投資用物件を探していると「鉄骨造 収益性」という言葉を耳にするものの、木造やRC造と比べて実際どれほどメリットがあるのか疑問に感じていませんか。耐用年数、修繕費、融資条件など多くの要素が絡むため、表面的な利回りだけでは判断が難しいのが現実です。本記事では、最新の公的データと現場の事例をもとに鉄骨造の強みと弱みを整理し、初心者でも納得できる判断軸を提供します。読み終える頃には、自己資金の配分から出口戦略まで一貫したイメージが描けるはずです。
鉄骨造が投資家に選ばれる理由

まず押さえておきたいのは、鉄骨造が「適度な初期投資」と「長めの耐用年数」を両立している点です。国土交通省の建築着工統計によると、2024年度時点で首都圏の鉄骨造賃貸マンションの平均建築単価は1㎡あたり約19万円で、RC造より2割安く木造より3割高い水準に位置しています。価格が中間帯に収まることで、表面利回りはRC造に近づきながら、融資審査では木造より優位に働きやすいというのが投資家に評価される背景です。
さらに、法定耐用年数が34年と木造(22年)より長いため、減価償却を通じた節税効果が長く続きます。近年はテレワーク普及で都市周辺部の単身需要が底堅く、空室率も安定傾向にあります。つまり、初期費用と稼働率のバランスを重視する投資家にとって、鉄骨造はミドルリスク・ミドルリターンの選択肢と言えるのです。
一方で、軽量鉄骨と重量鉄骨では工法が異なり、前者は木造に近い薄い柱梁、後者はRCに匹敵する厚さを持ちます。重量鉄骨は地震時の変形量が小さく、長期入居を狙うファミリー向けでも競争力を発揮しますが、建築コストは高めです。物件の規模と間取り、ターゲット層を明確にして工法を選ぶことが、収益性に直結します。
建築コストと耐用年数のリアル

ポイントは、建築単価だけでなくライフサイクルコストを比較する視点です。たとえば軽量鉄骨は1㎡あたり約18万円で建てられますが、防音性がRCほど高くないため後付けの遮音材や床材が必要になるケースがあります。対照的に重量鉄骨は1㎡あたり約21万円と高いものの、柱梁が太いぶん躯体寿命が延び、外壁や屋上の大規模修繕サイクルも15年から18年へ伸びやすいデータが出ています。
実は修繕費の差がキャッシュフローを左右します。総務省の「住宅・土地統計調査」では、鉄骨造アパートの年間維持管理費は家賃収入の約9%、木造は11%、RC造は8%という結果でした。この2~3%の差は30年スパンで見ると家賃6か月分以上のインパクトが生じます。
また、金融機関が設定する融資期間も耐用年数に連動します。2025年度のメガバンク基準では、鉄骨造への最長融資期間は法定耐用年数+15年、最大49年に設定されるケースがありました。返済期間が長ければ毎月の元利均等返済額が下がり、結果として実質利回りが向上します。建築費だけでなく融資条件まで視野に入れて収益性を計算することが欠かせません。
キャッシュフロー改善のコツ
重要なのは、家賃収入を増やすより先に「支出をコントロール」する視点です。鉄骨造の強みを活かすには、10年目と20年目に予想される大規模修繕の費用を平準化する仕組みを導入します。たとえば、家賃の5%を積立金として毎月確保し、余剰資金は省エネ設備の更新に回すことで空室期間を短縮できます。エネルギーコストが高騰する現在、断熱サッシとLED照明に切り替えるだけで共用部電気代が年間15%下がり、募集時の訴求材料にもなります。
さらに、IoT遠隔管理システムを導入すると、共用部の異常検知や遠隔開錠が可能になります。導入費用は20戸規模で約120万円ですが、管理会社の巡回頻度を月1回減らせば年間18万円の削減効果が見込め、7年で投資回収が完了します。こうした具体的な施策を重ねることで、鉄骨造 収益性は表面利回り+1%程度まで底上げできるケースが珍しくありません。
一方で家賃を上げすぎると競合物件との比較で不利になるため、共用部のバリューアップは「ランニングコスト削減→入居者満足度向上→家賃維持」という順番で組み立てるのが鉄則です。
税制と融資で変わる収益性
まず、2025年度の住宅ローン減税は投資用には直接適用されませんが、個人事業主が自己居住部分を併設する「店舗併用住宅」では控除対象になり得ます。また、固定資産税の新築軽減措置は賃貸住宅でも3年間(アパートは5年間)適用されるため、固定費の圧縮に寄与します。
融資面では、日本政策金融公庫の「中小企業向け不動産投資支援融資(2025年度)」が注目されています。自己資金1割から利用でき、鉄骨造の案件では変動金利年1.3%前後が提示されています。金利が0.2%下がると、1億円を35年借り入れた場合の総返済額は約400万円減少します。つまり、金利交渉は物件選定と同じくらい収益性を左右する要素なのです。
加えて、インボイス制度への対応で管理会社との契約形態を見直す投資家も増えています。共益費を適正に振り分けることで課税売上高を抑え、消費税還付のチャンスを残す手法もありますが、税理士と事前に試算することが不可欠です。
将来価値と出口戦略
ポイントは、売却時に「耐用年数残存」と「再開発ポテンシャル」の二つを買い手が評価する点です。鉄骨造はRCほど重厚ではないものの、耐用年数が長めなため築20年でも法定残存14年と評価され、金融機関が長めの融資期間を設定しやすい利点があります。それにより、エンドユーザーだけでなく次の投資家にも魅力が伝わり、流動性が高まります。
加えて、都市計画道路や沿線再開発の予定地に近い物件は、容積率緩和や買収ニーズが浮上する可能性があります。国交省の都市計画情報サービスで将来計画を確認し、再開発区域の外周部に位置取ると買収プレミアムが狙えます。言い換えると、立地選びの段階で出口戦略を想定しておくことが、鉄骨造 収益性を長期にわたり確保する鍵となります。
最後に、売却益課税を抑えるために保有期間を5年超に延ばす長期譲渡所得の活用や、法人化による税率の最適化も検討しましょう。法人化は管理費を損金算入できる一方で、住民税均等割など固定コストも増えるため、保有戸数とキャッシュフローのバランスが重要です。
まとめ
鉄骨造は建築コスト、耐用年数、融資期間、修繕費のバランスが良く、ミドルリスクで安定したキャッシュフローを狙える構造です。建築単価だけでなくライフサイクルコストを眺め、金利交渉や税制優遇を組み合わせることで、表面利回り以上の実質利回りを実現できます。物件選定では工法の種類と立地の将来性を見極め、保有中は修繕積立と省エネ投資で支出を抑えましょう。売却時を逆算した出口戦略を描けば、鉄骨造 収益性を最大化できるはずです。今こそ、具体的な数字とシミュレーションを手に取り、次の一歩を踏み出してください。
参考文献・出典
- 国土交通省 建築着工統計調査報告 2024年度版 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省統計局 住宅・土地統計調査 2023年結果 – https://www.stat.go.jp
- 日本政策金融公庫 2025年度中小企業向け融資ガイドライン – https://www.jfc.go.jp
- 国土交通省 2025年度住宅ローン減税制度概要 – https://www.mlit.go.jp
- 国土交通省 都市計画情報サービス – https://www.mlit.go.jp/toshi/city_plan