築20年前後の物件を保有していると、「設備も古いし入居者が決まらないのでは」と不安になるものです。実際、国土交通省の住宅市場動向調査でも築年数が進むほど空室率は高まる傾向が示されています。しかし、築20年の段階で適切な改善を行えば、まだ十分に競争力を保てます。本記事では、立地や間取りを変えられない既存物件でもできる実践的な空室対策を、資金計画や2025年度の制度活用まで含めて解説します。読了後には、具体的な改善ポイントと行動手順が明確になり、家賃収入を安定させる自信が得られるはずです。
築20年前後の物件が抱える空室リスク

まず押さえておきたいのは、築20年の時点で賃貸市場におけるポジションが大きく変わることです。新築時には最新だった設備やデザインが、周辺の築浅物件と比べて見劣りし始めるため、広告閲覧の段階で選択肢から外されやすくなります。
家賃相場を見ても、一般に築15年を過ぎると年1%程度の下落が続くとされています。つまり賃料調整だけで勝負すると、数年で大幅な収益低下につながりかねません。また、修繕積立が不足していると故障対応が後手に回り、クチコミサイトの評価低下を招くこともあります。これらは全て空室率の上昇につながるため、受け身の姿勢ではリスクが拡大するだけです。
一方で、築20年は構造体の寿命がまだ十分残るタイミングでもあります。日本建築学会の資料によると、鉄筋コンクリート造の平均法定耐用年数は47年です。躯体に問題がなければ、内装と設備の更新で印象を大きく変えられます。つまり、適切な投資を見極めれば収益力を維持できる可能性が高い年代なのです。
さらに、築20年物件は帳簿上の残存価値が低く、減価償却が加速度的に終盤を迎えます。キャッシュフローの観点では、税引き後利益が減少しやすい時期ですが、逆に言えば現金の使い道を「価値を高める投資」に振り向けやすい段階でもあります。ここでの判断が今後10年間の空室率を大きく左右します。
競合に勝つリフォーム戦略

ポイントは「見た目の刷新」と「生活価値の向上」を同時に達成するリフォームを選ぶことです。単なるクロス張り替えだけでは他物件との差別化が難しく、投資効果も限定的になります。
設備面では、ファミリー向けなら追い焚き機能付き給湯器、シングル向けなら高速インターネット無料化など、入居者が月々の生活費を比較する際にメリットを感じる項目が効果的です。総務省の家計調査では通信費は月平均6,000円前後とされるため、「ネット無料」は実質的に家賃を下げたのと同じ印象を与えます。
次に、視覚的インパクトを高める方法としてアクセントクロスや照明デザインの工夫があります。色味を一面だけ変えるアクセントクロスは材料費が抑えられ、写真映えもするため内見予約段階から効果を発揮します。またLEDダウンライトへの交換は電気代削減を入居者に訴求できるため、エコ志向の層に刺さりやすい点が魅力です。
工事費を抑えつつ賃料維持を狙うなら、水まわりの「部分交換」も有効です。例えばキッチンは天板のみステンレスから人工大理石に替える、浴室は鏡と水栓だけを更新するなど、フルリノベーションより費用対効果が高いケースが多いです。実は、こうしたメリハリ投資を組み合わせることで、平均リフォーム回収期間は3〜4年に短縮できるとの民間調査結果もあります。
賃料設定と広告で差をつける
重要なのは、リフォーム後の賃料を「周辺相場プラスα」だけでなく、「検索条件にヒットしやすい価格帯」に合わせることです。不動産ポータルサイトの検索フィルターは5,000円単位で設定されることが多く、例えば月7万3,000円の家賃は「7万円以下」で検索した利用者に表示されません。そこで、リフォーム直後でも7万円ちょうどに設定し、空室期間を短縮して早期満室を目指す戦略が効果を発揮します。
広告写真は、リフォームした部屋だけでなく共用部も明るい時間帯に撮影し、清掃状況をアピールしましょう。国土交通省の2024年度賃貸取引アンケートでは、物件選びの決め手として「共用部の清潔感」を挙げた割合が46%に上りました。つまり、室内だけでなく外観を磨くことがクリック率を上げる近道です。
