不動産の税金

新築 相続対策で資産を守る方法

不動産を活用した相続対策と聞くと、難しそうな税法や複雑な手続きが思い浮かびます。しかし、実は「新築」をうまく組み合わせることで、評価額の圧縮と安定した収益確保を同時に狙える手法があります。本記事では、2025年12月時点で有効な税制を踏まえつつ、新築物件による相続対策の考え方と実践のステップを詳しく解説します。読み終える頃には、自分に合ったプランを描くための基礎知識が身につき、専門家との相談もスムーズに進められるはずです。 

相続税評価と新築の関係

相続税評価と新築の関係のイメージ

まず押さえておきたいのは、土地と建物の評価方法が異なるという基本です。国税庁の評価通達によると、土地は路線価方式で時価の8割程度、建物は固定資産税評価額でおおむね建築費の5~7割で評価されます。 

新築を建てると、建築費が高くても固定資産税評価額は抑えられる傾向があります。つまり同じ資金で金融資産を持つより、建物に変換するほうが評価額を圧縮しやすいわけです。また、賃貸用として新築すれば、貸家建付地(かしやたてつけち)評価となり、土地評価も20%前後下げられます。 

一方で、建築費の全額がそのまま現金流出になるため、資金計画が甘いと逆効果になりかねません。重要なのは、将来の賃料収入と相続税の軽減額を比較し、キャッシュフローが黒字になるかを検証することです。金融機関の長期融資を活用すれば、初期負担を抑えて評価圧縮分を最大化できるケースも少なくありません。 

賃貸用新築物件がもたらす節税効果

賃貸用新築物件がもたらす節税効果のイメージ

ポイントは、自宅用より賃貸用新築のほうが税務上のメリットが大きいという事実です。貸家・貸家建付地評価が適用されることで、建物は30%、土地は20%程度の評価減が見込めます。たとえば土地1億円、建物7,000万円の計画の場合、評価額ベースではおよそ7,500万円前後まで下がる計算です。 

さらに賃料収入が発生すると、ローン返済や経費控除後の所得は家族への贈与や二次相続の原資に使えます。国土交通省の2025年度入居率調査によると、首都圏の新築ファミリータイプは平均入居率95%超を維持しており、空室リスクも比較的低い水準です。 

ただし、家賃相場が下がる地域で無理に新築すると、将来の収支が赤字になる恐れがあります。物件規模と間取り、立地、需要動向を分析し、利回り6%前後を目安にシミュレーションを行うと安全域が見えやすくなります。専門家は、賃料下落率1%、金利上昇1%を織り込んだ厳しめの条件での検証を勧めています。 

2025年度も使える主要な税制優遇

実は、相続対策で活用できる制度は多岐にわたります。なかでも2025年度も継続が決まっているのが、小規模宅地等の特例と住宅取得資金贈与の非課税制度です。前者は賃貸用地なら最大200㎡まで50%評価減、後者は直系卑属への贈与で最大1,000万円まで非課税枠が残っています。 

また、登録免許税の軽減措置や固定資産税の新築軽減(3年間半額)も健在です。これらを組み合わせることで、新築時のコストを抑えつつ長期的なキャッシュフローを改善できます。 

一方で、住宅ローン控除は自宅用が対象で賃貸には適用されません。制度の境界線を誤解すると、想定外の税負担が生じるため注意が必要です。最新の税率や適用要件は国税庁ウェブサイトで確認し、専門家と二重チェックすると安心でしょう。 

建築計画で失敗しないための視点

まず、家族構成と相続人の人数を整理し、誰にどの資産を承継させるかをイメージすることが大切です。たとえば、長男に新築賃貸を、次男に現金を、といった配分を早い段階で共有しておくと、将来のトラブルを防げます。 

次に、建築会社の選定では「賃貸経営20年」の収支計画書を提出させ、想定空室率や修繕費の根拠を確認しましょう。国交省の長期修繕計画ガイドラインでは、外壁・屋根は12〜15年ごとに改修が推奨されています。これを見込んでいない試算は楽観的すぎると判断できます。 

さらに、融資条件も物件のシミュレーションとセットで検討します。2025年12月時点で地方銀行のアパートローン金利は1.8〜2.5%が主流ですが、団体信用生命保険の保障範囲や繰り上げ返済手数料の差が総コストに影響します。複数行を比較し、金利0.3%差で30年返済なら総支払額が約1,000万円変わるケースもあります。 

長期保有と出口戦略をどう描くか

重要なのは、新築で相続税を下げた後のシナリオまで設計することです。賃貸経営は20年後以降に大規模修繕が集中し、収益性が落ちるタイミングが訪れます。その時点で売却か建替かを家族と共有しておけば、判断が遅れて損失を膨らませるリスクを避けられます。 

近年、REIT(リート)や法人への一括売却ニーズが高まり、築20年前後の木造アパートでも立地が良ければ市場価値を維持できます。国土交通省の不動産価格指数では、都心三区の中古マンション価格が10年で約30%上昇しており、資産価値を押し上げています。つまり物件の出口価値は立地次第で大きく変動するのです。 

一方で、相続人が自ら賃貸経営を継続する場合は、資産管理法人の設立も視野に入ります。法人化により所得を分散でき、次の世代への贈与や退職金の形で資産を移転しやすくなるからです。ただし、設立費用や維持コストが見合うかをシミュレーションしてから判断しましょう。 

まとめ

新築物件を活用した相続対策は、評価額の圧縮と安定収益の獲得を同時にかなえる有力な選択肢です。土地・建物の評価の仕組みを理解し、賃貸用新築で貸家評価を適用すれば、相続税を大幅に軽減できます。さらに、2025年度も有効な小規模宅地等の特例や新築軽減税制を組み合わせれば、初期コストは抑えつつ長期的なメリットを確保できるでしょう。大切なのは、資金計画と家族間の合意を早めに固め、出口戦略まで含めたシミュレーションを行うことです。この記事を参考に、専門家と連携して最適なプランを描き、将来の安心と資産の最大化を実現してください。 

参考文献・出典

  • 国税庁 – https://www.nta.go.jp/
  • 国土交通省 住宅市場動向調査 – https://www.mlit.go.jp/
  • 総務省 統計局 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp/
  • 全国銀行協会 金利推移データ – https://www.zenginkyo.or.jp/
  • 不動産研究所 不動産投資指標レポート – https://www.ires.or.jp/

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