不動産融資

築20年 失敗事例から学ぶ中古アパート投資の落とし穴

築20年程度の中古アパートは、価格が手ごろで利回りも高く見えるため、初心者が最初に検討しやすい選択肢です。しかし、購入後に思わぬ修繕費や空室リスクに悩まされ、「想定通りのキャッシュフローが出ない」「売却もできず身動きが取れない」と感じる投資家が後を絶ちません。本記事では、実際に起きた築20年 失敗事例をひもときながら、その原因と対策をわかりやすく解説します。読了後には、同じ落とし穴を避ける具体的な判断軸が身につくでしょう。

表面利回りの罠を見抜く視点

表面利回りの罠を見抜く視点のイメージ

まず押さえておきたいのは、表面利回りだけで物件価値を判断すると高確率で後悔するという点です。表面利回りとは家賃収入を購入価格で割った単純な指標ですが、築20年の物件では「見かけ」の数字が高くなりやすい特徴があるのです。

国土交通省の2025年版「不動産価格指数」によると、築20年前後の木造アパートは新築時の5〜6割まで価格が下がる一方、家賃は3〜4割程度の下落にとどまります。つまり購入時点の利回りが高く見えるのは当然で、維持運営にかかるコストを加味しないと実質利回りが大きく目減りします。

重要なのは、運営コストの中でも大規模修繕費の影響です。築20年は屋根・外壁・給排水配管といった高額パーツが更新時期を迎えるタイミングで、修繕を後ろ倒しにすると空室と家賃下落を招きます。つまり「利回り10%超」とうたう広告に飛びつく前に、今後5年間で発生する修繕計画と見積もりを必ず確認する必要があります。

実際、筆者の相談者Aさんは利回り11%の木造アパートを2年前に購入しましたが、外壁塗装と屋根防水で600万円を一度に支出し、実質利回りは5%弱まで低下しました。表面利回りだけを拠り所にすると、このようなキャッシュフローの急減に耐えられず失敗へ傾きます。

見逃しがちな構造・設備の寿命

見逃しがちな構造・設備の寿命のイメージ

ポイントは、築年数だけでなく構造・設備の寿命を総合的に把握することです。木造と鉄骨造では修繕サイクルも金額感も異なりますし、設備の更新履歴によって将来の支出は大きく変わります。

日本建築学会の「建築物の耐用性能指針」では、木造の外壁サイディングの更新目安は15〜20年、鉄骨造の屋上防水は10〜15年と示されています。築20年の物件はちょうど第二回目の修繕周期に入り、「まだ大丈夫」と判断する根拠はほぼありません。

また、給湯器やエアコンなど室内設備の寿命は10〜15年が一般的です。前オーナーが交換していなければ、一斉に故障が発生するリスクが高まります。入居者募集を強化するためにも最新設備への更新は避けられず、結果として購入後1年以内に数百万円規模の出費が生じるケースが少なくありません。

実は、火災保険や地震保険の見直しも必要です。築20年以上の木造は保険料が割増となり、築浅物件より年間数万円高くなることがあります。細かいコストの積み重ねが、収益計画をじわじわ圧迫する点を忘れないでください。

空室リスクを左右するエリア動向

重要なのは、築年数よりもエリアの需給バランスが空室率を大きく左右するという事実です。総務省の「住宅・土地統計調査」(2023年版)によると、地方都市の築20年以上のアパート空室率は平均22%に達し、政令指定都市中心部の約11%と二倍の差が開いています。

築古物件を選ぶ場合、家賃の下落余地と入居者ニーズを具体的に検証する必要があります。駅距離・周辺に大学や大型工場があるかなど、ターゲット属性を理屈で語れない物件は避けた方が無難です。

例えば、B県の郊外で築19年の鉄骨アパートを購入したBさんは、周辺にあった大手工場の閉鎖を把握しないまま契約しました。結果、入居者が一気に流出して空室率が35%まで悪化し、家賃を20%下げても埋まらない状況に陥りました。エリア動向を読み違えると、築年数に関係なく空室リスクが顕在化するのです。

一方で都心や駅近であれば、築20年でも内装を刷新すれば新築並みの家賃を維持できるケースがあります。つまり築古投資は「場所」と「出口戦略」を両輪で考えることが不可欠です。

融資条件と出口戦略の落とし穴

まず、金融機関が築年数を重視する理由を理解しましょう。多くの地方銀行や信用金庫は「耐用年数−築年数+10年」を最長融資期間とする傾向があります。木造の法定耐用年数は22年なので、築20年では最長12年しか融資が引けない計算です。

融資期間が短いと毎月返済額が大きくなり、キャッシュフローが圧迫されます。さらに、建物評価がゼロに近い築古物件は担保力が弱く、自己資金を3割以上求められるケースも珍しくありません。融資に頼ったレバレッジ効果が働きにくい点を理解しておかないと、シミュレーションと現実の差に驚くことになります。

出口戦略として売却を視野に入れる場合、買主も同じ融資制限に直面します。つまり築20年で購入すると、5年後には築25年となり、融資期間がさらに短くなるため価格が一段と下がりやすいのです。実際、C市で築21年のRCマンションを取得したCさんは、想定より低い売却査定しか出ず、含み損を抱えたまま保有継続を余儀なくされています。

このように、購入時点で「いくらで、どの層に売れるか」を逆算しない限り、築古投資は逃げ道のない長期戦を強いられるリスクが高まります。

失敗を防ぐための実務チェックリスト

結論として、築20年 失敗事例を回避するには、購入前の情報収集と数値検証を徹底するしかありません。以下の三つの手順を実務的に押さえると、リスクをかなり低減できます。

1. 修繕計画と見積もり取得 2. エリアの人口動態と賃貸需要を公的データで確認 3. 融資条件と出口価格を複数シナリオで試算

手順自体はシンプルですが、漏れなく実行できるかが成否を分けます。特に修繕計画は、施工会社に現地調査を依頼し、5年以内に必要な内容を「項目・時期・金額」で書面化することが大切です。

また、賃貸需要の把握には国勢調査や地方自治体の都市計画を参考にします。ネット広告の賃貸掲載件数を半年ほど観察すると、供給過多かどうか肌感覚でもつかめるでしょう。最後に、売却シナリオは楽観・悲観の二通りで検証し、どちらでも自己資金が枯渇しないかチェックします。これらを徹底できれば、築古ならではの高利回りのメリットを活かしつつ、リスクを管理した堅実な運用が可能になります。

まとめ

築20年の中古アパートは「安く買って高利回り」と映りますが、実際には修繕費・空室・融資制限など多面的なリスクが潜んでいます。表面利回りに惑わされず、修繕周期と設備寿命を具体的に把握し、エリア需給と出口戦略を数値で検証する姿勢が欠かせません。記事で紹介したチェックリストを実践し、将来の支出を先回りして読めば、築古投資でも安定したキャッシュフローを実現できます。今日の行動が数年後の資産形成を大きく左右しますので、一歩ずつ確実に準備を進めてください。

参考文献・出典

  • 国土交通省 不動産価格指数(2025年版) – https://www.mlit.go.jp
  • 国土交通省 住生活基本計画(全国計画)2025 – https://www.mlit.go.jp
  • 総務省 住宅・土地統計調査 2023 – https://www.stat.go.jp
  • 日本建築学会 建築物の耐用性能指針 2024 – https://www.aij.or.jp
  • 金融庁 地域銀行取引ガイドライン 2025 – https://www.fsa.go.jp

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