不動産の税金

築古 シミュレーションで失敗しない収益計画の立て方

築年数が30年を超えるいわゆる「築古」物件は、価格の安さと高利回りが魅力です。しかし、入居者が集まるか、修繕費が膨らまないかなど、不安が尽きないのも事実でしょう。そこで役立つのが、数字で未来を描く「築古 シミュレーション」です。本記事では、初心者でも取り組める手順を示し、実際にどのような項目を盛り込めばリスクをコントロールできるのかを解説します。読み進めることで、物件選定から資金計画、出口戦略までを一貫して検討できるようになります。

築古物件の魅力とリスクを数値でつかむ

築古物件の魅力とリスクを数値でつかむのイメージ

重要なのは、メリットとデメリットを同じ物差しで比較することです。具体的な利回りを計算し、空室リスクや修繕リスクを差し引いて初めて実質利回りが見えてきます。

まず、国土交通省の住宅着工統計によると、地方圏で築30年以上の木造アパートは新築の約3分の1の価格で取引されています。買値が低ければ表面利回りは高くなりますが、家賃の下落も無視できません。日本賃貸住宅管理協会の2025年調査では、築30年を超える物件の平均家賃は築10年未満に比べて約25%低いという結果が出ています。

一方で、固定資産税評価額が下がるため、ランニングコストは抑えられます。また、木造の場合は法定耐用年数22年を過ぎると、残存年数で減価償却を取れるため、税引き後のキャッシュが改善しやすい点も見逃せません。つまり、価格、家賃、税効果をまとめてシミュレーションしない限り、本当の投資妙味は判断できないのです。

収益シナリオを描くキャッシュフローの組み立て方

収益シナリオを描くキャッシュフローの組み立て方のイメージ

まず押さえておきたいのは、家賃収入から空室損失と運営費を差し引いたネット収入を起点にすることです。その上で、返済と税金を支払った後の「手残り」を追います。

家賃想定では、周辺の募集賃料だけでなく、過去1年の成約賃料を調べましょう。レインズマーケット情報や地場管理会社のヒアリングが有効です。空室率は地方都市で15%、政令市中心部で8%程度を基準に、さらに築年数による調整を加えると現実的です。

次に運営費です。管理委託料は家賃の5%前後、共用電気や清掃費を含む雑費で1室あたり月1,000円程度が目安です。火災保険料は構造や補償内容で差が大きいものの、年間2万円前後を織り込みます。こうして算出したネット収入から、金利2.0%・期間20年の元利均等返済を引けば、毎月のキャッシュフローが見えます。

重要なのは、シミュレーション上で3%の金利上昇、空室率5ポイント悪化といったストレスシナリオも試すことです。手残りがゼロにならないか確認しておけば、実際の変動に慌てる心配が減ります。

修繕費をどう織り込むかがシミュレーションの肝

ポイントは、長期修繕計画を年次ベースで作り、毎月の積立額に落とし込むことです。築古物件では突発的な修繕が発生しやすく、見込みが甘いと一度でキャッシュフローが吹き飛びます。

一般社団法人日本建築学会の指針によれば、木造アパートでは屋根と外壁を15〜20年周期で更新するのが望ましいとされています。費用は延べ床1平方メートルあたり1.2〜1.5万円が相場です。例えば延べ床200平方メートルなら、屋根と外壁で300万円前後が目安になります。

内装は、入退去時に平均15万円、5年ごとに水回りを中心に30万円程度を想定します。これらを合算し、平均すると年間の修繕積立は家賃収入の10〜15%が妥当です。修繕費を年ごとにばらつかせて入力することで、資金繰りの山と谷が可視化できます。実は、この作業を怠ると高利回り物件でも黒字倒産の危険があるのです。

税金・減価償却を活かした長期戦略

実は、築古投資の魅力を最大化する鍵は減価償却にあります。耐用年数を過ぎた木造物件なら、4年で償却しきる定率法が選べるため、初年度から大きな経費計上が可能です。

国税庁の2025年度法人税基本通達では、耐用年数経過資産の残存年数は「法定耐用年数×0.2」で計算すると示されています。木造22年×0.2=4.4年、四捨五入して4年となるわけです。年間の減価償却費を大きく取れる結果、表面利回りが同じでも税引き後のキャッシュフローは築浅より増えます。

ただし、4年で償却が終わると5年目以降は課税所得が跳ね上がります。そこで2025年度も継続する「投資的経費を繰り延べる特例」や太陽光発電設備の即時償却制度を組み合わせると、課税負担を段階的に緩和できます。つまり、減価償却は短期の節税だけでなく、長期の収支安定策として活用する姿勢が欠かせません。

具体的なシミュレーション手順と無料ツール

まず、エクセルかGoogleスプレッドシートで「年間収支表」と「長期キャッシュフロー表」を用意します。前者には家賃、運営費、返済、税金、修繕積立を月次で入力し、後者では30年までの累積キャッシュを追います。

具体的な列構成は次のとおりです。

  • 年月
  • 入居率
  • 家賃収入
  • 運営費
  • 修繕積立
  • 借入返済
  • 税金
  • 純キャッシュフロー
  • 累積キャッシュ

無料ツールとして、国土交通省が公開する「不動産投資収支改善シート」があります。CSVでダウンロードできるため、自分の物件データを貼り付けるだけで簡易的なN P V(正味現在価値)やIRR(内部収益率)も計算可能です。また、2025年版「みずほ銀行アパートローンシミュレーター」は金利シナリオを複数設定でき、感度分析に便利です。

最後に、出口戦略も忘れず入力します。売却価格は国土交通省の不動産価格指数を参照し、年1%の下落を仮置きしておくと安全です。売却益・損と累積キャッシュを合算し、最終的な投資回収率がプラスになるか確認しましょう。これで「築古 シミュレーション」の骨格が完成します。

まとめ

築古投資は、高利回りの裏側に空室と修繕のリスクが潜むため、シミュレーションなしでは継続的な黒字は望めません。本記事で紹介したキャッシュフローの組立て方、修繕費の年次計画、減価償却の活用を実行すれば、数字に基づく意思決定が可能になります。まずは無料ツールで試算し、ストレスシナリオでも手残りが確保できる物件に絞り込みましょう。行動を起こすことで、築古ならではの高い投資効率をあなたのものにできます。

参考文献・出典

  • 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp
  • 国土交通省 住宅着工統計 – https://www.mlit.go.jp/statistics
  • 日本賃貸住宅管理協会 2025年入居率調査 – https://www.jpm.jp
  • 一般社団法人日本建築学会 建物維持保全指針 – https://www.aij.or.jp
  • 国税庁 法人税基本通達(2025年版) – https://www.nta.go.jp

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