築10年前後の物件は価格がこなれており、初心者でも手を出しやすいと感じるかもしれません。しかし実際には「購入後すぐに空室が増えた」「想定外の修繕費が膨らんだ」といった声が多く聞かれます。本記事では、築10年 失敗事例を通じて見えにくいリスクを整理し、2025年12月時点で活用できる対策まで解説します。読み終えたとき、あなたは同じ失敗を回避する具体的なチェックポイントを手に入れているはずです。
築10年物件が抱える見えないリスク

まず押さえておきたいのは、築10年という区切りには法定点検や設備更新が集中しやすい事実です。外壁塗装や給湯器の交換は10〜15年目に重なることが多く、想定外の支出につながります。また、建築時の施工品質が高くても、管理組合の積立金が不足していれば必要な修繕が遅れ、資産価値はじわじわ低下します。
次に、購入時点では問題のない見た目でも、配管の腐食やシロアリ被害など目視できない箇所が進行しているケースがあります。日本住宅保証検査機構によると、築10〜15年で給排水管の部分腐食が見つかる割合は約27%。つまり、表面の劣化が軽微でも内部に潜むリスクは無視できません。
さらに、エントランスのデザインや共有部の照明は10年で時代遅れになることがあります。入居者は築年数よりも「古びた印象」に敏感ですので、想定家賃が維持できなくなる要因となります。これらのリスクを把握せずに購入を決めると、収支計画は簡単に崩れてしまうのです。
家賃下落のメカニズムと市場データ

重要なのは、家賃がどのように下落するか定量的に把握することです。東京都都市整備局の2025年レポートでは、築1〜5年の平均坪単価を100としたとき、築10年では約92、築15年では約85に低下しています。この数字だけを見ると緩やかな下落ですが、管理費や空室の影響を加味すると実質利回りは大きく削られます。
言い換えると、購入時に表面利回り8%だった物件でも、家賃が月1万円下がり、空室率が10%から15%に上がるだけで、5年後には実質利回りが6%を切ることも珍しくありません。家賃下落は複利効果の逆であり、毎年の収入減が修繕積立の不足を招き、さらなる価値低下へ連鎖します。
ここで参考になるのが周辺の新築供給量です。国土交通省の住宅着工統計によれば、2024〜2025年の都心3区は前年対比で供給が4%増加しています。新築の競合が増えれば、築10年物件は家賃を下げて対抗せざるを得ません。購入前に地域の供給動向を確認することが、将来の下落幅を読む手がかりになります。
管理コストが膨らむタイミング
ポイントは、管理費や修繕費が「いつ」「いくら」増えるかを具体的に試算することです。築10年の時点でエレベーターや給水ポンプの保守契約を見直すマンションは多く、年間10〜20万円の増額が発生する例があります。区分所有なら管理組合が一括で対応しますが、戸当たりの負担が予想外に増すことも少なくありません。
また、共用部のLED化など省エネ改修を行う際には、2025年度の「住宅省エネリフォーム促進事業」が使える場合があります。同制度では工事費の3分の1、上限50万円が補助されるため、適用できればキャッシュフローを守る強い味方になります。ただし、申請は施工業者経由での事前登録が必須ですから、購入前に適格業者を探しておくとスムーズです。
一方で、賃貸管理会社の手数料も静かに上昇傾向にあります。入居者付けの広告料が家賃1カ月から1.5カ月へ増えると、短期解約が続いた場合のコストは跳ね上がります。物件の設備更新や入居者ニーズに合わせたリノベーションを怠れば、管理コストは加速度的に膨らむことを覚悟しなければなりません。
融資審査と売却時の落とし穴
実は、築10年物件は金融機関の評価が割れやすい点にも注意が必要です。日本政策金融公庫の指針では、耐用年数を超える残存期間が短いほど融資期間が圧縮され、毎月返済額が増えます。住宅ローンのような長期固定を期待していた投資家が、いざ審査段階で返済比率に苦しむケースは後を絶ちません。
さらに、出口戦略としての売却では、築20年を超えた途端に融資が付きにくくなるため、買主の裾野が一気に狭まります。不動産経済研究所のデータによれば、築20年以上の区分マンションの成約件数は築10年比で約60%。つまり、買い手の選択肢が減り、想定価格より1〜2割下げてやっと成約となる事例が多数報告されています。
このリスクを軽減する方法として、売却予定時期を購入時に決め、残債を確実に上回る価格で売れるシナリオを作ることが挙げられます。保守的なシミュレーションでキャッシュフローを確認し、万が一の出口でも自己資金で残債を補えるよう、流動性の高い資金を並行して確保しておくことが重要です。
2025年度の補助制度を活かしたリスクヘッジ
まず押さえておきたいのは、国の補助金を巧みに使えば築10年 失敗事例の多くを回避できる点です。2025年度も継続予定の「長期優良住宅化リフォーム推進事業」は、耐震補強やバリアフリー改修に対して最大250万円の補助が受けられます。対象工事にエントランス自動ドアや宅配ボックスの設置が含まれるため、競合物件との差別化に直結します。
次に、地方自治体独自の空き家対策補助にも注目しましょう。たとえば大阪市では2025年度まで「民間賃貸住宅性能向上支援事業」を実施しており、外壁改修費の20%を助成しています。地方在住の投資家でも、管理委託契約があれば利用可能なケースが多いので、物件所在地の制度を必ず確認しておくと良いでしょう。
これらの補助制度は年度ごとに予算枠が設けられ、早期に受付終了となることもあります。あらかじめ工事内容と見積もりを用意し、募集開始と同時に申請できる体制を整えておけば、資金繰りに余裕が生まれます。つまり、公的支援を最大限に活かすことが、築10年物件でも安定した収益を維持する鍵となるのです。
まとめ
本記事では、築10年 失敗事例から浮かび上がるリスクと対策を具体的に整理しました。見た目の割安感だけで購入すると、家賃下落や修繕費の集中、融資期間の短縮といった問題が次々に表面化します。しかし、実際には事前調査と補助制度の活用で大半のリスクはコントロール可能です。購入を検討する際は、地域の供給動向を確認し、将来の修繕計画と出口戦略をシミュレーションした上で、信頼できる専門家にセカンドオピニオンを求めましょう。適切な準備があれば、築10年物件でも長期安定のキャッシュフローを実現できます。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅着工統計2025年版 – https://www.mlit.go.jp/statistics
- 東京都都市整備局 住宅賃貸市場レポート2025 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp
- 不動産経済研究所 2025年マンション市場動向 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 日本銀行 金融システムレポート2025年10月 – https://www.boj.or.jp
- 一般社団法人住宅リフォーム推進協議会 補助金情報2025 – https://www.j-reform.com