不動産融資

RC造 家賃設定で失敗しないための実践ガイド

鉄筋コンクリート造(RC造)のマンションは耐久性が高く、資産価値が落ちにくい一方で、建築コストやランニングコストが木造より大きくなりがちです。そのため「どこまで家賃を上げれば利益が出るのか」「高すぎて空室が増えないか」と悩むオーナーは少なくありません。本記事ではRC造 家賃設定の基本から市場調査、長期修繕とのバランスまでを丁寧に解説します。読み終えるころには、自分の物件に合った適正家賃を見極める視点と、将来を見据えた収支計画の立て方が身につくはずです。

RC造が持つ強みと家賃に反映すべきポイント

RC造が持つ強みと家賃に反映すべきポイントのイメージ

まず押さえておきたいのは、RC造ならではの物理的な強みが家賃にどう影響するかという点です。RC造は耐震性と遮音性が高く、火災保険料も比較的低い傾向にあります。国土交通省「住宅着工統計」(2025年8月版)では、都心部のRC造ファミリータイプ平均賃料が木造より約18%高いと示されています。この差は単なる建築費の回収だけではなく、安心感と居住性に対する入居者の評価を映した数字です。

しかし、単純に「RC造だから家賃を高く設定すれば良い」という発想は危険です。周辺エリアの需要が弱ければ、スペックの高さは魅力として伝わりません。つまり、構造の優位性を家賃に上乗せするには、エリアの所得水準やターゲット層のライフスタイルと合致しているかを確認する必要があります。また、築年数が経つほど設備面の見劣りがネックになるため、室内リノベーションや共用部のアップグレードとセットで考えると空室リスクを抑えやすくなります。

市場調査で外せない三つの視点

市場調査で外せない三つの視点のイメージ

重要なのは、家賃設定を決める際に「競合物件」「需要トレンド」「地域平均所得」という三つの視点を同時に見ることです。まず競合物件は、間取りと築年をそろえて最低十件ほど比較し、実際に内見してグレード感を体感することが欠かせません。次に需要トレンドは、総務省「住宅・土地統計調査」(2023年速報)を参考に、単身世帯が増えている駅か、ファミリー層が減っているエリアかを把握します。

さらに、地域平均所得を国税庁「民間給与実態統計調査」の自治体別データで確認し、家賃が世帯年収の25%を超えないラインを目安にするのが現実的です。例えば世帯年収600万円のエリアなら、月額家賃12万円が上限となります。この三つのデータを突き合わせることで、RC造のプレミアム分をどれだけ乗せられるかが明確になります。また、データは年に一度は更新し、周辺の新築供給状況も併せて追うと、需給ギャップの変化を見逃しません。

長期修繕計画と家賃上乗せのバランス

実はRC造の強みが長期的な家賃収入を安定させる一方で、定期的な大規模修繕費がキャッシュフローを圧迫するという側面があります。日本建築学会の指針では、外壁補修や屋上防水は12〜15年周期、配管更新は25〜30年周期が推奨されています。これらを前もって資金計画に織り込むことで、築15年以降も家賃を下げずに済む可能性が高まります。

ポイントは、毎月の家賃に修繕積立相当額を少しずつ上乗せし、入居者の満足度を損なわない範囲で内部留保を厚くすることです。例えば総戸数20戸、外壁改修費1200万円を15年後に予定している場合、月々の積立目標は1200万円 ÷ 180か月 ÷ 20戸 ≒ 3333円です。この金額を家賃に反映させるか、その他費用で回収するかをシミュレーションし、想定利回りと照らし合わせながら決定します。家賃を3000円引き上げる場合、エリアの競合と比較して割高感がないかを必ず確認しましょう。

借り手が感じる“お得感”を演出する方法

一方で、家賃の上限を高めに設定するには、借り手にとって分かりやすい付加価値が欠かせません。経済産業省の「ZEB Ready基準」達成を示す省エネ性能表示や、Wi-Fi無料などのインフラ完備は、月額5000円の家賃上昇に見合うと評価されるケースが増えています。特に2025年度から始まった「住宅エネルギー性能表示制度」は新築だけでなく既存住宅のラベル取得も可能で、物件広告の差別化に有効です。

また、時代の変化に合わせて共用部にコワーキングスペースや宅配ボックスを設置すると、若年層だけでなく在宅勤務が増えたファミリー層にも支持されます。つまり、構造的な優位性に加えてライフスタイルを支えるサービスを提供することで、多少高い家賃でも「この物件なら納得」と感じてもらいやすくなります。ここで得た家賃プレミアムは、先述の修繕積立にも充てられるため、長期的にみて合理的な戦略と言えます。

融資条件とキャッシュフローが左右する最終家賃

基本的に、不動産投資の成否はキャッシュフローが黒字で持続するかにかかっています。金融機関はRC造を資産性が高いと評価し、最長35年までの長期融資に応じるケースが多いです。2025年11月時点の主要地方銀行平均金利は固定1.4%前後で、木造より0.1〜0.2ポイント低めに設定される傾向があります。この低金利を生かして月々の返済額を抑えれば、家賃を安く設定しても収支が回るため、競合より空室リスクを下げる選択肢が生まれます。

ただし、金利上昇局面では返済額も増えるため、安全マージンとして想定金利を2%程度上乗せしたシミュレーションを作成しておくと安心です。家賃を決める際には「返済比率は家賃収入の50%以内」「修繕積立は10%台を目標」など、明確な指標を設定するとブレが少なくなります。結論として、貸し出し条件と将来金利を織り込んだキャッシュフロー表が、最終的な家賃設定の下支えになるのです。

まとめ

RC造 家賃設定では、構造の優位性を過信せず、競合物件・需要トレンド・地域所得という三つのデータを軸に市場を読み解く姿勢が欠かせません。さらに、長期修繕費を前倒しで積み立てる工夫や、省エネ性能表示など付加価値戦略を組み合わせることで、空室リスクを抑えながら家賃プレミアムを確保できます。読者の皆さんも、本記事で紹介したシミュレーション手順を実践し、自分の物件に適した家賃を数字で説明できるよう準備を進めてみてください。今日から実行に移せば、将来の安定収益に一歩近づくはずです。

参考文献・出典

  • 国土交通省 住宅着工統計 2025年8月版 – https://www.mlit.go.jp
  • 総務省 住宅・土地統計調査 2023年速報 – https://www.stat.go.jp
  • 国税庁 民間給与実態統計調査 2024年版 – https://www.nta.go.jp
  • 日本建築学会 建築物の維持保全指針 2025年版 – https://www.aij.or.jp
  • 経済産業省 住宅エネルギー性能表示制度 2025年度概要 – https://www.meti.go.jp

関連記事

TOP