家賃収入で資産を育てたいけれど、新築は価格が高く中古は修繕が不安という声をよく聞きます。特に「築10年 利回り」が検索されるのは、初期コストと収益のバランスが取りやすい年代だからです。本記事では、築十年前後の物件がなぜ狙い目なのか、最新データを交えながら解説します。読み終えたとき、購入判断の軸と具体的なシミュレーション手順が手に入るでしょう。
築10年物件が狙い目とされる理由

重要なのは、価格調整と設備状態のバランスにあります。新築時にピークだった販売価格は、築五年ほどで一段下がり、十年でほぼ安定帯に入ります。それでいて主要設備の耐用年数は二十年前後残ることが多く、大規模修繕のリスクを抑えやすいといえます。
まず価格面を見てみると、東京23区のワンルーム平均取引価格は新築比で約二割下落します。一方、家賃は同期間で一割程度しか下がらない傾向が日本不動産研究所の調査から読み取れます。つまり購入費は下がり、収益力は比較的維持されるため、利回りが向上しやすいわけです。
また、築十年前後の物件は入居者ニーズを把握しやすい点も見逃せません。過去の入居履歴が蓄積しているうえ、現地レビューやSNSの口コミで周辺環境の評価が可視化されています。こうした定量・定性データを同時に確認できる年代は投資判断の材料が豊富です。
最後に、金融機関の評価も安定しています。築二十年を超えると、残存耐用年数の短さから融資期間が制限されがちですが、築十年前後ならフルローンや長期固定金利がまだ組みやすいのが実情です。結果として月々の返済負担を抑えつつ、手元キャッシュを温存できます。
築年数と表面利回りの関係

ポイントは、利回りが築年数とともに右肩上がりになるわけではない点です。日本不動産研究所が2025年六月に公表したデータでは、東京23区ワンルームの平均表面利回りは新築で3.7%、築十年で4.6%、築二十五年で6.0%でした。数字だけ見ると古いほど有利に見えますが、隠れた修繕費や空室リスクが増すため単純比較は危険です。
ここで「築10年 利回り」の優位性が浮かび上がります。築十年物件の修繕積立金は、新築比で月数千円高い程度にとどまり、設備故障も限定的です。他方、築二十五年では給排水管更新や屋上防水など百万円単位の出費が視野に入ります。利回り差1.4ポイントを帳消しにするほどのコストが生じる可能性があるわけです。
さらに、築十年前後なら家賃下落が緩やかに推移します。国土交通省の家賃指数によると、都心ワンルームの家賃は築十年から二十年にかけて年平均0.3%の下降にとどまります。つまりキャッシュフロー計画の精度が上がり、融資返済と管理費を含めた長期の収支予測が立てやすくなります。
キャッシュフローを左右する隠れたコスト
まず押さえておきたいのは、固定資産税や管理費など定期的に発生する費用です。築十年前後の区分マンションでは、管理費・修繕積立金の合計が毎月400円/㎡前後というケースが多く見られます。築二十年超の物件では積立不足を補うため600円/㎡を超える例もあるので差は歴然です。
修繕リスクについては、設備保証がまだ残っている場合があります。給湯器はメーカー保証が十年、エレベーター保守契約は設計寿命を二十五年と見る管理組合が増えています。保証期間内に不具合が見つかれば無償修理となるので、想定外コストを回避できます。
さらに、賃貸運営では入居者の属性変化もコストに影響します。築浅物件はファミリー層やDINKsが長期入居する傾向ですが、築年数が進むと転勤族や短期契約が増え、原状回復費がかさむ場合があります。築十年なら平均入居期間がまだ三~四年で安定しているとされ、原状回復費を平準化しやすい点がメリットです。
収益計画の作り方とシミュレーション
実は、利回り計算だけでは投資判断は完結しません。キャッシュフロー表に税引き後利益と売却時の残債を必ず盛り込み、複数シナリオを検証する必要があります。たとえば家賃が年間2%下落し、空室率が10%に拡大しても自己資本比率が30%あれば赤字に転落しないか、といったストレステストが有効です。
シミュレーションでは金融機関の融資条件を現実的に設定します。2025年現在、都市銀行の投資用ローン固定金利は1.9%前後、期間は最長35年が主流です。築十年の場合、残存耐用年数と合計で50年以下なら35年ローンも承認されやすく、毎月返済額を抑制できます。
また、減価償却費の効果を見込むことで税負担を軽くできます。鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は47年なので、築十年物件なら残り37年を定額法で計上できます。購入初年度の諸費用を含めれば、表面利回りが4.5%でも実質利回りを5.2%に押し上げる事例も珍しくありません。
ローン戦略と出口戦略を考える
まず、ローンは固定と変動のハイブリッド型を検討しましょう。基準金利引き上げ局面では、返済額の上限が読みやすい固定を七割、低金利メリットを取る変動を三割とする組み合わせが堅実です。
次に、出口戦略として保有十年での売却シナリオを用意します。築二十年前後の市場価格は安定しやすい一方、法定耐用年数の残りが短くなるため次の買い手の融資ハードルが上がります。そこで、物件価値を維持するために内装リニューアルとエントランスの照明交換など小規模リフォームを計画的に実施すると、売却価格の目減りを抑えられます。
最後にリファイナンスも視野に入れてください。金融機関は賃料収入実績を評価するため、運営三年目以降に金利交渉を行うと0.3〜0.5ポイントの引き下げに成功する事例があります。金利が1%下がれば、残債三千万円の場合で総返済額が約五百万減る計算です。
まとめ
築十年前後の中古物件は、購入価格の下落と設備寿命の残存が合致し、利回りとリスクをバランス良く取れる年代です。表面利回り4.5%前後でも、修繕コストの抑制や減価償却によって実質利回りを底上げできる余地があります。さらに長期ローンの活用やリファイナンス、計画的リフォームを組み合わせれば、キャッシュフローを安定させつつ出口戦略も描きやすいでしょう。今後の物件選定では築年数だけでなく、管理状況や資金計画と合わせて総合評価する姿勢が、成功への近道になります。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp
- 日本不動産研究所 都市投資利回り調査 2025年6月 – https://www.reinet.or.jp
- 東京都住宅政策本部 住宅市場動向報告2025 – https://www.metro.tokyo.lg.jp
- 全国賃貸管理ビジネス協会 入居期間統計2025年版 – https://www.zenchin.or.jp
- 日本銀行 金融システムレポート2025年10月 – https://www.boj.or.jp