不動産の税金

築古 メリット・デメリット徹底解説

築年数が二十年を超える物件に興味はあるものの、「古い家を買って本当に大丈夫だろうか」と不安に感じている人は少なくありません。実は、築古物件には新築や築浅にはない魅力がある一方で、想定外のコストやリスクも存在します。本記事では、築古 メリット・デメリットを投資歴十五年以上の視点から整理し、2025年12月時点で利用できる支援制度までまとめました。読み終えるころには、自分の投資目的に合った物件かどうかを判断できるようになるはずです。

築古物件とは何か

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まず押さえておきたいのは「築古」という言葉の定義です。不動産業界では築二十年以上の住宅を一般に築古と呼びますが、税制では耐用年数が重要な線引きになります。木造は二十二年、鉄筋コンクリート造は四十七年が法定耐用年数とされ、これを過ぎると減価償却費を多く取れる反面、金融機関の融資が厳しくなる傾向があります。また、国土交通省「住宅市場動向調査2024」によると、2024年の中古住宅成約件数は新築分譲を上回り、築三十年前後の取引が全体の三割を占めました。つまり、市場での流通量が増えたことで、買手と売手の情報格差が縮まりつつある点は押さえておきたいところです。

一方で、築古は一律に老朽化しているわけではありません。特に一九九〇年代後半以降に建てられた物件は、耐震基準が新しく、省エネ性能も一定水準を満たしています。築年数だけで判断するのではなく、建築確認日や過去の修繕履歴を確認することが不可欠です。こうした基礎情報を読み解く力が、築古投資の第一歩となります。

築古のメリットを最大化する方法

築古のメリットを最大化する方法のイメージ

重要なのは、築古ならではの価格優位性です。国土交通省の「既存住宅価格指数2025年版」では、東京都心の築三十年超マンションは築十年未満に比べ平均で三割安い水準にあります。この価格差は投資利回りを押し上げる最大の要因です。例えば家賃が月十三万円の物件を三千万円で購入すれば、単純利回りは五・二%ですが、築古で二千万円なら七・八%まで上がります。表面上の数字に過ぎないとはいえ、借入返済や修繕費を織り込んでも手残りが増える構造は魅力的です。

さらに、減価償却のメリットも見逃せません。木造築二十二年超は四年、鉄骨造は六年で償却できるため、所得税率が高いサラリーマン投資家の場合、年間の課税所得を大幅に圧縮できます。加えて、現行の「2025年度 既存住宅の省エネ改修減税」を活用すれば、断熱工事や高効率給湯器の設置費用の一部が所得控除の対象となります。こうした税制優遇を組み合わせることで、実質投資額を下げながら物件価値を底上げすることが可能です。

立地面でも狙い目があります。再開発を控えた準都心エリアや地方中核都市の駅近物件は、賃貸ニーズが底堅い割に築古の流通量が多い傾向にあります。利回りと賃貸需要のバランスを見極めつつ、周辺の人口動態や再開発計画をチェックすれば、中長期で安定したキャッシュフローを期待できます。

築古のデメリットと対策

一方で、築古には修繕リスクがつきものです。日本住宅性能表示基準協議会の調査では、築三十年以上のマンションで大規模修繕費が平均七百万円、戸建てで三百五十万円かかるという結果が出ています。購入時点で売主から長期修繕計画と積立金残高を取り寄せ、過去の改修履歴を確認することが最初の関門です。また、戸建ての場合は屋根と外壁の状態に目を向け、雨漏りの兆候がないかを専門家に同行してもらいましょう。

もう一つの壁が金融機関の融資姿勢です。築年数が耐用年数を超えると、返済期間が短縮されるため月々の返済が増えます。そこで有効なのが「リフォーム一体型ローン」です。2025年時点で取り扱いが増えており、購入費と改修費をまとめて二十五〜三十年で借りられるケースが出てきました。金利は一・五〜二・五%程度が中心で、通常のアパートローンと比べればやや高いものの、月々のキャッシュフローを平準化できるメリットがあります。

空室リスクも無視できません。築古は内装や設備が旧式のままだと入居者の選択肢から外れやすくなります。そこで、キッチンや水回りを部分的に更新しつつ、内装は流行に左右されにくい白基調に統一することで競争力を維持できます。また、IoT対応のスマートロックや宅配ボックスを導入すると、築年数の印象を和らげられます。初期投資を抑えつつ賃料を落とさないバランス感覚が鍵となるでしょう。

2025年度に活用できる公的支援

ポイントは、国や自治体の支援策を組み合わせて改修コストを抑えることです。国交省と環境省が連携する「2025年度 既存住宅省エネ化補助事業」では、外壁断熱や高性能窓の設置費用の三分の一(上限百二十万円)が補助対象となります。申請には事前のエネルギー計算と施工業者の登録が必要ですが、高い省エネ性能を証明できれば賃料アップの説得材料にもなります。

地方自治体も独自に支援策を用意しています。例えば東京都の「既存住宅リフォーム助成」は、二〇二五年度も継続が決まり、最大百万円を限度に費用の二割が補助されます。自治体によっては移住促進とセットで固定資産税を三年間半額にする制度もありますので、購入前に物件所在地の窓口へ確認すると良いでしょう。これらの制度は予算枠に達し次第終了するため、着手時期の見通しを立て、工事契約前に交付決定を受けることが大切です。

築古投資を成功させるチェックリスト

まず、現地調査で重要なのは劣化の兆候を見逃さない観察力です。基礎のひび割れ、水道メーターの回転速度、電気容量など、日常的に見落としがちなポイントに目を向けるだけで、将来の追加費用を見積もりやすくなります。次に、賃貸需要を測るために最寄り駅からの徒歩時間と乗降客数、直近五年の人口推移をセットで確認しましょう。これは築年数とは無関係に空室率へ直結する要素です。

さらに、購入前の資金計画では、想定賃料が一割下落しても返済が滞らないかを試算します。住宅金融支援機構の「フラット三五賃貸シミュレーション」によると、金利が一%上昇すると三十年返済で総支払額は約二割増えます。金利上昇と空室率のダブルパンチに耐えられるかを検証することで、不測の事態にも動じない経営体質を作れます。

最後に、出口戦略も意識しましょう。築四十年以上の物件は個人よりもリノベーション業者が買主になるケースが多く、売却価格は立地と管理状態次第で大きく変動します。購入直後から修繕記録や入居率のデータを整理し、物件の履歴書を作っておくと、将来の売却交渉を優位に進められます。

まとめ

築古物件は価格の割安感と減価償却による節税効果が大きな魅力です。一方で、修繕費や融資条件、空室リスクといった弱点を放置すると収益性は一気に崩れます。重要なのは、現地調査で隠れた劣化を見極め、長期修繕計画と公的支援を組み合わせてコストを最適化する姿勢です。この記事で紹介した調査手順や制度を活用し、自分の投資目的と資金計画に合うかを丁寧に検証すれば、築古物件は堅実な資産形成の味方になります。まずは気になる物件の情報を集め、数字で比較するところから始めてみてください。

参考文献・出典

  • 国土交通省 住宅市場動向調査2024 – https://www.mlit.go.jp
  • 国土交通省 既存住宅価格指数2025年版 – https://www.mlit.go.jp
  • 環境省 既存住宅省エネ化補助事業2025 – https://www.env.go.jp
  • 東京都住宅政策本部 既存住宅リフォーム助成 – https://www.metro.tokyo.lg.jp
  • 日本住宅性能表示基準協議会 住宅修繕費調査2024 – https://www.hyouka-kijun.jp

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