鉄筋コンクリートと鉄骨を組み合わせたSRC造は、頑丈で長寿命といわれます。しかし「本当に安全なのか」「修繕費は高くないのか」と不安を抱く人も多いでしょう。本記事では、SRC造 リスクの正体とその備え方を具体例とデータで解説します。読むことで購入前にチェックすべきポイントが整理でき、投資判断をより確信をもって下せるようになります。
SRC造の基本構造と耐久メリット

まず押さえておきたいのは、SRC造が鉄骨造(S造)と鉄筋コンクリート造(RC造)の長所を併せ持つ構造だという事実です。鉄骨の柱・梁を芯にして周囲をコンクリートで巻く形のため、曲げに強く火災にも耐えやすい特徴があります。
国土交通省の「建築物ストック統計」によると、1980年以降に建てられたSRC造マンションの平均寿命は65年以上と推計されています。つまり適切に管理すれば、表面の塗装や配管を交換しながら長期保有が可能です。また、遮音性が高く賃貸需要を維持しやすい点も投資家に好まれます。
一方で構造が複雑な分だけ施工コストが高く、同じ延べ床面積でもRC造より販売価格が1割ほど上がる傾向にあります。購入時には利回りが数字以上に圧縮されていないかを確認しましょう。高耐久=高収益とは限らない点が投資判断の最初の分岐点になります。
知っておくべき代表的なリスク

重要なのは、頑丈さの裏に潜む維持コストです。SRC造 リスクとして最初に挙げられるのが大規模修繕費の高さになります。柱の中に鉄骨が入っているため、ひび割れ補修や鉄筋のサビ止めには専用部材と熟練工が必要です。
東京都住宅政策本部の2024年度調査では、築30年時点で予想される大規模修繕費がRC造より平均で約15%高い結果が示されています。つまり購入価格だけでなく、将来の修繕積立金不足も視野に入れる必要があります。
次に空室リスクです。建物自体は長寿命でも、設備が旧式のままでは入居者ニーズに応えられません。高い断熱性能やIoT設備への更新を怠ると、築浅のRC造に競り負けるケースがあります。耐震基準も2000年改正以降で強化されているため、旧耐震のSRC造は金融機関の評価が下がる点も注意しましょう。
長期修繕計画を活用したコスト平準化
ポイントは、リスクを先送りせず毎月の積立で平準化することにあります。購入時に管理組合へ過去の修繕履歴と積立金状況を確認し、将来の負担が急激に上がらないかを見極めましょう。
例えば外壁補修と屋上防水を同時に実施する場合、国土交通省の「マンション大規模修繕モデルケース」では30戸規模で1戸当たり約120万円の負担と試算されています。もし積立金が不足していれば、一時金徴収や借入が必要となりキャッシュフローを圧迫します。
修繕周期を前倒しする「予防保全」も効果的です。コンクリートの中性化が進む前に被膜塗装を施せば、鉄骨の錆進行を抑え補修面積を縮小できます。小規模工事を積み重ねるほうが、結果として総コストが下がるケースも多いのです。
2025年度に活用可能な補助・減税
実は、SRC造でも一定の省エネ化や耐震補強を行えば国や自治体の支援を受けられます。2025年度に継続が決定している「住宅省エネ改修特例」は、窓や断熱材の性能向上工事に対して最大250万円の所得控除が認められます。これは築年数を問わず利用できるため、古いSRC造のバリューアップに適しています。
また、長期優良住宅化リフォーム推進事業(2025年度版)は、耐震性・省エネ性・劣化対策を同時に満たす改修工事に対し最大300万円の補助金が交付されます。補助率は3分の1以内ですが、工事費を効率的に圧縮できる点は魅力です。申請にはインスペクション報告書と改修計画書が必須となるため、早めに専門家と連携しましょう。
税制面では、2025年度の固定資産税軽減措置が引き続き適用されます。耐震改修工事を完了した翌年度の固定資産税が1年間半額になる制度で、工事費が50万円を超える場合に対象となります。適用期限は2026年3月31日工事完了分までと定められているので、スケジュール管理が重要です。
リスクを最小化する物件選びの視点
まず資産価値を左右するのは立地ですが、SRC造特有のポイントとして築年数と工事履歴を同時に見る必要があります。築40年でも耐震補強が完了し、設備更新が計画的に進んでいればRC造の築20年物件より評価が高いケースも珍しくありません。
銀行融資を受ける際は、建物の残存年数が融資期間と整合するかが審査のカギになります。SRC造は耐用年数が47年とされるため、築30年の場合は最長17年の融資しか組めません。しかし大手行では残存年数プラス15年まで対応する商品も登場しており、交渉次第でキャッシュフローを改善できます。
管理組合の運営状況も見逃せません。総会議事録を確認し、修繕積立金の値上げや大規模修繕の延期が繰り返されていないかをチェックしましょう。そうした情報は空室率や家賃下落よりも早くリスクサインを示します。購入後に主体的に関わる覚悟があれば、逆に割安な物件をお得に取得できる可能性もあります。
まとめ
本記事ではSRC造 リスクの内容と対策を、構造特性・修繕費・制度活用という三つの視点で整理しました。頑丈さは大きな武器ですが、修繕コストと旧耐震リスクを理解し計画的に備えることが成功への近道です。物件選びでは立地と管理体制に加え、補助金や税制を適切に組み合わせることで長期のキャッシュフローが安定します。今日得た知識を参考に、次の物件見学では修繕履歴や積立金にも目を向け、投資成果を一歩前進させてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 建築物ストック統計 – https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/
- 東京都住宅政策本部 2024年度マンション修繕費調査 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/
- 国土交通省 マンション大規模修繕モデルケース – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/
- 住宅省エネ改修特例(2025年度) – https://www.enerugi-portal.go.jp/
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業 2025年度版 – https://www.kenchiku-tech.net/