不動産投資を始めたいものの、「購入直後から税金の負担が重くなるのでは」と不安に感じる人は多いはずです。特に築浅(ちくあさ)物件は「値段が高いのに節税効果が薄い」という誤解が広まりやすく、購入をためらう声も耳にします。しかし、実は築浅でも上手に節税を組み合わせれば、キャッシュフローを黒字に保ちつつ資産価値を守ることができます。本記事では、築浅物件ならではのメリットと2025年度の税制優遇を活用する方法を分かりやすく解説します。最後まで読むことで、購入前に押さえるべき具体的なポイントが見えてきます。
築浅物件が投資家に好まれる理由

まず押さえておきたいのは、築浅物件が持つ基本的な強みです。築年数が浅いと建物や設備の状態が良く、修繕費が当面発生しにくい点は大きな安心材料となります。一方で、家賃水準が高く空室リスクが低い傾向があり、長期の安定収入を期待できます。また、国土交通省の令和6年度住宅市場動向調査によると、築5年以内の賃貸物件の平均入居率は92%と、築20年以上の82%を上回っています。
さらに、築浅物件は金融機関の評価が高く、融資期間を長めに設定できるため月々の返済負担を抑えやすい点も見逃せません。このように、キャッシュフローと資産価値の両面で堅実なリターンを狙えることが、投資家に支持される理由です。
築浅物件ならではの節税ポイント

重要なのは、築浅でも使える節税手段を正しく把握することです。まず固定資産税を確認しましょう。2025年度も新築住宅に対する固定資産税の1/2軽減措置が継続しており、戸建ては3年、マンションは5年が対象です。築浅物件を取得すれば、残りの軽減期間を引き継げるケースがあり、実質的な税負担を減らせます。
次に、設備ごとの修繕計画を立てることで、必要経費を段階的に計上できます。屋根や外壁は10年目以降に本格的な補修が必要になることが多く、築浅ならそのタイミングまで資金を温存できます。計画的な修繕は突発的な大規模支出を回避し、経費をコントロールする意味で節税に直結します。
さらに、管理委託料や広告費など、運営コストを適切に計上することで所得税・住民税の負担を軽減できます。日本税理士会連合会の試算では、年間家賃収入が500万円規模の物件でも、管理費5%を経費計上するだけで課税所得を25万円ほど圧縮できると報告されています。築浅物件は家賃が高めな分、同じ5%でも経費額が大きくなるため、相対的な節税効果が高まりやすいのです。
減価償却と耐用年数の賢い使い方
ポイントは、減価償却(げんかしょうきゃく)を長期視点で捉えることにあります。減価償却とは、建物価値を耐用年数にわたって費用配分する会計上の手法です。国税庁の「耐用年数表」では、木造住宅が22年、鉄筋コンクリート住宅が47年と定められています。築浅物件の場合、残存耐用年数が十分に残っているため、毎年の償却費は比較的少額になります。
ここで盲点となるのが付属設備です。エアコンや給湯器、照明器具などは耐用年数6〜15年と短いため、本体より早く償却できます。購入後に設備を追加・更新する際は、費用を資本的支出ではなく修繕費として全額当期経費にできるかを税理士に確認しましょう。設備償却を計画的に行えば、築浅でも早期に節税効果を得られます。
一方で、将来の売却益を見据えて減価償却を抑えたい場合、定額法(一定額ずつ償却)を選択することで帳簿価額を高めに保てます。帳簿価額が高いほど譲渡所得税の課税対象額を抑えられるため、長期保有を前提とするなら検討の余地があります。つまり、減価償却は「年次の所得税対策」と「将来の譲渡税対策」の両面でバランスを取ることが肝心です。
築浅物件で活用したい2025年度の税制優遇
まず押さえておきたいのは、住宅ローン控除の適用条件です。2025年度も「賃貸併用住宅」に限り、自己居住部分については年末残高の0.7%を所得税から控除できます。例えば、自宅と1K4戸を併設した築浅物件を購入した場合、自己居住部分の床面積が50平方メートル以上であれば最大13年間控除を受けられます。居住割合を事前に測定し、建築確認通知書で証明できるよう準備しておくと手続きがスムーズです。
また、中小企業などが行う「エネルギー価格高騰対策特別償却制度」は、個人投資家も青色申告専従者として一定の条件を満たせば利用可能です。高効率給湯器や断熱材の追加工事に要した費用の20%を初年度に一括償却できるため、省エネリフォームを進めるほど所得を圧縮できます。環境省が公表した2025年度の補助上限は200万円で、申請受付は同年12月末までです。期限があるため、購入後すぐに改修計画を立てることが成功の鍵となります。
さらに、相続税対策として足元で注目を集めるのが「小規模宅地等の特例」です。賃貸住宅用地の場合、最大200平方メートルまで評価額を50%減額できます。築浅マンションを相続対象に組み込めば、建物価値が高い分だけ土地評価額の圧縮効果が際立ちます。将来の承継を視野に入れるなら、取得後3年以上保有するなど要件を満たす計画を早めに立てたいところです。
築浅投資で失敗しないためのチェックポイント
まず、表面利回りだけでなく実質利回りを試算する習慣を持ちましょう。築浅は修繕費が低いとはいえ、管理費や固定資産税を差し引くと利回りが1〜2%下がる例は珍しくありません。金融機関の返済比率を含めたキャッシュフロー表を作成し、毎年の手残りを確認することが重要です。
次に、賃貸需要の先行きも見逃せません。総務省の「住民基本台帳人口移動報告」によると、2025年時点で東京23区の転入超過は約5.2万人ですが、郊外部では横ばいに近づいています。同じ築浅でも、立地により競争環境が大きく変わることを意識する必要があります。
最後に、出口戦略を具体的に描いておくことが安全策です。築浅物件は10年目以降に大規模修繕費が発生し始めます。そのタイミングで売却益を狙うのか、長期保有で家賃収入を積み上げるのかによって、減価償却方法や資金計画が変わります。購入前にシミュレーションを複数パターン作成し、自分のライフプランに合った投資期間を選択しましょう。
まとめ
築浅 節税を成功させるには、固定資産税の軽減期間や設備償却など「今すぐ使える制度」を逃さず活用することが第一歩です。その上で、減価償却の配分を長期視点で設計し、将来の譲渡税や相続税まで見据えると総合的な節税効果が高まります。家賃水準と融資条件が良好な築浅物件は、計画さえ綿密に立てればキャッシュフローも安定しやすい資産となります。この記事で紹介したチェックポイントを踏まえ、自分に合った物件と節税策を組み合わせ、堅実な不動産投資ライフをスタートさせてみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅市場動向調査 令和6年度版 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省 住民基本台帳人口移動報告 2025年版 – https://www.soumu.go.jp
- 国税庁 耐用年数表(令和5年改訂) – https://www.nta.go.jp
- 日本税理士会連合会「不動産所得に関する調査報告」2025年 – https://www.nichizeiren.or.jp
- 環境省 2025年度エネルギー価格高騰対策特別償却制度の手引き – https://www.env.go.jp