築十年前後のマンションやアパートに興味はあるものの、「本当に収益が出るのか」と不安を抱える人は多いものです。新築ほど高値づかみは避けたい、しかし築古の大規模修繕リスクも怖い。そんな悩みに応えるため、本記事では築10年物件のメリットと注意点を最新データで整理します。読むことで、市場価格、家賃水準、修繕費、税制まで一気に把握でき、購入判断の精度を高められるでしょう。
築10年物件の市場価格動向

まず押さえておきたいのは、築10年時点での価格が「新築プレミアム」の剥落をほぼ終え、相場が安定ゾーンに入るという事実です。国土交通省の2025年版「不動産価格指数」によると、首都圏マンションは新築から築10年で平均13%下落し、その後5年間は年1%未満の緩やかな調整にとどまります。
ここで重要なのは、「値下がり余地が小さい=出口リスクが限定的」という点です。実際に中古流通サイトの成約事例を分析すると、築8〜12年の同型物件では価格変動が狭く、投資家同士の売買比率が高まっています。つまり、市場参加者が安定資産とみなしている裏付けと言えるでしょう。
一方で地方都市では下落幅が20%を超える地域もあります。人口動態に連動するため、購入前に将来推計人口と雇用動向を照合する作業が欠かせません。価格がこなれているからといって飛びつくのではなく、エリア選定こそ収益の土台になります。
家賃水準と空室率のリアル

ポイントは、築10年の家賃が「新築比95%前後」で踏みとどまるエリアが多いことです。日本不動産研究所の住宅賃料指数(2025年7月公表)では、東京23区のファミリー向けで97%、単身向けで94%という結果が出ています。
家賃が大きく落ち込まない理由は、設備水準がまだ陳腐化していないためです。オートロックや宅配ボックスは既に標準化しており、入居者が「築浅」と認識しやすい点が空室抑制に寄与します。ただし、バス・トイレ別や高速インターネット無料など、競合物件が導入済みの設備を後付けするコストも視野に入れましょう。
空室率については、全国平均の5.9%(総務省住宅・土地統計調査2025年速報値)に対し、築10年帯は4.2%と低位にあります。裏を返せば、入居者の定着期間が延びる分だけ原状回復費が圧縮でき、キャッシュフローの安定性が高まります。空室リスクをさらに下げるには、管理会社のリーシング力や再募集家賃の設定にも目を配る必要があります。
修繕費と減価償却のメリット
実は、築10年こそ修繕計画を読み解くタイミングです。分譲マンションなら長期修繕計画の一次改定期と重なり、積立金水準が適正かどうかを確認できます。国交省の「マンション総合調査」(2025年度)によれば、築11〜15年で大規模修繕を実施する管理組合は全体の63%にのぼります。
一方、投資家視点で魅力的なのが減価償却です。木造アパートなら残存耐用年数が12年、鉄筋コンクリートなら38年ですが、築10年物件では償却費を多く計上できる余地が残ります。家賃は下がりにくく、税引き後キャッシュフローはむしろ向上しやすい局面です。
修繕費の見積もりには、屋上防水、給水管、更生工事など将来必須となる項目を具体的に洗い出すことが欠かせません。見逃しがちなエレベーター更新費用は、築20年以降に一気に発生しやすいため、購入時の積立状況が十分かどうかを数字で確認してください。
融資と税制優遇の最新事情
基本的に、築10年物件でも金融機関の評価は高く、金利は新築向けローンとの差が0.2〜0.4%程度に収まります。日本政策金融公庫の「投資用不動産融資調査」(2025年)でも、耐用年数の残りが20年以上あれば返済期間を30年確保できる事例が増加しています。
税制面では、2025年度の住宅ローン控除は自己居住用のみ対象ですが、投資家にも関係するのが固定資産税の軽減措置です。築3年以上の賃貸住宅であっても、省エネ改修を行い一定基準を満たすと翌年度の固定資産税が1/3減額される仕組みが存続しています(適用期限:2026年3月31日)。省エネ窓や高効率給湯器を導入することで、収益向上と節税を同時に実現できます。
さらに、金融機関は省エネ性能向上工事を行うオーナーに対し、金利を0.1〜0.3%優遇する「グリーンリフォームローン」を展開中です(2025年12月時点で複数行が継続)。これらの制度を組み合わせれば、実質的な投下資金を抑えながらリニューアル効果を出せるでしょう。
収益性を高める運営テクニック
重要なのは、購入後の運営で「築10年 収益性」を底上げする工夫を継続する姿勢です。具体的には、リフォームの優先順位を「第一印象を向上させる共用部」「入居者満足に直結する水回り」「最後に内装」と段階的に組むことで、大きな費用対効果を得られます。
また、家賃を守るためには差別化戦略が不可欠です。たとえばWi-Fi無料化は月額500円のコストで家賃を2,000円維持できるケースが多く、結果として年間収入はプラスに転じます。ペット飼育可への変更やコンセント増設も比較的低コストで収益改善に寄与します。
さらに入居者対応のスピードを高めるため、24時間コールセンターやスマートロック導入を検討すると空室対策にも直結します。大切なのは、調達金利より高い投資利回りを維持できる施策に絞って資金を投入することです。数字で検証しながら運営を続ければ、築年数が進んでも収益は伸ばせます。
まとめ
築10年前後の物件は価格が安定し、家賃下落も限定的という特性があります。適切なエリア選定と修繕計画の見極め、そして省エネ改修を絡めた融資戦略を活用すれば、「築10年 収益性」は新築以上に魅力的となります。まずは候補物件の価格推移と家賃実績を確認し、将来想定キャッシュフローを保守的に試算してみてください。行動に移すことで、安定した家賃収入と節税効果を両立させる第一歩が踏み出せるはずです。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp/totikensangyo
- 日本不動産研究所 住宅賃料指数 – https://www.jrei.jp
- 総務省 住宅・土地統計調査速報(2025年) – https://www.stat.go.jp
- 国土交通省 マンション総合調査(2025年度) – https://www.mlit.go.jp
- 日本政策金融公庫 投資用不動産融資調査(2025年) – https://www.jfc.go.jp