投資初心者の多くが「新築は利回りが低い」と聞き、不安を抱えています。しかし実際には、物件の選び方や資金計画次第で安定したキャッシュフローを生み出すことが可能です。本記事では、新築物件ならではの強みと注意点を整理し、利回りを最大化するための実践的な視点を提示します。読み進めることで、表面利回りと実質利回りの違いから、2025年度に活用できる制度までを一通り理解できるはずです。
利回りの基本を押さえる

まず押さえておきたいのは、「利回り」という言葉が複数の意味を持つ点です。表面利回りは家賃収入を購入価格で割った単純な指標で、計算が容易な一方、実際の手取りを示しません。一方、実質利回りは税金や管理費、修繕費などを差し引いて算出するため、キャッシュフローの正確な姿を映します。
日本不動産研究所の2025年調査によると、東京23区の平均表面利回りはワンルーム4.2%、ファミリータイプ3.8%、木造アパート5.1%です。新築の場合は設備保証や空室発生リスクの低さが加わるため、実質利回りが中古より下がりにくい傾向があります。つまり表面利回りだけで判断すると、長期的な収益機会を見落としかねません。
加えて、利回りは金利変動や修繕周期の影響を受けます。利上げ局面では返済比率が上がり、実質利回りが圧縮される可能性があります。したがってシミュレーション時には金利上昇2%でも黒字が続くかを確認することが重要です。保守的な前提を置くことで、将来のリスクに備えた計画を立てられます。
新築物件の特徴と収益構造

実は、新築物件には初期投資が高いというハードルがある一方で、諸経費が抑えられるという利点があります。仲介手数料は売主物件なら無料、固定資産税の新築減額措置で3年間は税負担が軽減されます。加えて主要設備がメーカー保証の期間内であれば、突発修繕費がほとんど発生しません。
設備が新しいことで入居者満足度が高まり、賃料下落ペースが緩やかになります。特に都心部では設備グレードが賃料に直結しやすく、築浅プレミアムが3〜5年間続くケースも少なくありません。空室期間が短いほど実質利回りは向上するため、賃料設定では早期満室と長期安定のバランスを図ることが肝要です。
さらに、新築は減価償却期間が長い点も見逃せません。木造なら22年、鉄筋コンクリートなら47年と法定耐用年数が長く、年間の経費計上額は中古より小さくなります。これは短期の節税効果こそ弱まるものの、長期保有前提で考えると帳簿上の含み益を圧縮しにくいメリットにつながります。つまり出口戦略としての売却時にも残存価値を確保しやすいのです。
エリア選定で利回りを底上げする
ポイントは、エリアの人口動態と賃貸需要を細かく分析することです。総務省の住民基本台帳によると、2020〜2025年に人口が増加した自治体は首都圏と政令指定都市周辺に集中しています。新築で高い家賃を設定するには、単身者またはファミリー層の流入が継続するエリアが不可欠です。
駅徒歩10分圏内は依然として空室率が低く、賃料下落も緩やかです。また複数路線利用が可能な駅周辺はDINKs層の人気が高く、家賃を1万円上乗せしても成約しやすい傾向があります。対照的に郊外の単線駅周辺では家賃競争が激しく、想定利回りが削られるリスクが高いので注意が必要です。
加えて、自治体の再開発計画や大学キャンパス移転など、中長期で需給を押し上げる要素を押さえると安心です。例えば2025年開業予定のリニア中央新幹線品川新駅周辺では、既に地価上昇が続き、新築賃料も上振れしています。こうした情報は都市計画決定告示や開発事業者のIR資料から確認できます。
最後に、賃料水準だけでなく土地価格の推移にも目を向けましょう。同じ表面利回りでも、土地値比率が高い物件は資産保全効果が大きく、売却時の損失リスクが小さくなります。土地値が3割以上の物件を目安に絞り込むと、結果的に実質利回りの変動幅を抑えられます。
資金計画と融資戦略のポイント