また、募集開始から2週間は反響が最も多い「ゴールデンタイム」です。この時期に空室が決まらなければ、写真の差し替えやキャッチコピーの見直しを躊躇しないことが大切です。具体的には、最寄り駅からの徒歩分数を実測し、実際より長く表示されている場合は修正するだけで問い合わせ増につながるケースもあります。
最後に、地場仲介会社との関係構築も忘れないでください。築20年物件は「キラキラの新築」ほど営業マンが優先して紹介しない傾向があるため、オーナー自身が定期的に来店し最新の空室資料を配布することで露出を確保できます。小さな手間が入居申し込みのスピードを左右します。
入居者満足度を高める運営術
まず入居後1か月以内にアンケートを実施し、不具合や要望を早期に拾う仕組みを作りましょう。トラブルが表面化する前に対応すれば、退去につながる大きな不満を未然に防げます。日本賃貸住宅管理協会のデータでは、退去理由の22%が「管理対応への不満」です。
加えて、共用部の定期清掃は「朝と夕方の人通りが多い時間帯」に行うと入居者が作業を目にしやすく、安心感を与えられます。結果としてマナー違反の抑止効果も期待でき、管理コストの長期的削減につながります。つまり、可視化された管理姿勢が入居者の定着を促すわけです。
さらに、築20年物件でもスマートロックや宅配ボックスを後付けできる製品が増えています。置き配利用が拡大し、EC市場が年率8%で伸びている現状では、宅配ボックスの有無が入居継続を左右する要因になりつつあります。10戸規模でも省スペース型を導入すれば、月額500円程度の家賃アップが見込める事例も珍しくありません。
入居期間中のコミュニケーションには、管理会社経由のメール配信システムが便利です。防災情報や季節の挨拶を送るだけでも、「顔の見えるオーナー像」を演出できます。築年数をカバーするのは結局ソフト面での差別化だと意識すると、長期的な空室対策につながります。
2025年度の制度を上手に活用する
実は、2025年度も引き続き「既存住宅の省エネ改修」に対する国の補助金が利用可能です。例えば環境省の「既存賃貸集合住宅断熱改修事業」は窓の断熱性能向上工事などに対して上限200万円の支援が受けられ、交付期限は2026年3月末までとされています。これを活用すれば、遮熱効果による光熱費削減を入居者にアピールでき、賃料維持にも直結します。
また、地方自治体独自のリフォーム助成も併用できます。東京都では2025年度も「既存住宅省エネ改修助成」が続行予定で、補助率は工事費の1/3、上限150万円です。自治体ごとに受付期間が異なるため、公式サイトを定期的にチェックし「予算消化前に申請する」ことが肝心です。
結論として、補助金は申請のタイミングと工事内容の適合性が成否を分けます。施工業者選びの段階で制度に詳しい会社を選定し、書類作成をサポートしてもらうと手間と時間を大幅に削減できます。結果として、自己資金を抑えつつ築20年 空室対策を加速できるわけです。
まとめ
築20年物件の空室対策は「適切なリフォーム」「的確な賃料設定と広告」「入居後の満足度向上」、そして「2025年度の補助金活用」の四本柱で構成されます。どれか一つでも欠けると効果は半減しますが、連動させれば新築に近い競争力を取り戻せます。まずは物件診断で投資優先度を把握し、補助金申請スケジュールを逆算して計画を立てましょう。早期に行動を起こすほど空室期間を短縮でき、家賃収入の安定化につながります。今日から一歩踏み出し、築20年という節目を成長のチャンスに変えてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅市場動向調査2024年度版 – https://www.mlit.go.jp/
- 日本建築学会 建築物の耐用年数に関する資料集 – https://www.aij.or.jp/
- 総務省 家計調査年報2024 – https://www.stat.go.jp/
- 日本賃貸住宅管理協会 入居者退去理由調査2023 – https://www.jpm.jp/
- 環境省 既存賃貸集合住宅断熱改修事業概要2025 – https://www.env.go.jp/
- 東京都住宅政策本部 既存住宅省エネ改修助成2025 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/