不動産投資に興味はあるけれど、損をしたらどうしよう。銀行融資や空室のリスクを考えると、最初の一歩がなかなか踏み出せない。そんな不安を抱える方に向け、本記事では不動産投資の代表的なデメリットを整理し、それを乗り越える具体的なポイントを示します。仕組みや数字をやさしく解説するので、初心者でも安心して読める内容です。読み終えたときには、自分に合ったリスク管理の方法が分かり、投資計画を前向きに描けるようになるでしょう。
キャッシュフローを圧迫するコスト

重要なのは、手元に残るお金を常に意識することです。表面利回りだけで判断すると、あとから発生するコストによって赤字に転落することがあります。
まず、購入時に支払う仲介手数料や登記費用、ローン手数料は物件価格の7〜10%程度になるのが一般的です。国土交通省の「不動産取引価格情報」によると、都心で3,000万円の区分マンションを買えば、諸費用だけで200万円前後を見込む必要があります。この金額を自己資金で手当てできなければ、ローン残高が増え、金利負担も膨らんでしまいます。
次に、保有中の支出として管理費、修繕積立金、固定資産税が毎年かかります。修繕計画が未整備の物件ほど、築後15年を過ぎた時点で急に大規模修繕費が跳ね上がる傾向があります。実は、この時期にキャッシュフローがマイナスに転じて物件を手放す投資家も少なくありません。
さらに、金利上昇リスクが潜在的に存在します。日本銀行の統計では、変動型住宅ローン金利は2020年代前半に比べ0.2〜0.3%上昇しています。0.5%の上昇でも、3,000万円を25年返済で借りている場合、総返済額は約200万円増える計算です。返済計画を立てる段階で「金利1%上昇シナリオ」を織り込み、余裕資金を準備しておくことが不可欠です。
空室リスクと賃料下落の読み方

まず押さえておきたいのは、空室率と賃料水準はエリアごとに大きく異なるという事実です。人口動態や再開発計画の有無で、10年後の収益がまるで変わります。
総務省「住宅・土地統計調査」によると、2023年の全国平均空き家率は13.8%ですが、地方では20%を超える自治体もあります。一方で、東京都23区はわずか11%台にとどまっています。つまり、地方の高利回り物件は数字の見た目ほど魅力的とは限らず、将来的な空室長期化のリスクを背負うのです。
賃料下落にも注意が必要です。住宅金融支援機構のレポートでは、築20年超のファミリータイプ賃料が築5年以内と比べて平均15%低下しています。家賃保証会社を利用しても、更新時に保証額が下がるケースがあるため、賃料が落ち込んだ場合のキャッシュフローをシミュレーションしておく必要があります。
対策としては、雇用拠点へのアクセス、駅からの徒歩距離、生活利便施設の充実度を複合的に評価し、需要が底堅いエリアを選ぶことが肝要です。また、バリューアップ改修や家具レンタルサービス導入などで差別化を図ると、築年数が経過しても一定の賃料を維持しやすくなります。
法制度と税務の注意点
ポイントは、投資家自身が制度変更のリスクを負うという認識を持つことです。税率や補助金は国の財政状況によって改定される可能性があります。
所得税・住民税に関わる損益通算は、不動産所得が赤字でも給与所得と相殺できる制度です。ただし2025年度税制でも、耐用年数を超えた木造物件の減価償却費には上限があります。過度に古い物件を購入して節税だけを狙うと、翌年度以降に課税負担が増える恐れがあるので注意しましょう。
固定資産税は、評価額が3年ごとに見直されます。再開発や人気化で地価が上昇すると、税額が増えることもあります。国土交通省の地価公示データでは、湾岸エリアのマンション地価が直近3年間で平均11%上昇しました。利益が増えても税金で相殺されないよう、中長期の試算に税負担を含める必要があります。
また、2025年度も継続する「賃貸住宅省エネ改修支援事業」は、一定の断熱性能を満たす改修に対して最大120万円の補助が受けられます。期限は2026年3月末申請分までとされているため、利用を検討する場合は工期と申請手続きを早めに進めましょう。
長期的な出口戦略をどう描くか
実は、不動産投資で利益を確定させるタイミングは「買うとき」より「売るとき」のほうが難しいものです。出口戦略を曖昧にしたまま保有し続けると、デメリットが雪だるま式に膨らみます。
まず、売却益にかかる譲渡所得税は保有期間5年以下と超過で税率が異なります。短期譲渡税は約39%、長期でも約20%前後です。保有期間が4年目で買い手が付いた場合、あえて1年待って長期譲渡に切り替えることで税負担を半減できるケースがあります。つまり、保有年数を意識した売却スケジュールがポイントになります。
次に、賃料収入が下がり始めた段階で売るか、リノベーションして収益を回復させてから売るかの判断が必要です。大規模修繕で300万円を投じても、売却価格が500万円高くなるなら投資としては成功です。反対に、周辺相場が伸び悩んでいる場合は、なるべく早く売却して損失拡大を防ぐ選択も合理的です。
最後に、持ち続ける場合の代替案として、相続対策へシフトする方法があります。相続時精算課税制度を活用すれば、将来の贈与税負担を抑えつつ保有を続けられます。資産管理法人へ物件を移すことで、家族へキャッシュフローを分配しながら法人税率のメリットを享受する戦略もあります。
デメリットを乗り越える投資ポイント
不動産投資 デメリット ポイントを理解した上で、具体的にどう行動すべきかを整理します。大切なのは「定量的な検証」「分散」「専門家の活用」の三本柱です。
第一に、購入前のシミュレーションでは最悪ケースを数値化します。空室率20%、賃料10%下落、金利1%上昇を同時に想定し、それでも年間キャッシュフローがプラスなら安全域が確保できます。
第二に、資産を分散させることでリスクを平準化します。エリアを変えるだけでなく、ファミリー向けと単身向けを組み合わせる、区分と一棟をバランスさせるなど、多層的な分散が有効です。これにより、特定市場の賃料下落や空室率上昇がポートフォリオ全体に及ぼす影響を抑えられます。
第三に、税理士・管理会社・建築士といった専門家を早期に巻き込みます。自力でコストを削るよりも、適切な修繕時期や節税方法の提案を受けるほうが長期的なリターンを高めやすいからです。実際、管理委託料を年1%削減するより、適切な減価償却計算で税金を3%減らすほうが効果が大きいケースが珍しくありません。
まとめ
本記事では、キャッシュフロー悪化、空室と賃料下落、法制度・税務、出口戦略という四つのデメリットを中心に解説しました。それぞれに対し、購入前の厳格なシミュレーション、需要のある立地選び、制度改正のモニタリング、保有年数を踏まえた売却計画が有効です。結論として、リスクを数値化し、分散と専門家の知見を活用すれば、不動産投資のデメリットは管理可能な範囲に収まります。今日からは数字と情報を武器に、長期で安定した投資プランを描いてみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産取引価格情報検索 – https://www.land.mlit.go.jp
- 総務省統計局 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp
- 日本銀行 貸出・預金金利等 – https://www.boj.or.jp
- 国土交通省 地価公示・地価調査 – https://www.mlit.go.jp
- 住宅金融支援機構 賃貸住宅市場リポート – https://www.jhf.go.jp