重要なのは、物件価格の20〜30%を自己資金で用意し、融資によるレバレッジを適切に効かせることです。住宅金融支援機構の調査では、自己資金比率を2割にすると、金利1%上昇時でも返済負担率は5%程度しか増えません。自己資金ゼロのフルローンでは同条件で10%以上の増加となり、キャッシュフローが急激に悪化します。
不動産投資ローンの金利は、地銀や信用金庫が2.0〜3.0%で推移しています。都市銀行は1%台前半のケースもありますが、審査が厳しいため、個人投資家は地銀と信金を組み合わせるケースが一般的です。複数行へ同時に打診し、金利と融資期間を比較することで、総返済額を数百万円単位で節約できます。
返済方法については、元利均等返済がキャッシュフローを読みやすく、金利上昇リスクにも備えやすいです。一方、元金均等返済は初期返済額が高くなるものの、残債が早く減るため、将来の売却戦略に柔軟性が生まれます。投資目的やライフプランを踏まえ、両者をシミュレーションして選択しましょう。
最後に、予備費として家賃の3カ月分程度を運転資金として確保しておくと安心です。エレベーターや給排水設備の突発修繕は高額になりがちで、これが未整備だと追加融資やカードローンに頼ることになり、実質利回りが大きく低下します。資金繰りの余裕は、利回りを守るための保険とも言えます。
2025年度の制度活用でリスクを抑える
まず押さえておきたいのは、住宅ローン減税の投資用適用外という基本ですが、法人化を検討する場合は所得拡大促進税制の活用余地があります。2025年度は省エネ基準適合住宅に対して固定資産税の減額措置が継続しており、ZEB認証を取得すると5年間の税額が半減します。長期で保有する前提なら、この効果は実質利回りを0.2〜0.3ポイント押し上げる計算になります。
また、国土交通省の「賃貸住宅修繕計画ガイドライン」改訂により、長期修繕計画を提出するオーナーには一部金融機関で金利優遇が設定されています。提出の手間はかかるものの、0.1〜0.2%の金利引き下げが受けられれば、30年返済で総支払額が数十万円減少します。結果としてキャッシュフローにゆとりが生まれ、空室対策やリフォームへの再投資がしやすくなります。
さらに、課税標準の特例として「住宅用地の固定資産税減額(小規模住宅用地)」が2025年度も継続中です。土地200平方メートル以下の部分については評価額が6分の1となるため、アパート用地を分筆しておくと税負担をさらに圧縮できます。これは新築アパートでこそ取り入れやすい手法です。
制度は年度ごとに改定されるため、最新情報を必ず確認してください。とはいえ、ここで挙げた措置は2025年12月時点で有効なものに限定しているため、活用する価値は十分にあります。賢く制度を組み合わせることで、新築でも高い実質利回りを維持できます。
まとめ
新築利回りを高めるには、表面利回りだけでなく実質利回りに着目し、エリア選定・資金計画・制度活用を組み合わせることが大切です。特に人口流入が続くエリアで土地値比率の高い物件を選び、金利上昇を織り込んだ保守的なシミュレーションを行えば、長期的に安定した収益を得られます。まずは紹介したポイントを踏まえて物件情報を精査し、金融機関との交渉準備を整えましょう。行動を起こすことで、理想のキャッシュフローが現実に近づきます。
参考文献・出典
- 日本不動産研究所 – https://www.reinet.or.jp
- 総務省 住民基本台帳人口移動報告 – https://www.stat.go.jp
- 国土交通省 都市計画決定情報公開システム – https://www.mlit.go.jp
- 住宅金融支援機構 住まいと金融に関する調査 – https://www.jhf.go.jp
- 国税庁 法定耐用年数表 – https://www.nta.go.jp
- 国土交通省 賃貸住宅修繕計画ガイドライン – https://www.mlit.go.jp/housing
- 財務省 所得拡大促進税制の概要 – https://www.mof.go.jp