不動産投資に興味はあるものの、「個人名義で買うか法人を作るか」で迷う人は少なくありません。特に自分や家族が住める広さを持ちながら、安定した賃貸需要も期待できるファミリーマンションでは判断が複雑になりがちです。本記事では「ファミリーマンション 法人化」というテーマに焦点を当て、節税効果や融資条件、2025年度の制度動向まで丁寧に解説します。読み終えたとき、あなたは法人化の手順と注意点を具体的にイメージできるはずです。
法人化で得られる主な節税効果

重要なのは、法人化がもたらす節税メリットを正しく把握することです。一般的に所得税より法人税のほうが税率は低く、経費計上の幅も広がります。
まず、個人の場合は給与や他の収入と合算した総合課税となり、所得が上がるほど税率が高くなる仕組みです。一方で法人化すると、売上から経費を引いた利益に対して法人税が課されます。利益が年間800万円以下であれば税率は約23%に抑えられ、最高45%の個人所得税と比べて負担が軽くなる場面が多いです。
さらに、ファミリーマンションに付随する設備や家具を法人名義で購入すれば、減価償却費として費用化できます。たとえば200万円のシステムキッチンを耐用年数10年で償却すれば、毎年20万円を経費に計上でき、キャッシュフローにゆとりが生まれます。
加えて、家族を役員にして給与を支払えば所得分散が可能です。役員報酬は損金算入できるため法人の利益を圧縮しつつ、家族側では基礎控除を生かして可処分所得を増やせます。ただし、実態のない名義だけの役員は否認リスクがあるので、議事録や職務分担の整備が欠かせません。
最後に、相続対策としても法人は有効です。法人株式は評価額を抑えやすく、物件を一括で承継できるため遺産分割のトラブルを防ぎやすいからです。つまり、節税と資産承継を同時に考えたい人にとって法人化は有力な選択肢となります。
ファミリーマンションを法人名義で買う際の融資事情

まず押さえておきたいのは、法人名義の融資は審査基準が個人と異なる点です。金融機関は物件の収益力に加え、法人の決算内容や代表者保証の有無を重視します。
設立1期目の赤字は一般的で、金融機関も一定の理解を示します。しかし2期連続赤字となると融資条件が厳格化するため、初年度から黒字化できる物件選定が欠かせません。特にファミリーマンションはワンルームより利回りが低めなので、空室期間を短くする管理体制が重要になります。
金利面では、個人より0.2〜0.5%高い水準を提示されることが多いです。代表者保証や追加担保を求められる場合もあるため、自己資金は物件価格の20%以上を用意したいところです。実は自己資金が厚いと、物件評価額に対して90%以上の融資が可能になるケースもあります。
2025年の金利トレンドは緩やかな上昇局面にあり、日本政策金融公庫の不動産担保融資が固定1.4%台で推移する一方、民間銀行の変動金利は1.8%前後に留まっています。利回り5%のファミリーマンションなら、金利差0.4%が30年間で300万円近い総返済額の差を生む計算です。複数行を比較し、変動と固定を組み合わせる戦略も検討しましょう。
ポイントは、法人化の節税効果が金利上昇によるコスト増を上回るかどうかをシミュレーションすることです。税理士と金融機関担当者を交えて試算すれば、より現実的な判断ができます。
管理運営の違いと家族への影響
実は、法人名義で所有すると管理運営のフローも変わります。家賃収入は法人の売上になり、経費精算や帳簿付けは会社の会計ルールに従います。クラウド会計ソフトを使えば、領収書の自動仕訳や銀行口座の同期で事務負担を大幅に削減できます。
管理会社との契約形態も個人契約から法人契約へ切り替わります。法人は消費税課税事業者となる可能性があるため、管理委託料や広告費にかかる消費税を控除できる点が利点です。一方で課税売上が1000万円を超えると、翌期から消費税の納税義務が発生するためキャッシュフロー管理が欠かせません。
家族が実際に住む場合、法人から役員社宅として貸し出す方法があります。法人側は家賃相当額の50%程度を損金に算入でき、役員個人は低い賃料で居住可能です。ただし、賃料設定が時価とかけ離れると税務否認のリスクがあるため、近隣相場の調査を怠らないようにしましょう。
また、子どもが成人した後に物件管理を引き継ぐケースでは、法人株式を段階的に譲渡して経営参加を促す方法が有効です。将来にわたりファミリーマンションが家族の資産形成に寄与するよう、早期からガバナンス体制を整えておくと安心です。
2025年度の法制度と注意点
まず、2025年度時点で確実に利用できる制度として、小規模企業共済等掛金控除と倒産防止共済掛金控除があります。これらは法人役員の退職金原資として利用でき、掛金全額を法人損金に算入できる優れた節税策です。
一方で、低未利用土地等を譲渡した際の所有権移転登記免許税の軽減は2025年12月で終了予定とされています。ファミリーマンションを建築目的で土地取得から行う人は、期限までに登記を済ませるか、代替措置を確認する必要があります。
固定資産税の住宅用地特例は引き続き適用されますが、区分所有マンションの場合、専有面積が50㎡未満だと特例割合が下がる点に注意しましょう。ファミリーマンションは概ね60〜80㎡のため条件を満たしやすいですが、リフォームで間取り変更を行う際は登記上の面積が変わらないよう配慮が必要です。
最後に、インボイス制度は2023年から始まり2026年9月までは経過措置期間ですが、法人オーナーは適格請求書発行事業者の登録を検討しておくと取引先とのトラブルを防げます。賃貸借契約書や管理委託契約書にインボイス番号を記載する運用を今のうちに整備しておくとスムーズです。
法人化の手順とタイミングの見きわめ
ポイントは、物件取得前に法人を設立しておくか、購入後に移管するかを見極めることです。取得前に設立すると登記費用や登録免許税がかかるものの、最初から法人名義で融資を受けられます。
一方で、個人で購入してから法人へ売却する方法もあります。この場合、譲渡益に課税されるうえ、再度の登記費用が生じます。つまり、節税メリットがコストを上回るかどうかが判断基準になります。
設立時の資本金は100万円程度でも構いませんが、金融機関は資本金の多寡を信用判断の材料にします。ファミリーマンション1戸を2,000万円で購入するなら、資本金300万円を入れて自己資本比率を高めると審査が通りやすくなります。
最後に、税理士や司法書士との連携が鍵になります。定款作成から登記、税務署への届出までをワンストップで依頼すれば、設立作業は最短2週間で終えられます。タイミングとしては、購入を検討する物件の売買契約前がベストです。これにより、融資申請や決済までのスケジュールを無理なく組めます。
まとめ
本記事では「ファミリーマンション 法人化」をテーマに、節税効果、融資条件、管理運営、法制度、手順とタイミングまで幅広く解説しました。法人化は税負担を軽減しつつ資産承継を円滑にする強力な手段ですが、金利上昇局面では融資条件がシビアになりがちです。家族構成や将来設計を踏まえ、税理士や金融機関と綿密にシミュレーションしたうえで最適な道を選びましょう。行動を先延ばしにせず、今日から情報収集と資金計画を始めることが成功への近道です。
参考文献・出典
- 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 国税庁法人税等の税率 – https://www.nta.go.jp
- 中小企業庁 小規模企業共済制度 – https://www.chusho.meti.go.jp
- 日本政策金融公庫 融資金利情報 – https://www.jfc.go.jp
- 総務省統計局 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp