築10年ほどの中古マンションやアパートに興味はあるものの、「本当に黒字になるのか」「将来値下がりしないか」と悩む方は多いです。新築は高くて手が出ない、築古は修繕が怖い。そんなジレンマを解消する中間解として、築10年物件はバランスのよさが際立ちます。本記事では、築10年 キャッシュフローの仕組みを基礎から解説し、2025年12月時点で使える制度やデータを踏まえて、具体的に収益を安定させる方法を紹介します。読み終える頃には、物件選びから運用計画まで自信を持って判断できるようになります。
なぜ築10年物件が注目されるのか

まず押さえておきたいのは、築10年物件が新築よりも価格が落ち着き、かつ築古より修繕リスクが小さい点です。国土交通省の不動産価格指数によると、新築マンションは完成後5年で平均15%下落し、その後は緩やかなカーブを描きます。築10年時点では減価が一段落し、購入価格と家賃水準のバランスが整うため、キャッシュフローを計算しやすくなります。
さらに、建物設備はメーカー保証が切れるタイミングですが、重大な構造欠陥が顕在化していれば売主が既に修繕済みのことが多いです。つまり、未知のリスクが減り、修繕計画を立てやすいフェーズと言えます。一方で築15年以上の物件ほど大規模修繕費が膨らまないため、表面利回りと実質利回りのギャップが小さくなる点も魅力です。
また、総務省「住宅・土地統計調査2023」では、築10年前後の賃貸物件の平均空室率は全国9.4%と、築25年以上の13.7%より4ポイント低い結果が出ています。空室リスクが抑えられ、家賃収入のブレが小さい点が投資家に評価されています。
キャッシュフローの基本と計算方法

重要なのは、手取りを決めるキャッシュフローを正しく把握することです。キャッシュフローとは、家賃収入からローン返済や管理費、修繕費、税金を差し引いた純粋な現金増減を示します。築10年 キャッシュフローを試算する際は、過去の修繕履歴と今後10年の計画を点検し、想定外の支出を減らすことが第一歩です。
実際の試算例を見てみましょう。都内の築10年区分マンション(購入価格3,500万円、家賃14万円)を、自己資金700万円・残り2,800万円を金利1.8%・35年元利均等で借り入れるケースです。ローン返済は月89,000円、管理費修繕積立金は月18,000円、固定資産税は年75,000円(毎月換算6,250円)となります。ここに入居促進費として家賃の5%を見積もると、月々の支出総額は約119,250円。家賃14万円との差額である20,750円が毎月のキャッシュフローになります。
しかし、空室や設備更新を考慮し、年間キャッシュフローを80%で試算すると、実質年間約20万円が手元に残ります。数字自体は大きくありませんが、自己資金700万円に対する年間利回りは約2.8%で、元本返済分を含めた内部収益率は5%台に達します。このように計算することで、想定利回りの妥当性を客観的に判断できます。
築10年物件で収益を最大化するポイント
ポイントは、家賃下落を抑える立地戦略と、計画的な修繕です。家賃は築年数よりエリア需要に影響される側面が強く、駅徒歩10分以内や再開発地区では築10年でも減額幅が小さくなります。東京都住宅政策本部の2025年レポートでは、都心3区の築10~14年ワンルームの平均賃料は、築5年未満比でマイナス4%にとどまっています。
修繕面では、給湯器交換や共用部照明LED化など軽微な更新が主なため、予算を平準化しやすいです。購入前に管理組合の長期修繕計画を入手し、向こう10年の積立金水準が十分かを確認しましょう。もし不足が見込まれる場合は、価格交渉材料になります。
さらに、インターネット無料やスマートロック導入など小規模リノベーションを行うと、家賃を月2,000~4,000円上乗せできる例もあります。この追加分はそのままキャッシュフロー改善につながるため、ローン返済比率が高い初期段階ほど効果的です。
2025年度の制度活用とリスク対策
実は、2025年度も中古住宅の省エネ改修を支援する「既存住宅省エネ改修補助金」が継続しています。断熱性能を一定基準まで引き上げる工事費の1/3(上限120万円)が補助対象であり、投資家でも申請可能です。例えば二重サッシと高効率給湯器を導入し、補助金を受けつつ光熱費削減をPRすれば、長期入居を促進できます。
一方で、固定金利と変動金利の差は歴史的に縮小しています。日本銀行の2025年10月貸出金利データでは、投資用ローンの変動が2.1%、10年固定が2.4%と0.3%しか差がありません。将来の金利上昇リスクを考えると、固定化でキャッシュフローを安定させる選択肢が現実味を帯びています。
空室リスクに備えるため、入居者属性を多様化することも有効です。単身者向け物件でも、在宅勤務の普及に合わせてワークスペースを設ければ、法人契約やカップル層にも訴求できます。複数の賃貸仲介会社と連携し、募集チャネルを広げることで、空室期間を平均1か月短縮できた事例も報告されています。
Exit戦略を見据えた運用計画
基本的に不動産投資は長期保有が前提ですが、出口を意識して購入時に条件を整えておくと選択肢が増えます。築10年物件を15年後に売却する想定では、築25年での市場価格が現在価格の70%前後になるケースが多いです。国土交通省「中古住宅流通システムの現状2024」でも同様のトレンドが示されています。
そこで、ローン残高が売却価格を下回るタイミングを定期的にチェックし、売却益とキャッシュフローの合計でトータルリターンを最大化する計画を立てましょう。もし資産を組み替えるなら、複数戸をまとめ売りして融資枠を再度確保し、新たな物件へ移行する方法が有効です。
また、民法改正(2024年4月施行)で瑕疵担保責任が契約不適合責任へ変わり、買主保護が強化されました。将来の売却時にトラブルを防ぐため、日常の修繕履歴や家賃収支の帳票を整理し、透明性を高めておくと評価額アップにもつながります。
まとめ
築10年物件は価格と家賃のバランスが取れ、修繕リスクも読みやすいため、安定したキャッシュフローを目指す初心者に適した選択肢です。家賃下落が緩やかな立地を選び、計画的な修繕と制度活用で支出を抑えれば、元本返済も含めた総合利回り5%台を実現できます。そのうえで固定金利による金利リスク対策や、出口を意識した保有計画を組み込むことで、長期的に資産を増やす道筋が見えてきます。まずは気になる物件のキャッシュフローを細かく試算し、データに基づく一歩を踏み出してみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産価格指数2025年9月 https://www.mlit.go.jp/
- 総務省 住宅・土地統計調査2023 https://www.stat.go.jp/
- 日本銀行 貸出金利等統計2025年10月 https://www.boj.or.jp/
- 東京都住宅政策本部 都内賃貸住宅市場レポート2025 https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/
- 国土交通省 中古住宅流通システムの現状2024 https://www.mlit.go.jp/
- 法務省 民法改正概要解説2024 https://www.moj.go.jp/