不動産投資を始めたいけれど、個人名義と法人名義のどちらが有利なのか、そして築浅物件は本当に安全なのか。そんな疑問を抱えている方は多いはずです。築浅物件なら空室リスクが低そうでも、購入価格が高い点が不安かもしれません。また、法人化は節税に役立つと聞いても、手続きやコストを考えると踏み切れない人もいるでしょう。本記事では、築浅物件を法人で保有する際のメリットと注意点を、最新データと2025年度の制度に基づいてわかりやすく解説します。読み終える頃には、あなたに合った投資戦略が明確になるはずです。
築浅物件が投資初心者に向く理由

まず押さえておきたいのは、築浅物件が持つ安定性です。国土交通省の「住宅市場動向調査2024」によれば、築10年以内の空室率は全国平均3.2%と低水準で、築20年以上の6.9%と比べ半分以下です。つまり、賃貸需要が堅調なうえ、修繕費が抑えられる点が魅力です。
築浅物件は最新の耐震基準や省エネ法に対応しているため、大規模修繕のタイミングが遅くなる傾向があります。修繕積立金の上昇リスクも当面限定的で、キャッシュフローを読みやすいメリットがあります。また、性能面での安心感が賃料に反映されやすく、礼金や更新料をしっかり確保しやすい点も見逃せません。
一方で、購入価格が高く利回りが低く見えるケースが多いのも事実です。しかし、空室期間の短さや修繕費の低さを考慮すると、実質利回り(ネット利回り)が築古より高くなることも珍しくありません。投資効率を判断する際は、表面利回りだけでなく、長期の支出まで含めて比較することが重要です。
法人化で得られる具体的なメリット

ポイントは、課税方法の違いがキャッシュフローに直結する点です。個人の不動産所得は累進課税で最大45%の税率がかかりますが、2025年度の法人実効税率は約30%前後に抑えられます。所得が高くなるほど、法人化による節税効果が大きくなる仕組みです。
さらに、法人では給与所得控除を利用して役員報酬を受け取れるため、所得分散による手取りアップが期待できます。社会保険料の負担増には注意が必要ですが、家族を役員にすることでライフプランに合わせた報酬設計が可能です。また、車両費や通信費など業務関連の支出を経費計上しやすく、税引後の利益を圧縮できる点も魅力と言えます。
限度額までの退職金積立や小規模企業共済の活用により、将来の資金計画を有利に進められるのも法人化の利点です。法人口座での内部留保を厚くすれば、次の物件取得の頭金に充てることもでき、複利効果を加速できます。ただし設立費用や毎期の決算コストが発生するため、年間利益が500万円を超えるかどうかが一つの判断ラインになります。
築浅を法人で取得する際の税務と会計のポイント
重要なのは、減価償却費をどう計上するかです。築浅物件の場合、残存耐用年数が長いので、定額法を採用しても毎年の費用化額は相対的に小さくなります。そこで、土地と建物の按分比率を適切に設定し、実態に合った節税効果を確保することが求められます。
購入時には登録免許税と不動産取得税が発生しますが、新築から1年以内に取得した住宅用家屋で一定の要件を満たすと、2025年度も登録免許税の税率軽減(0.15%→0.1%)が適用されます。法人でも適用対象になるため、決済スケジュールを調整し早めに登記するだけでコストを削減できます。
会計面では、物件取得時に支払った仲介手数料や司法書士報酬を「繰延資産」とせず当期費用処理するかどうかで、初年度の利益が変わります。金融機関が早期の黒字化を重視する場合、あえて費用を繰り延べる選択も考えられます。経営方針と融資契約条件を突き合わせて、最適な会計処理を決めることが大切です。
資金調達とキャッシュフローを安定させる考え方
実は、築浅物件は評価額が高いため、金融機関の融資姿勢が比較的前向きです。日本銀行の「貸出動向アンケート調査2025年10月」によると、築10年以内の区分マンションを担保とする平均融資掛目は80%を維持しています。自己資金を3割用意すれば、金利1%台後半の長期固定を引き出しやすいのが現状です。
一方で、借入期間が長くなるほど総返済額は膨らみます。シミュレーションでは、5,000万円を1.7%・30年で借りた場合、総返済額は約6,479万円です。これを25年に短縮すると総返済額は約6,172万円に下がり、利息負担が300万円以上カットできます。返済比率と空室損失のバランスを見極め、無理のない計画を組むことが不可欠です。
法人の場合、銀行は「債務償還年数(DSCR)」を重視します。家賃収入から経費と税金を差し引いた年間キャッシュフローが、元本返済額の1.2倍以上あるかが目安です。築浅物件は家賃下落が緩やかなため、この指標で有利に働きやすいと言えます。それでも、金利上昇リスクに備え、変動と固定を組み合わせる戦略が有効です。
2025年度の制度活用と実務ステップ
まず、固定資産税の新築住宅減額を確認しましょう。延床面積が50〜280㎡の賃貸住宅なら、完成後3年間は固定資産税が2分の1に軽減されます。法人オーナーでも適用されるため、築浅を取得するタイミングで恩恵を受けられます。2025年度末までの特例なので、取得時期の調整がポイントです。
次に、インボイス制度の対応です。2023年導入時点で免税事業者だった法人も、課税売上高が1,000万円を超えたら2025年度の課税期間から消費税申告が義務化されます。賃貸住宅部分は非課税でも、駐車場や太陽光発電など課税売上がある場合は注意が必要です。課税事業者になる前に設備投資を行い、仕入税額控除を最大化する戦略が効果的です。
最後に、電子帳簿保存法の改正対応があります。2024年の猶予措置終了により、2025年1月以降は領収書や請求書を電子で受領した場合、改ざん防止措置と検索機能の確保が必須です。クラウド会計ソフトを導入しておけば、税務調査への備えになるだけでなく、物件ごとの収支をリアルタイムで把握でき、意思決定が迅速になります。
まとめ
築浅物件は空室率が低く修繕負担も軽いため、安定したキャッシュフローが見込めます。法人化を組み合わせれば、税率の引き下げや経費計上の幅が広がり、手取りベースの利回りを高められます。ただし、設立コストや会計処理の複雑さ、インボイス制度への対応など、新たに発生する業務負担も無視できません。まずは年間の想定利益と将来の拡大計画を数字で検証し、専門家と相談しながら最適なスキームを選びましょう。行動に移せば、あなたの資産形成は確実に加速します。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅市場動向調査2024 – https://www.mlit.go.jp/report/
- 国税庁 法人税課税実務の手引き(2025年版) – https://www.nta.go.jp/
- 日本銀行 貸出動向アンケート調査2025年10月 – https://www.boj.or.jp/
- 総務省 固定資産税に関する資料(令和7年度改正) – https://www.soumu.go.jp/
- 法務省 登録免許税の税率一覧(2025年度) – https://www.moj.go.jp/