一棟マンションを購入して賃貸経営を始めたいものの、「最初にいくら必要なのか」「自己資金はどれだけ用意すべきか」と不安に感じる方は多いはずです。特に区分マンションより金額が大きくなるため、資金計画を誤ると途中でキャッシュが回らなくなるおそれがあります。本記事では、一棟マンション 初期費用の内訳、融資のポイント、2025年度に使える優遇制度、そして費用を抑える実践テクニックまでを分かりやすく解説します。読み終える頃には、ご自身の資金計画を具体的な数字で描けるようになるでしょう。
一棟マンション投資の特徴を押さえる

まず押さえておきたいのは、区分(部屋単位)の投資と一棟投資では収益構造が大きく異なる点です。一棟物件は家賃収入が複数戸分あるため、空室が出てもキャッシュフローが急減しにくいという利点があります。また、建物と土地をまとめて所有するため、建物の減価償却費を計上しやすく、所得税や住民税の圧縮効果が期待できます。
一方で、購入価格が数千万円から数億円になるため、借入比率が高くなりがちです。金融機関の審査は事業性を重視するため、家賃相場や修繕計画が甘いと融資条件が厳しくなります。つまり、投資判断だけでなく事業計画書の精度が成功の鍵を握ります。
さらに、2025年12月時点では東京23区の新築マンション平均価格が7,580万円(不動産経済研究所)と高騰しており、中古を含めても表面利回りは低下傾向です。そのため、高値掴みを避けつつキャッシュフローを確保する戦略がより重要になっています。
初期費用の内訳を理解する

重要なのは、物件価格以外にもまとまった現金が必要になる点を正確に把握することです。一棟マンション 初期費用にはおおむね「諸費用」と呼ばれる7〜12%前後の現金が追加でかかります。
最も比率が大きいのは不動産取得税で、課税標準額の3〜4%が目安です。ただし新築後一定期間は評価額が低いため、実際の納税額は想像より抑えられるケースもあります。次に大きいのが登録免許税で、所有権移転や抵当権設定に対して0.4〜2.0%の税率がかかります。2025年度は住宅用新築物件の軽減税率が延長されていますが、賃貸専用マンションは対象外なので注意が必要です。
仲介手数料は「物件価格×3%+6万円+消費税」で上限が定められており、1億円の物件なら約341万円になります。さらに、銀行融資に伴う事務手数料や保証料が融資額の1〜2%前後、火災保険料が築年数と延床面積によって数十万円、そして司法書士報酬が数十万円かかります。
これらを合計すると、1億円の中古一棟マンションをフルローンで購入しても、現金で700万〜1,200万円ほどは必要です。自己資金を2割入れるなら、物件価格2,000万円+諸費用800万円前後、合計で約2,800万円を手元に準備するイメージになります。
融資と自己資金のベストバランス
ポイントは、借入比率を下げるほど月々の返済負担が軽くなり、キャッシュフローの安定度が上がるという単純な図式です。ただし、自己資金を入れすぎて手元資金が枯渇すると、突発的な修繕に対応できなくなるリスクもあります。
一般的に金融機関は、物件価格の80%までを融資枠の上限とするケースが増えています。2025年時点の地方銀行の貸出金利は変動で年1.5〜2.5%が中心で、都銀よりやや高めです。金利を0.5%下げるだけでも、1億円を25年返済した場合の総返済額は約800万円減る試算になります。ですから、金利交渉と同時に融資期間を延ばすか短くするかでシミュレーションを繰り返すことが不可欠です。
自己資金の目安として、物件価格の20〜30%を入れると元本が早く減り、追加購入時の与信余力も保ちやすくなります。逆にフルローンを狙う場合は、家賃収入に対する返済比率(DSCR)が1.2倍以上になるよう空室率や金利上昇を織り込んで計画しましょう。難しい計算は収支シミュレーションソフトを用いると便利ですが、最終的には「空室率20%」「金利3%」のストレスシナリオでも赤字にならないかを自分の目で確認することが大切です。
2025年度に使える優遇制度と税務ポイント
実は2025年度も投資用不動産向けに活用できる公的支援は限定的ですが、税制面を活用することで初期費用の実質負担を抑えられます。たとえば建物部分の減価償却費はRC造(鉄筋コンクリート)なら法定耐用年数47年です。中古で耐用年数を過ぎていても、簡便法により4年で償却できるケースがあり、初期数年の課税所得を大幅に圧縮できます。
また、消費税還付スキームは2025年12月時点でも合法ですが、建物価格の50%以上を課税売上に転換する必要があるため、駐車場やコインランドリーを組み合わせるなど事業計画の工夫が欠かせません。還付額が数百万円に達する場合もありますが、税務リスクを伴うため必ず税理士に確認しましょう。
加えて、新築物件なら固定資産税の新築軽減(3年間または5年間1/2)が受けられ、長期で見ればキャッシュフローを底上げできます。2025年度分は期限が2026年3月31日までの新築物件が対象と告示されています。こうした制度は毎年見直されるため、購入前に最新情報を自治体や専門家に確認する習慣をつけてください。
初期費用を抑える実践テクニック
まず、売買契約時期を工夫すると不動産取得税の納付タイミングを翌年度にずらし、当面の資金繰りに余裕を持たせることができます。取得税は購入から6〜9か月後に納付書が届くため、決済を年度末に近づけると納税期限が1年先になる場合があるのです。
次に、仲介手数料の値引き交渉は意外と効果的です。特に売主と同じ仲介会社(いわゆる両手取引)のときは、売主側からも手数料を受け取るため、買主手数料を10〜20%減額してもらえる余地があります。
火災保険は複数社を比較し、建物構造や築年数に応じた補償の最適化を行うことで10万円単位のコスト削減が期待できます。さらに、銀行の保証料を一括前払いではなく金利上乗せ型にすると、初期キャッシュアウトを抑えられます。ただしトータルコストは増えるため、保有期間と売却戦略を踏まえて決定しましょう。
最後に、建物検査(インスペクション)費用をケチらないことが長期的な節約につながります。数十万円かかっても、瑕疵を発見して販売価格を下げられれば結果として得をするケースが多いからです。目先の出費を恐れて手抜きをすると、後から多額の修繕費が発生し、キャッシュフローが崩壊するリスクが高まります。
まとめ
本記事では、一棟マンション 初期費用の内訳と金額感、融資と自己資金のバランス、2025年度に活用できる税制優遇、そして費用を抑える実践テクニックをお伝えしました。結論として、購入価格の7〜12%は現金で必要になると見込み、物件価格の20〜30%を自己資金に充てる計画が堅実と言えます。そのうえで、制度や税制を活用し、シミュレーションで最悪のシナリオに耐えられるかを検証することが成功への近道です。今のうちに資金計画と情報収集を進め、理想の物件との出会いに備えておきましょう。
参考文献・出典
- 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 国土交通省「不動産価格指数」 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省「固定資産税の軽減措置概要(2025年度)」 – https://www.soumu.go.jp
- 東京国税局「消費税還付の手引き」 – https://www.nta.go.jp
- 日本銀行「貸出金利推移(住宅・不動産向け)」 – https://www.boj.or.jp