不動産の税金

築30年以上 収益性を高める実践ガイド

築年数が30年を超えた中古物件は「古いから儲からないのでは」と敬遠されがちです。しかし実際には、取得価格の低さや税務上のメリットを生かして高い利回りを実現する投資家も多くいます。本記事では、築30年以上の物件で収益性を高めるために必要な視点と具体的な手順を解説します。読み終えたとき、あなたは古い建物を魅力的な投資機会へ変える方法をイメージできるはずです。

市場動向から見る築古物件のチャンス

市場動向から見る築古物件のチャンスのイメージ

まず押さえておきたいのは、築古物件の流通量が年々増えている点です。国土交通省の不動産価格指数(2025年9月公表)によると、築30年以上の区分マンションの取引件数は2020年比で約18%増えました。また、総務省の住宅・土地統計調査2023では、空き家の半数近くが築30年以上となっています。つまり、供給が増えているため仕入れ価格を抑えやすい環境が続いているのです。

この傾向は都市部でも例外ではありません。東京都23区の中古マンション成約価格は全体で上昇していますが、築30年以上に限ると2024年からほぼ横ばいです。一方、賃料相場はインフレや人流回復の影響で2年連続で上昇しました。価格が伸び悩むのに賃料が上がる構図は、利回り向上の好機といえます。

また、人口減少が進む地方でも駅近や商業集積地に限れば入居需要は底堅いままです。地方主要都市で築30年以上のRC造マンションを一棟購入し、軽微な改装後に賃料を据え置いても表面利回り10%超となる事例は珍しくありません。重要なのは、立地ごとの需要を丁寧に見極める姿勢です。

古い物件でも収益を上げる賃貸設計

古い物件でも収益を上げる賃貸設計のイメージ

ポイントはターゲットと設備水準を明確にすることです。築古物件は間取りが古式ゆかしい場合が多く、そのままでは競合に負けます。そこで20〜30代の単身者向けにキッチンと水回りを刷新し、インターネット無料やスマートロックを導入すると訴求力が一気に高まります。

例えば、築35年のワンルームを想定しましょう。家賃6万円、空室率15%の状態から、15万円のミニキッチンと8万円の洗面化粧台を導入し、壁紙を白基調に変更しました。工事費計40万円で平均募集賃料を6.6万円へ引き上げ、空室率も8%まで改善。年収入は約12万円増え、投資額は3.3年で回収可能です。

さらに、共同住宅の場合は共用部の照明をLED化し、清掃頻度を上げるだけでも印象は大きく変わります。管理会社のレポートを通じて入居者アンケートを取り、要望の高い設備だけに絞って投資すれば費用対効果は高まります。入居者満足度が上がれば長期入居につながり、収益が安定します。

リノベーション費用と回収期間を読む

実は、築30年以上の収益性を左右する最大の要素はリノベーション費用のコントロールです。国交省「中古住宅リフォーム実態調査」(2024年版)では、投資用区分マンションの平均改修費は物件価格の約18%と報告されています。ただし、設備更新だけなら平均8%にとどまり、多くの投資家はフルスケルトン改修を避けてコストを抑えています。

回収期間を把握するうえでは、賃料増加分だけでなく税効果も加味しましょう。建物本体の法定耐用年数を過ぎたRC造は4年定額法で減価償却できます。たとえば1,000万円で取得した場合、毎年250万円を経費算入できるため、実効税率30%の投資家なら年間75万円の税負担が減少します。この税効果を賃料増加と合わせて考えれば、リノベーション費用の回収はさらに早まります。

一方で、設備交換を怠ると想定外の修繕が発生しやすくなります。給排水管の漏水は1回で100万円規模の出費になりかねません。したがって、長期修繕計画を立て、毎年のキャッシュフローから修繕準備金を積み立てる仕組みが不可欠です。

融資と税制優遇を活用する

まず、金融機関選びで注意すべきは残存耐用年数の取り扱いです。築30年以上のRC造は法定耐用年数47年を超えるケースが多く、融資期間が短くなりがちです。しかし都市銀行やノンバンクの一部は、耐用年数オーバーでも20年近い融資を行っています。面談では、物件のキャッシュフロー表と修繕計画を示して返済能力を証明しましょう。

2025年度の税制では、投資用住宅も含めた「既存住宅の耐震・省エネ改修促進税制」が延長されています。耐震基準適合証明を取得し、一定の省エネ工事を行えば、固定資産税が3年間1/2に軽減される仕組みです。適用には工事完了後3か月以内の申請が必要なので、施工会社と事前にスケジュールを調整してください。

さらに、法人所有なら損益通算の柔軟性が高まります。個人の場合、赤字が給与所得と通算できても3年繰越が上限ですが、法人では9年間繰越可能です。将来の増資や追加取得を視野に入れるなら、法人設立と並行して税理士にシミュレーションを依頼するとよいでしょう。

出口戦略を描く

重要なのは、購入時点で売却シナリオを描いておくことです。築古物件は時間とともに建物価値が下がり続けるため、家賃と資産価値が最もバランスするタイミングを見計らう必要があります。日本不動産研究所の「不動産投資家調査」(2025年春)では、築40年超の区分マンションでも賃料利回り7%前後で取引されています。

利回りが一定水準まで下がったら、賃料を維持しつつ次の投資家へ売却する方法が一般的です。表面利回り8%で取得し、6%に下がった段階で売れば、利回り差がキャピタルゲインとなります。反対に、経年による修繕リスクが顕在化し始める築45年以降は、賃料を維持するのが難しくなるので早めの出口が安全です。

また、土地値が高いエリアでは建て替えによる再開発も選択肢になります。2025年4月施行の小規模不動産特定共同事業法改正により、クラウドファンディング型の再開発資金調達が容易になりました。自力で建て替え資金を用意せずとも、事業者と組んで区分所有者として参加する道が開けています。

まとめ

築30年以上の物件でも、適切なリノベーション計画と税・融資制度の活用によって十分な収益性を確保できます。重要なのは、取得価格を抑えつつ入居者ニーズに合った設備へ的確に資金を投下し、税効果と長期修繕計画を組み合わせることです。さらに、購入時から出口戦略を描いておくことで、賃料収入だけでなくキャピタルゲインも狙えます。古さはリスクであると同時に、投資家にとって差別化のチャンスです。今日から市場をリサーチし、自分なりの築古投資プランを組み立ててみてください。

参考文献・出典

  • 国土交通省 不動産価格指数(2025年9月公表) – https://www.mlit.go.jp
  • 総務省 住宅・土地統計調査2023 – https://www.stat.go.jp
  • 国土交通省 中古住宅リフォーム実態調査2024 – https://www.mlit.go.jp
  • 日本不動産研究所 不動産投資家調査2025年春 – https://www.reinet.or.jp
  • 財務省 税制改正大綱2025年度版 – https://www.mof.go.jp

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