鉄骨鉄筋コンクリート造、いわゆるSRC造は「強い建物」というイメージが定着しています。しかし、構造が頑丈だからといって、すべての投資家に適しているとは限りません。購入価格や維持コスト、将来のリセールバリューなど、検討すべき要素は多岐にわたります。本記事ではSRC造 メリット・デメリットを整理し、他構造との違いや2025年度の最新支援策までまとめます。読み終わる頃には、あなた自身の投資戦略にSRC造をどう位置づけるかが明確になるはずです。
SRC造とは何か

まず押さえておきたいのは、SRC造の成り立ちと基本性能です。SRC造は鉄骨(Steel)と鉄筋コンクリート(Reinforced Concrete)を一体化させた構造で、鉄骨が引張力を、コンクリートが圧縮力をそれぞれ受け持ちます。国土交通省の資料でも、同規模のRC造より耐震性が約1.2倍高いと示されており、超高層マンションに多用される理由はここにあります。
さらに、鉄骨を内部骨格に使うことで柱や梁を細くできるため、同じ専有面積でも室内の有効空間が広がる点が魅力です。住戸プランの自由度が高まり、ファミリー層向けの大型間取りやワークスペース付きの住戸など、幅広い賃貸ニーズへ対応しやすくなります。
一方で、工期はRC造より長く、資材単価も高いため建築費はおおむね10〜15%上昇します。つまり、初期投資の大きさがSRC造の恩恵を享受できるかどうかを左右します。この点を理解しておくことで、後述するメリットとデメリットのバランスを判断しやすくなるでしょう。
SRC造のメリットが生む投資価値

重要なのは、SRC造特有の強みがキャッシュフローにどう反映されるかという視点です。第一に、耐震性と耐火性の高さは入居者の安心感につながり、空室期間の短縮効果が期待できます。実際、東京都都市整備局の家賃動向調査では、築10年未満のSRC造は同立地のRC造より平均賃料が約4%高いという結果が出ています。
次に、長寿命設計による減価償却メリットがあります。税法上の法定耐用年数はRC造と同じ47年ですが、実際の物理的寿命は60年以上とされ、修繕計画次第で保有期間を伸ばせます。長期保有を前提にすれば、大規模修繕積立金の負担を平準化しつつ、減価償却を活用して課税所得を抑えられる点は見逃せません。
金融機関の評価も安定しています。構造躯体の強度から担保価値が下がりにくく、2025年現在でも地方銀行の多くがSRC造物件に対し最長35年の長期融資を提供しています。低金利が継続する局面では、金利上昇リスクをヘッジする長期固定ローンを組みやすいことが収益の安定化につながります。
デメリットとリスク管理の考え方
一方で、投資家が無視できないのが高い建築コストと更新費用です。SRC造は梁や柱に鉄骨を併用するため、資材価格の変動を受けやすく、建築費の見積もりがぶれやすい傾向にあります。資源価格が高止まりする2025年時点では、当初想定よりコストが膨らむケースも珍しくありません。
また、建物が重い分だけ基礎工事が大規模になり、地盤改良費用も上乗せされる場合があります。特に軟弱地盤の湾岸エリアでは、杭長の延長や高品質なセメント改良が必要となるため、想定利回りを1%程度下方修正しておくと安全です。
修繕フェーズでは、鉄骨とコンクリートの接合部に発生する錆びやひび割れを的確に診断する専門業者が欠かせません。大規模修繕費はRC造より1割ほど高くなるといわれ、長期修繕計画の綿密さが問われます。資金繰りを安定させるためには、家賃収入の5〜7%を毎月修繕積立に回す、あるいは修繕積立一括借入れ制度を活用するなど、複数の手当てを併用すると安心です。
RC造・S造との比較で見える戦略
実は、SRC造の真価はRC造やS造と比較することでより鮮明になります。RC造は施工コストが抑えられ、耐火性能も高いものの、柱・梁が太くなるため専有面積が目減りしやすい欠点があります。S造は軽量で工期が短く、初期費用を抑えやすい反面、断熱・遮音性能がやや劣る点が賃料に影響します。
国土交通省の「建築着工統計」によれば、2024年の全国マンション着工件数でSRC造は約12%を占めています。かつて20%を超えていた比率が低下傾向にあるということは、供給過多による賃料下落リスクが小さいと読み替えられます。つまり、希少性が高まる方向にあるため、エリア選定が的確であれば高い資産価値を維持しやすいのです。
投資戦略としては、都心ターミナル徒歩10分圏内など、賃料水準が高いエリアでSRC造を選び、郊外ではコスト効率の良いRC造やS造を検討する形が合理的です。ポートフォリオ全体でリスクとリターンを調整し、出口戦略を視野に入れた構造の組み合わせが、2025年以降の不動産市況では鍵になります。
2025年度の補助制度と活用ポイント
まず押さえておきたいのは、省エネ性能を高めたSRC造が利用できる国の支援策です。2025年度も継続する「長期優良住宅化リフォーム推進事業」は、外断熱や高性能サッシの導入に対し最大250万円の補助が受けられます。補助対象はリフォーム工事ですが、新築時に将来の改修を見据えた設計を行えば、売却時に制度を活用したバリューアップが可能です。
さらに、ZEH-M(ゼッチ・マンション)支援事業は2025年度予算で200億円が計上され、一次エネルギー消費量を20%削減する共同住宅に対し、戸当たり最大70万円の補助が受けられます。高断熱材を多用するSRC造は条件を満たしやすく、建設費の一部を補填できる点が利回り改善に直結します。
自治体独自の助成にも注目です。東京都は「高層建築物エネルギー性能向上支援」を2025年度も継続し、BELS評価★3以上の建物に対し延床面積1㎡あたり最大1万円を補助します。高層比率の高いSRC造は該当面積が大きくなるため、総額で数千万円規模の支援を受ける事例も報告されています。制度は年度ごとに細部が変更されるため、着工前に最新要綱を必ず確認してください。
まとめ
ここまでSRC造 メリット・デメリットを中心に解説してきました。耐震性と長寿命が生む高い賃料収益、金融機関からの安定評価、そして省エネ補助を活用した価値向上が大きな魅力です。一方で建築費や修繕費は嵩むため、資金計画と長期修繕戦略が成功の分かれ目になります。構造の特徴を理解し、エリアごとに投資目的を明確化することで、SRC造はポートフォリオの核となり得るでしょう。まずはご自身の資金繰りと出口戦略を照らし合わせ、最適な構造選択を進めてみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 建築着工統計 2025年版 – https://www.mlit.go.jp
- 東京都都市整備局 民間住宅賃料動向調査2024 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp
- 総務省統計局 住宅・土地統計調査2023 – https://www.stat.go.jp
- 日本建築センター SRC構造設計指針 – https://www.bcj.or.jp
- 不動産適正取引推進機構 減価償却の実務Q&A 2025 – https://www.retio.or.jp