます。賃貸オーナーがZEH水準の共同住宅を建築すると、1戸あたり最大45万円補助され、建築コストを抑えつつ将来の空室対策にも役立ちます。補助金申請は予算上限に達し次第終了するため、設計段階で施工会社と連携しておくと安心です。

維持と出口で失敗しないための視点

実は、相続税対策に成功しても、その後の資産管理でつまずく例が少なくありません。賃貸経営は長期にわたり修繕費や空室リスクが発生します。固定資産税や都市計画税は毎年かかるため、キャッシュフローが赤字になれば元も子もありません。国土交通省の家賃動向調査によれば、築20年を過ぎると平均家賃は新築時の約70%まで低下します。この下落に耐えられる資金計画が不可欠です。

出口戦略としては、相続から5年以内に資産の組み替えを検討するのが一案です。市場が好調なタイミングで一部物件を売却し、管理の手間が小さい都心ワンルームやREITに組み替えることで、次世代への負担を減らせます。売却益が出た場合は譲渡所得税が課税されますが、取得から5年超で税率が低くなる「長期譲渡」の扱いを受けられる点を踏まえてスケジュールを組みましょう。

また、家族信託を利用すると、高齢の親が認知症になった後でも物件の売却・建替えを受託者が柔軟に行えます。2025年12月現在、家族信託に対する相続税の扱いは「受益者連続信託課税方式」に一本化されており、信託を用いても節税効果は生じません。ただし、意思決定をスムーズにする管理手法としては有効なので、専門家と連携しながら検討すると良いでしょう。

まとめ

結論として、不動産 相続 相続税対策は「評価を下げつつ現金を残す」バランス設計が鍵になります。貸家建築や特例の活用で課税価額を抑え、生命保険や預貯金で納税資金を確保すれば、急な売却を避けられます。さらに2025年度の改正点や補助金を取り込み、維持管理と出口戦略まで視野に入れることで、家族の資産は次世代へ滑らかに引き継がれます。まずは自宅と所有物件の評価額を把握し、信頼できる税理士や不動産のプロに早めに相談する一歩を踏み出してください。

参考文献・出典

  • 国税庁 – https://www.nta.go.jp
  • 国土交通省 不動産市場動向調査 – https://www.mlit.go.jp
  • 財務省 税制改正概要2025 – https://www.mof.go.jp
  • 環境省 住宅省エネ2025事業 – https://www.env.go.jp
  • 日本不動産研究所 不動産投資家調査 – https://www.reinet.or.jp

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