不動産の税金

初心者でも失敗しない店舗 確定申告ガイド

個人でテナント物件を所有し、賃料収入を得ていると「店舗 確定申告」の手続きが避けられません。家賃が毎月振り込まれているだけなのに、所得の種類や経費の扱いが複雑で悩む方は多いはずです。本記事では、所得区分の判断から減価償却、2025年度の最新電子申告までを体系的に解説します。読み終えるころには、税務署からの問い合わせに自信を持って対応できるでしょう。

店舗収益と所得区分を正しく押さえる

店舗収益と所得区分を正しく押さえるのイメージ

まず押さえておきたいのは、店舗賃料が「不動産所得」として課税される点です。国税庁の資料によると、不動産所得は土地や建物の貸付に伴う収入を指し、給与所得とは分けて計算します。また、年間の総収入金額から必要経費を差し引き、損益通算後の金額に対して税率が適用されます。

一方で、飲食店など自ら事業を営む場合は「事業所得」に該当する可能性があります。店舗を貸すのか、自分で運営するのかで区分が変わるため、契約書の名義や営業実態を確認しましょう。つまり、正しい区分を行わないと、青色申告特別控除や損失繰越といったメリットを受け損ねる恐れがあります。

さらに、消費税の課税事業者判定にも注意が必要です。前々年の課税売上高が1,000万円を超えると、翌々年から消費税の申告義務が生じます。店舗賃料は消費税の対象になるため、適正な区分記載と納税スケジュールの把握が不可欠です。

経費計上の基本と注意点

経費計上の基本と注意点のイメージ

重要なのは、収益から適切な経費を引くことで課税所得を抑えることです。固定資産税や火災保険料、管理会社への委託手数料は典型的な必要経費となります。国税庁のタックスアンサーでも、テナント募集広告費や入居者入替え時の修繕費が経費として認められると示されています。

しかし、私的利用が混在する支出は按分計算が求められます。たとえば、自宅兼テナントビルの共用光熱費を全額経費にすると否認リスクが高まります。按分比率の根拠として、床面積や使用時間の記録を残すと税務調査で説得力が増します。

また、支出時期と発生時期がずれる費用にも注意が必要です。前払家賃や敷金の返還分などは現金主義で処理すると課税のタイミングがずれる場合があります。実は、領収書の整理よりも発生主義の考え方を理解するほうが、後々のトラブルを抑止できます。

減価償却でキャッシュフローを改善する

ポイントは、建物部分を減価償却することで、手元資金を残しながら所得を圧縮できる点です。国土交通省の統計によると、鉄骨造ビルの法定耐用年数は34年ですが、中古で取得した場合は簡便法によりより短い年数で計算できます。償却期間が短いほど毎年の経費額が大きくなるため、実質的な税負担を下げられます。

一方で、土地は非償却資産のため費用化できません。購入価格を一括で区分しないと、建物価格が少額になり、減価償却の恩恵が小さくなります。つまり、売買契約書に「建物価格〇千万円」と明記し、取得税や登録免許税の負担増と比較しつつ総合的に判断することが肝心です。

さらに、2025年度税制では「中小企業投資促進税制」の特例が継続しており、青色申告者が一定の耐震改修を行った場合、特別償却または税額控除が適用されます。適用期限は2026年3月31日取得分までなので、改修計画があるなら早めに施工スケジュールを決めておくとよいでしょう。

青色申告と白色申告の違い

まず押さえておきたいのは、青色申告を選択すると最大65万円の特別控除を受けられる点です。この控除を受けるには複式簿記で帳簿を作成し、期限内に電子申告またはe-Tax添付を行う必要があります。一方、白色申告は帳簿付けが簡易で済みますが、控除額が小さく、赤字の3年間繰越も使えません。

実は、店舗運営は突発的な修繕や空室が発生しやすく、赤字を翌年以降に繰り越せる青色申告の方がキャッシュ面で有利です。国税庁の統計でも、青色申告者の平均所得金額は白色に比べ10%以上低く抑えられています。これは、適切な経費計上と控除活用が徹底されている結果と言えるでしょう。

さらに、青色申告を選ぶと家族への給与を「専従者給与」として必要経費に計上できます。店舗清掃や経理補助など実態が伴えば、所得分散による節税効果が期待できます。ただし、支払額と作業内容が見合わないと否認されるため、日報やタスク表を残しておくと安心です。

2025年度の優遇措置と電子申告

ポイントは、2025年度もe-Tax利用による優遇が維持されていることです。電子申告を行うと、青色申告特別控除の要件となる65万円控除がフル適用となり、紙提出では55万円に減額されます。また、マイナポータルと連携した「スマホ申告」が拡充され、税務署へのID・パスワード方式が簡素化されました。

一方で、電子帳簿保存法の改正経過措置が2025年12月31日で終了します。これにより、領収書をスキャンして保存する際は、タイムスタンプ付与や検索機能の確保が義務化されます。つまり、今のうちにクラウド会計ソフトへ移行し、電帳法対応オプションを有効化しておくことが得策です。

さらに、環境配慮型改修を後押しする「2025年度 省エネ投資促進補助金」は、中小事業者が店舗に高効率空調やLED照明を導入する際に国から補助率1/3が出る制度です。控除ではなく補助金のため、受給した年度の収入に計上し忘れると追徴課税の原因になります。補助金と減価償却の二重取りにならないよう、受給額を建物価値から差し引いて償却計算を行いましょう。

まとめ

店舗収益を得るオーナーにとって、確定申告は単なる事務作業ではなく利益を守る戦略です。所得区分の正確な判断、経費と減価償却の最適化、そして青色申告による控除活用が節税の柱になります。また、2025年度の電子申告や補助金制度は手続きのハードルを下げつつ、要件を満たせば大きなメリットをもたらします。今日から領収書整理と会計ソフトの導入を進め、次の申告をスムーズに迎えましょう。

参考文献・出典

  • 国税庁 – https://www.nta.go.jp/
  • 国土交通省 不動産統計 – https://www.mlit.go.jp/
  • 中小企業庁 省エネ投資促進補助金資料 – https://www.chusho.meti.go.jp/
  • e-Tax(国税電子申告・納税システム) – https://www.e-tax.nta.go.jp/
  • 総務省 統計局 家計調査 – https://www.stat.go.jp/

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