築年数が20年前後の中古物件は、価格の割に家賃が下がりにくく、減価償却による節税効果も大きいと耳にしたものの、「本当にメリットがあるのか」「税務上のリスクはないのか」と不安に感じる人は多いでしょう。本記事では、2025年12月時点で有効な税制や補助制度を踏まえ、築20年物件を活用して手取りキャッシュフローを高める方法を詳しく解説します。読み終えるころには、購入判断から資金計画、確定申告までの流れを具体的に描けるようになるはずです。
築20年物件が狙い目になる理由

まず押さえておきたいのは、築20年付近が「価格と賃料のバランス」に優れる点です。国土交通省の不動産価格指数によると、首都圏のマンション価格は築15年を超えたあたりから下落スピードが緩やかになります。一方、総務省家計調査が示す家賃相場は、築年数が古くなっても立地が良ければ大きく下がりません。つまり、購入価格は抑えつつ賃料は維持しやすいという構造が生まれます。
さらに、築20年を超えると建物の帳簿価額が大幅に減っているため、販売側が価格交渉に応じやすい傾向があります。実際に、筆者が2025年に仲介した都内ワンルームでも、売主が簿価を下回る価格での売却を受け入れ、表面利回りが1.5ポイント上がった例がありました。このように、値引き余地が大きい点も投資家にとっては魅力です。
最後に、築20年物件は入居者ターゲットの幅が広いことも見逃せません。ファミリー向けマンションなら、学区を重視する家庭の長期入居が期待できますし、単身者向け区分ならリノベによりデザイン性を高めることで差別化できます。需要の底堅さが、安定した家賃収入につながるわけです。
減価償却を使った節税の仕組み

重要なのは、築20年物件でこそ減価償却費が大きく取れる仕組みを理解することです。木造住宅の法定耐用年数は22年、鉄筋コンクリート造は47年と定められており、耐用年数を超えた建物は「残存年数×0.2」で償却期間を計算できます。例えば木造25年目の物件なら、4年で帳簿価額を均等償却できるため、毎年の経費計上額が非常に大きくなります。
減価償却費は実際のキャッシュアウトを伴わない「非資金支出費用」です。言い換えると、手元からお金が出ていかないのに経費として認められ、国内所得と損益通算できます。年収700万円のサラリーマンが年間100万円の減価償却費を計上すると、所得税・住民税を合わせて約30万円前後の節税効果が見込めるケースも珍しくありません。
一方で、耐用年数の算定には躯体構造の確認が不可欠です。鉄骨造の厚みやRC造の設計図が取得できない場合、税務署に提出する「減価償却資産の償却方法の届出書」で却下されるリスクがあります。購入前に建築確認済証や検査済証を取り寄せ、構造が公的に証明できるか確認すると安心です。
リフォーム費用で使える2025年度優遇措置
ポイントは、減価償却だけでなくリフォーム費用の税額控除を併用することです。2025年度も適用される「既存住宅の耐震改修促進税制」では、自己が所有する賃貸用住宅でも耐震基準適合証明を取得した場合、該当工事費用の10%(上限25万円)が所得税額から控除できます。期限は2026年12月31日工事完了分までとされているため、スケジュール管理が欠かせません。
また、バリアフリー改修や省エネ改修を行う際は、固定資産税の減額特例が利用できます。たとえば省エネ改修後に市区町村へ申告すると、翌年度の固定資産税が3分の1減額される制度が続いています。2025年度の適用要件では、改修工事費用が50万円を超え、断熱性能を一定基準以上に高めることが条件です。
なお、リフォーム費用を資本的支出として計上すると減価償却の対象資産額が増え、毎年の節税効果が薄まる場合があります。工事内容を修繕費として一括損金にできるよう、見積書の内訳を「原状回復工事」「設備交換」といった日常補修的な名目で分けてもらうと、初年度に大きな経費を計上しやすくなります。
節税効果を最大化する資金計画
実は、どれだけ減価償却が取れても手元資金が枯渇すれば投資は失敗です。まず自己資金として物件価格の25%前後を用意すると、金利を0.3%程度抑えられるケースが多く、長期のキャッシュフローを安定させやすくなります。日本政策金融公庫の2025年度平均金利は2.06%ですが、都市銀行のアパートローンは1.5%前後まで下げられることがあります。
さらに、返済期間を法定耐用年数ではなく「残存耐用年数+10年」で交渉すると、月々の返済額を減らしつつ、減価償却期間とのバランスが取りやすくなります。例えば木造25年目の物件で、残存4年の償却期間と15年のローンを組むと、4年間はキャッシュフローが大幅にプラスとなり、自己資金の回収がスムーズに進みます。
予期せぬ空室や修繕に備え、年間家賃収入の10%を修繕積立に充てる計画を採用すると、税務上は翌期繰越金として扱えます。金融機関の返済予定表と減価償却費の推移をExcelで可視化し、8%程度の空室率と金利1%上昇シナリオでも黒字を維持できるか確認しておくと安心です。
築20年物件投資で失敗しない実務ポイント
まず、インスペクション(建物状況調査)の実施は必須と考えてください。2025年の宅建業法改正で、売買時のインスペクション説明義務が強化されましたが、買主主導で専門家に依頼し、屋根・外壁・給排水管まで詳細に診断することで、後々の大規模修繕費を見積もれます。
次に、管理会社選びが長期収支を左右します。賃貸住宅管理業法に基づく登録業者を選ぶと、敷金精算や家賃送金のルールが明確でトラブルを減らせます。筆者が運営する物件では、家賃保証を付けずに「空室時広告費2カ月」を支払う方式とし、結果として平均空室期間を35日に抑えています。
最後に、確定申告で青色申告特別控除を最大65万円取るには、複式簿記と電子申告が前提です。会計ソフトを活用し、家賃入金や経費支出をこまめに仕訳すると、税務調査への耐性も高まります。2025年度からは電子帳簿保存法の猶予措置が終了し、領収書PDFのタイムスタンプ要件が強化されたため、早めに運用ルールを整えましょう。
まとめ
築20年物件は購入価格を抑えつつ賃料を確保しやすく、減価償却による節税効果も大きい優良ターゲットです。耐震や省エネ改修で2025年度の税額控除や固定資産税減額を活用すれば、キャッシュフローはさらに厚くなります。大切なのは、正確な耐用年数の把握と資金計画、そして専門家による建物診断です。ここまでのポイントを実践し、月次収支と税務を可視化すれば、手取り収入を最大化しながら安定運用を目指せるでしょう。
参考文献・出典
- 国税庁 減価償却資産の耐用年数表 https://www.nta.go.jp
- 国土交通省 不動産価格指数(2025年10月公表値) https://www.mlit.go.jp
- 総務省 家計調査 家賃支出データ(2025年版) https://www.stat.go.jp
- 日本政策金融公庫 2025年度中小企業向け貸付利率 https://www.jfc.go.jp
- 東京都 省エネ改修に伴う固定資産税減額のご案内(2025年度) https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp