多くの投資家が「木造は利回りが高いと聞くけれど、本当に収益性は十分なのか」と不安を抱えています。実際、鉄筋コンクリート造と比べると耐用年数が短い分、家賃設定や修繕費の見込みを慎重に判断しなければなりません。しかし、構造の特性を理解し、税制と融資を上手に活用すれば、木造物件でも長期で安定したキャッシュフローを生み出すことは十分に可能です。本記事では、2025年12月時点の制度と市場データをもとに、木造 収益性を高める具体策を段階的に解説します。
木造アパートの収益構造を理解する

まず押さえておきたいのは、木造アパートの収益源が「家賃収入」と「節税効果」の二本柱で成り立っている点です。国土交通省の令和6年住宅着工統計によると、新設賃貸住宅の約6割が木造です。理由は建築コストが比較的低く、初期投資を抑えられるため、表面利回りを高めやすいからです。
一方で、木造は耐用年数が法定22年と短く、家賃下落の起点も早い傾向があります。実はこの短所を補うのが節税効果です。建物部分の減価償却費を加味すると、キャッシュフローが税引き後で黒字化するスピードが速くなります。特に築浅の中古物件を購入すれば、残存耐用年数を短く計算できるため、数年間は大きな償却を取れ、実質利回りが向上します。
つまり、木造 収益性を測る際は、単純な家賃利回りではなく、減価償却による税引き後キャッシュフローまで含めた総合収益で判断する必要があります。購入前に必ず損益計算書(PL)とキャッシュフロー計画(CF)を作り、空室率10〜15%を見込んだ保守的なシミュレーションを行いましょう。
建築コストと耐用年数から見る利回り

重要なのは、総投資額に対してどれほどの家賃収入を確保できるかという「ネット利回り」の考え方です。木造の建築単価は地域差があるものの、全国平均で坪60〜70万円前後に落ち着いています。一方、RC造は坪100万円を超えるケースが珍しくありません。その差額がローン元本を圧縮し、返済比率を引き下げます。
しかし、耐用年数の短さが将来価値(リセールバリュー)に影響する点は避けられません。東京都都市整備局の賃貸住宅市場レポートによると、築20年を過ぎた木造アパートの家賃下落率は年間1%前後で、RC造よりやや大きいとされています。したがって、表面利回りだけに満足せず、長期修繕計画と資金積立を並行して行うことが不可欠です。
また、2025年度の建築基準法改正によって、省エネ性能の説明義務が拡大しました。断熱等級4以上を確保すると、光熱費削減を訴求でき、家賃維持にプラスに働きます。導入コストは1戸あたり30〜40万円増える程度ですが、入居者ニーズの高まりを考えれば、投資回収は十分に見込めます。
空室リスクとメンテナンス費用を抑える工夫
ポイントは、空室期間を短くし、修繕費を平準化する運営体制を整えることです。総務省の住宅・土地統計調査では、地方圏の空室率が20%に迫るエリアもありますが、設備更新をこまめに実施する物件は入居期間が平均1.5倍長いとのデータがあります。
木造は構造上、外壁塗装や屋根防水のサイクルが10〜12年とRCより短めです。それでも、外壁材に金属サイディングを採用すると、次回塗装まで15年程度延ばせるケースがあります。また、屋根にガルバリウム鋼板を使えば、修繕コストを1割ほど削減可能です。設備面では、Wi-Fi無料や宅配ボックスの導入が低コストで高い集客効果を発揮します。
さらに、入居者コミュニティを重視した運営会社と組むと、クレーム対応が迅速になり、退去率の低下に直結します。家賃を上げるより、退去を防ぐほうがコスト効率は高いという事実を覚えておきましょう。
2025年度の税制優遇と融資環境
実は、税制と融資の活用次第で木造 収益性は大きく変わります。所得税法上、木造住宅の減価償却は「定額法22年」が原則ですが、中古取得時は「(耐用年数−築年数)+築年数×20%」で再計算できます。築12年の物件なら残存耐用年数は約11年となり、年間償却費を一気に計上できます。
2025年度の固定資産税新築減額措置も見逃せません。賃貸住宅の場合、床面積120㎡相当分まで、3年間は税額が1/2に軽減されます(適用期限は2027年3月31日まで)。また、日本政策金融公庫の「生活衛生貸付」や一部地銀のアパートローンは、木造でも金利1.3〜1.7%台が提示されており、RC造向けより0.2ポイントほど低いケースがあります。
金融機関は自己資金20%を確保し、返済比率50%以下を守る計画を示せば、長期35年融資も十分可能です。金利上昇リスクに備え、固定金利期間を10年以上に設定し、繰上げ返済用に運用益の3割を積み立てると安全度が高まります。
木造だからできる出口戦略
基本的に、木造物件の出口は「大規模修繕後の長期保有」か「土地値での売却」に二分されます。土地値が底堅い都市近郊なら、建物価値がゼロになるタイミングで、更地渡しを前提に売却する手法が有効です。実際、国税庁の路線価データを参照すると、三大都市圏の準工業地域では2020年から2025年にかけて平均4%上昇しており、土地値上昇が利回りを下支えしています。
一方、比較的新しい木造アパートを保有し続ける場合、築20年目前に外装と室内設備を同時に更新すると、家賃を2割程度維持できるという管理会社の統計もあります。更新費用は1戸あたり100万円前後ですが、残り10年以上の高稼働を確保できれば、内部収益率(IRR)はむしろ向上します。
売却時は収益還元法と積算法の両面から価格を提示できる仲介会社を選び、想定利回りと土地相場の説明資料を準備しましょう。そうすることで、買主側の金融機関審査をスムーズに通過させ、値引きを最小限に抑えられます。
まとめ
ここまで見たように、木造 収益性は「初期投資の低さ」「減価償却の大きさ」「出口戦略の柔軟さ」の三点を軸に考えると分かりやすく整理できます。家賃下落と修繕費を過小評価しないシミュレーションを作成し、税制優遇と低金利融資を組み合わせれば、木造でも年間手残り10%以上を狙うことは十分可能です。まずは候補エリアの土地値推移と金融機関の融資姿勢をリサーチし、数字で裏付けた投資判断を下してみてください。行動を早めるほど、市場の好機をつかむチャンスは広がります。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅着工統計 令和6年度版 – https://www.mlit.go.jp/
- 総務省 住宅・土地統計調査 2023年 – https://www.stat.go.jp/
- 東京都都市整備局 賃貸住宅市場レポート2024 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/
- 日本政策金融公庫 融資商品一覧 2025年度 – https://www.jfc.go.jp/
- 国税庁 路線価図・評価倍率表 2025年 – https://www.rosenka.nta.go.jp/