築年数の古い物件は安く買える一方で、「本当に収益が出るのか」と不安になる方が多いものです。特に築30年以上のアパートやマンションは、見た目の老朽化や設備の劣化が気になり、購入をためらう初心者も少なくありません。しかし実は、適切な分析と運用を行えば高い利回りを期待できる魅力的な投資対象になります。本記事では、築30年以上 利回りの関係を中心に、リスクを抑えつつ収益を伸ばす具体策を解説します。読み終えるころには、築古物件を味方につけるコツがつかめるはずです。
築古物件の魅力とリスクを正しく理解する

まず押さえておきたいのは、築30年以上の物件ならではの強みと弱みです。家賃下落が一巡して価格が底打ちしているケースが多く、取得価格を抑えやすい点は大きな利点になります。一方で、建物の構造やインフラの老朽化が進んでいると修繕費が膨らみ、想定利回りを圧迫する恐れがあります。
国土交通省の「住宅・土地統計調査」によると、築30年以降の家賃下落率は平均で年間0.5%程度に鈍化します。つまり購入後の家賃減少リスクが小さく、キャッシュフローを読みやすいのが特徴です。さらに、同規模の築浅物件と比べると取得価格が3割ほど低い事例も珍しくありません。そのため、表面利回り10%超の物件が見つかることもあります。
一方、注意したいのが耐震性能と設備の更新履歴です。1981年の新耐震基準前に建てられた物件は、耐震補強工事に数百万円単位の費用が必要になることがあります。また、給排水管や電気配線に不具合があれば、漏水や火災のリスクが高まり、保険料も上がりがちです。購入前にインスペクション(建物診断)を実施し、将来の修繕コストを数字で把握することが欠かせません。
利回りを左右する三つのチェックポイント

重要なのは、利回り計算の前提を現実に近づけることです。築30年以上の物件では、空室率、修繕費、金融コストが若干高めに出る傾向があります。想定利回りを見積もる際は、これらの要素を保守的に織り込む必要があります。
空室率については、総務省「住民基本台帳人口移動報告」を参考に、エリアの人口動向を確認します。例えば、東京都世田谷区は過去5年で人口が3.1%増加し、同区内の築古ワンルームの平均空室率は6%前後で安定しています。反対に、人口が減少している郊外では空室率15%超も見込むべきケースがあるため、利回り試算に大きな差が生じます。
修繕費は「延べ床面積×1,000円×築年数÷60」を目安に年間積立額を試算すると概算を得やすいです。築30年の木造アパート(延べ床300㎡)なら年間15万円程度になりますが、外壁塗装や屋根補修が重なる年度はこの数倍を覚悟しておきましょう。購入直後に大規模改修を終えれば、向こう10年の支出を平準化できます。
金融コストは金利だけでなく、融資期間も収支に響きます。2025年12月現在、地方銀行のアパートローン金利は変動型で年2.1%前後、期間は最長25年が一般的です。築古物件は耐用年数の関係で融資期間が短くなるため、金利交渉よりも期間延長のメリットが大きい場合があります。交渉材料として、補強工事後の耐震診断書を提示すると、金融機関の評価が上がりやすくなります。
収支シミュレーションでリスクを数値化する
実は、築30年以上 利回りを確実にするには、詳細なシミュレーションが欠かせません。Excelなどで作成する際は、家賃変動、空室率、金利、修繕費の四つを変数に設定し、複数シナリオを組み立てます。
まず家賃は現行水準から年間1%下落する悲観シナリオを用意します。次に空室率はベースの7%に対し、景気後退期を想定して15%まで引き上げてみます。金利は現在の2.1%を基準に、将来3.5%まで上昇するケースを設定します。最後に修繕費は通常想定額の2倍とし、突発的な設備更新が重なる状況を再現します。
そのうえで10年間のキャッシュフローを算出し、自己資金回収年数と年間平均手残り額を確認します。シミュレーションの結果、悲観シナリオでも手残りが黒字であれば、安全性が高いと判断できます。逆に、赤字になる場合は購入価格を再交渉するか、リフォーム内容を見直す必要があります。こうした事前検証は、購入後の想定外支出を大幅に減らす効果があります。
2025年度の融資・税制を活用して利回りを底上げ
ポイントは、最新の制度を味方につけてネット利回りを向上させることです。2025年度は投資用不動産でも使える設備投資減税が継続予定で、省エネ性能を高める改修を行えば初年度に最大10%の特別償却を受けられます。築古物件でエアコンを高効率機種に更新する場合などが対象になります。
また、2025年度の固定資産税評価替えに合わせて、耐震補強済みの建物は評価額が抑えられる傾向が出ています。具体的には、耐震補強工事の報告書を自治体に提出すると翌年度以降3年間、固定資産税がおおむね10%軽減されます。利回りへの寄与は小さく見えても、長期保有では確実に手残りを増やします。
金融面では、日本政策金融公庫の「生活衛生貸付」に準じる形で、賃貸住宅の省エネ改修を行う場合に金利0.5%優遇が受けられる制度が2025年度も継続しています。例えば2,000万円の改修費用を10年返済で借り入れると、総返済額は通常融資より約55万円少なくなります。こうした優遇策を組み合わせれば、実質利回りを1ポイント以上押し上げることも十分可能です。
まとめ
築30年以上の物件は、価格が下がりきっている分だけ高利回りを狙いやすい反面、修繕費や融資条件でつまずくリスクがあります。インスペクションで将来費用を可視化し、空室率や金利上昇を織り込んだシミュレーションを行うことで、数字に裏打ちされた投資判断が可能になります。さらに、2025年度の特別償却や固定資産税軽減、金利優遇策を活用すれば、ネット利回りを底上げできます。まずは気になる築古物件を一つ選び、本記事の手順で収支を試算してみましょう。具体的な数字と制度を味方にすれば、築30年以上でも十分に魅力的な投資となるはずです。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅・土地統計調査 2023年版 – https://www.stat.go.jp
- 総務省 住民基本台帳人口移動報告 2025年版 – https://www.soumu.go.jp
- 日本不動産研究所 不動産投資家調査 2025年上期 – https://www.reinet.or.jp
- 日本政策金融公庫 省エネ改修支援制度 概要 2025年度 – https://www.jfc.go.jp
- 東京都 世田谷区 統計からみる世田谷 2025 – https://www.city.setagaya.lg.jp