突然の相続で家族が混乱しないよう、今のうちから備えたいと考える方は多いはずです。しかし「現金で残すと税負担が重い」「複数の子に平等に分けにくい」といった悩みが尽きません。本記事では、賃貸需要が安定したファミリーマンションを活用し、相続税の軽減と家族間トラブルの防止を同時に実現する方法を解説します。読めば、2025年度の税制に即した最新のポイントと物件選びのコツがわかり、安心して次の一歩を踏み出せるでしょう。
ファミリーマンションが相続対策に向く理由

重要なのは、相続資産を「分けやすく、減りにくい形」に変えておくことです。ファミリーマンションは区分所有のため、一戸単位で評価でき、兄弟姉妹が複数いても割り振りが容易になります。さらに、不動産は現金より相続税評価額が低くなる傾向があり、固定資産税評価額や相続税路線価で算定されるため、課税対象額を抑えやすいのが特徴です。
また、ファミリー向けは単身用より入居期間が長いというデータがあります。国土交通省「賃貸住宅市場調査2025」によると、世帯人数が2人以上の入居者は平均入居年数6.3年と、単身者の4.1年を大きく上回っています。つまり、長期安定収入を得ながら相続税も節約できる一石二鳥の選択肢と言えます。
一方で、物件管理や家賃下落リスクを考慮しないと、せっかくの節税効果が帳消しになる可能性があります。そこで次章では、2025年度の税制を踏まえた具体的なメリットと注意点を整理します。
2025年度の税制を踏まえた具体的メリット

まず押さえておきたいのは、2025年度も「小規模宅地等の特例」が継続している点です。居住用や貸付用の土地で要件を満たせば、土地の評価額を最大80%減額でき、区分所有マンションも敷地権割合で適用可能です。加えて、住宅ローン減税は新築取得から13年間控除が受けられ、控除率は0.7%で据え置かれています。自ら居住した後に賃貸へ転用する計画なら、この制度を併用する余地も生まれます。
ポイントは、借入によるレバレッジ効果と相続税圧縮を両立させることです。例えば7,580万円(2025年・東京23区の平均価格)の物件を自己資金2,000万円、ローン5,580万円で購入したケースを想定しましょう。相続税評価額は建物が固定資産税評価額、土地が路線価ベースで算定されるため、購入価格の6割前後に下がるのが一般的です。そこにローン残債が控除されるため、課税対象は約2,500万円程度に圧縮される計算になります。
ただし、住宅ローン減税を利用するには自宅要件を満たす必要があります。最初から賃貸運用する場合は対象外となるため、ライフプランに合わせた制度選択が欠かせません。
失敗しない物件選びと運用ポイント
実は、ファミリーマンションだからといって全てが安全な訳ではありません。空室リスクを抑える鍵は「立地」「間取り」「管理体制」の三つです。立地については、駅徒歩10分以内かつ学区評価の高いエリアが賃貸需要を支えます。加えて、70㎡前後の3LDKはテレワーク普及後も人気が続き、長期入居につながりやすい面積帯です。
管理体制では、修繕積立金の水準と管理組合の合意形成の速さが重要です。国土交通省のガイドラインによれば、築20年時点で㎡当たり月額250円以上の積立が理想とされ、これを下回る物件は将来的な一時金徴収リスクがあります。見学時は管理組合の総会資料を確認し、長期修繕計画が適切かどうかを確かめましょう。
さらに、賃貸経営の収支計画では表面利回りだけでなく、実質利回りを算定してください。管理費・修繕積立金の合計が毎月25,000円、固定資産税が年12万円といった費用を引き、空室率5%シナリオでもキャッシュフローが黒字であることが最低ラインです。こうした検算を行えば、保有期間中のストレスは大きく減ります。
遺産分割と賃貸経営を両立させる方法
一方で、家族間の利害調整をどう行うかも見逃せません。ポイントは「持分割合」と「管理委託の明確化」です。区分所有であっても、共有名義にすると売却や大規模修繕の意思決定が煩雑になります。そこで、将来の相続人ごとに住戸を分けるか、管理が難しい場合は一人が取得し、他の相続人には代償金を支払う方法がスムーズです。
また、賃貸収入の配分ルールを公正証書に残しておくと、運用段階でのトラブルを防げます。司法書士や税理士と協力し、家族会議の議事録を残すだけでも効果があります。賃貸管理については外部の管理会社に一任し、家族は月次レポートで収支を確認する形にすると、専門知識の差による不公平感を減らせます。
このように、相続対策と賃貸経営は別の課題に見えますが、事前の設計で両立が可能です。誰がいつどのように管理し、最終的に売却するのかを「出口戦略」として共有しておくことが安心材料になります。
専門家と組む資金計画・出口戦略
まず、金融機関との交渉では「借入期間」と「金利タイプ」の選択が収益性を大きく左右します。固定金利は安全性が高い一方、変動金利より0.5〜0.8%高いのが一般的です。長期保有を前提とし、相続人がローンを引き継いでも返済可能なキャッシュフローを確保するなら、変動金利で短期繰上返済の余地を残す戦略も有効です。
専門家選びで見落としがちなのが、相続に強い不動産鑑定士の活用です。国税庁の財産評価基本通達に基づき、鑑定評価を行えば、市場価値と路線価との差異を客観的に説明でき、税務調査時のリスクヘッジになります。加えて、2025年度の「暦年贈与課税」の改正に備え、毎年110万円の基礎控除を使って持分を段階的に移転する手法も検討しましょう。
結論として、購入から運用、最終的な売却までを一つのシナリオに落とし込み、税理士・司法書士・管理会社が連携する体制を整えることが、家族全員の安心につながります。専門家への相談費用は数十万円かかるものの、相続税圧縮やトラブル回避によるメリットは比較にならないほど大きいはずです。
まとめ
ファミリーマンションを活用した相続対策は、評価額の引き下げと長期安定収入を同時に実現できる有力な方法です。2025年度も続く税制優遇を最大限に活かすには、立地と管理体制に優れた物件を選び、家族で明確な運用ルールを共有することが欠かせません。まずは信頼できる専門家に相談し、購入から出口までの資金計画を作成してみてください。行動を先送りせず、一歩踏み出すことで、将来の安心と家族の笑顔が手に入るでしょう。
参考文献・出典
- 国土交通省「賃貸住宅市場調査2025」 – https://www.mlit.go.jp
- 不動産経済研究所「首都圏新築分譲マンション市場動向(2025年)」 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 国税庁「令和7年度(2025年度)財産評価基本通達」 – https://www.nta.go.jp
- 財務省「相続税・贈与税の概要(2025年度)」 – https://www.mof.go.jp
- 住宅金融支援機構「民間住宅ローンの実態調査2025」 – https://www.jhf.go.jp