不動産の税金

RC造 相続対策で差をつける初心者向け完全ガイド

不動産を相続する場面では「税金がどれほどかかるのか」「子どもに負担を残さないか」といった不安がつきまといます。とくに現金や戸建てよりも、RC造(鉄筋コンクリート造)の賃貸マンションを活用すると評価額を抑えつつ安定収益も狙えると耳にしても、仕組みがわからなければ一歩を踏み出せません。本記事では、2025年12月時点で有効な税制を前提に、RC造を使った相続対策の基礎から実践までを丁寧に解説します。読み進めれば、節税だけでなく長期経営の視点も手に入るはずです。

RC造が相続対策に向く理由

RC造が相続対策に向く理由のイメージ

重要なのは、RC造が持つ「長寿命」と「収益安定性」が相続資産として高い評価を受ける点です。まず耐用年数が法定で47年と長く、木造より減価償却期間が延びるため、将来にわたり安定した帳簿価値を維持できます。また遮音性や耐火性が高いことから入居者満足度が向上し、空室率が低くなりやすいのも魅力です。これらの特性は安定収益をもたらし、資産を引き継ぐ側に計画の立てやすさを提供します。

一方で建築コストが高いというデメリットは存在します。しかし相続税の観点では、そのコストが評価額を圧縮する鍵になります。つまり高い建設費で現金が減ることで課税財産が目減りし、そのうえ賃貸用建物は自用の約7割に評価が下がるため、結果的に税負担を軽減できるのです。

さらにRC造は金融機関の評価が高く、長期融資を組みやすい点も見逃せません。低金利が続く2025年時点では35年超の固定金利ローンが1.8%前後で調達できるケースもあり、賃料収入とのバランスを取りやすくなっています。長期の資金計画を立てやすいことは、相続後の返済リスクを小さくする重要な要素です。

相続税評価額を圧縮する仕組み

相続税評価額を圧縮する仕組みのイメージ

まず押さえておきたいのは、賃貸物件の評価が「貸家建付地」と「貸家」の二つに分かれる点です。国税庁の財産評価基本通達では、土地は自用地評価から約2割を減額でき、建物は固定資産税評価額の70%が課税標準になります。RC造マンションを建てると、現金1億円を建設費に振り替えるだけで現金の相続税評価はゼロになり、建物部分は約7,000万円に圧縮されるというわけです。

さらに2025年度も継続している「小規模宅地等の特例」を適用すれば、被相続人の事業用貸付地は最大200㎡まで評価額が50%減になります。都市部の200㎡は路線価で1億円を超えることも珍しくありませんが、この特例を併用すれば評価額は半減し、節税効果は飛躍的に高まります。ただし、相続開始前3年以内に取得した土地は対象外となる点や、相続後も賃貸を継続する要件があるため注意が必要です。

実は建物部分でも減価償却費は相続後の所得税対策に役立ちます。RC造の定額法なら法定耐用年数47年を超えた後も1.0%で償却を続けられるため、長期にわたり賃料との損益通算が見込めます。所得税率が33%超の高所得者であれば、年間100万円の償却費が手取りを約33万円押し上げる計算です。相続後の家族全体のキャッシュフローを安定させる手段としても見逃せない仕組みといえるでしょう。

2025年度の節税スキームと注意点

ポイントは、節税効果ばかりに目を向けすぎると税務リスクが高まることです。国税庁は2023年以降、いわゆる「地面積過大評価スキーム」に対する調査を強化しており、2025年度も同様のスタンスを維持しています。土地の形状や賃料設定が著しく不自然な場合、実勢価格を基に更正される可能性があります。

また2025年度税制改正では、相続開始前3年以内に賃貸を開始した建物の評価方法について詳細な確認資料の提出が求められるようになりました。具体的には賃貸借契約書、入居者名簿、工事請負契約書の写しなどが必要です。不備があれば特例適用が認められない恐れがあるため、書類管理は慎重に行いましょう。

金融機関の融資審査も、耐用年数と融資期間のバランスを重視する傾向が強まっています。例えば築30年超のRC造を取得して相続税対策を狙うケースでは、残存耐用年数に合わせ10年未満の短期ローンしか付かないことがあります。賃料で返済しきれないと家族の負担が増すため、取得時点で返済シミュレーションを厳しく行うことが不可欠です。

建築コストとキャッシュフローのバランス

重要なのは、建設費を抑え過ぎると入居率や修繕費で後悔する点です。国土交通省の「建築着工統計」によると、2024年度のRC造賃貸マンション平均建築単価は首都圏で1㎡あたり23万円前後でした。内装や設備をグレードダウンして20万円台前半に抑えることは可能ですが、浴室乾燥機や宅配BOXといった人気設備を省くと賃料が数千円下がり、長期的なキャッシュフローを圧迫します。

一方で設備を充実させ過ぎると建築費が膨らみ、ローン返済比率が高くなります。目安として、年間家賃収入に対する元利返済額は50%以下に抑えると、修繕積立や空室損にも耐えやすくなります。例えば年間家賃2,400万円の物件であれば、年間返済上限は1,200万円が目安です。金利1.8%・35年ローンなら元本約2億円まで借入可能ですが、建設費が2億5,000万円に達すると資金繰りに無理が生じます。

資金計画を立てる際は、長期修繕計画も同時に作成しましょう。RC造は大規模修繕サイクルが12〜15年と言われ、外壁や屋上防水で3,000万円前後かかることもあります。あらかじめ家賃収入の10%を修繕積立に回せば、突然の出費に慌てずに済みます。

長期経営を支える管理と出口戦略

まず押さえておきたいのは、RC造は建物寿命が長い分だけ「管理の質」が資産価値を左右する点です。築10年時点での修繕履歴がしっかり残っていれば、金融機関の再評価や売却時の価格が下がりにくくなります。管理会社と長期修繕計画を共有し、5年ごとに見直すプロセスを習慣化すると安心です。

次に出口戦略を考える際、売却と持ち続ける選択肢を家族で共有することが大切です。相続人が複数いる場合、共有名義だと意思決定が難航しがちなので、遺言や家族信託で権限を集約しておくと紛争を防げます。2025年度の家族信託ガイドラインでも、賃料収入の分配方法を信託契約で明確にするよう推奨されています。

また、建物が築30年を超えるとリノベーションによる賃料アップと売却のどちらが有利か判断が必要になります。国土交通省の「賃貸住宅市場データブック2024」によれば、築30年以上でもフルリノベで平均賃料が15%上がった事例は全体の3割に留まります。売却益と比較し、手残りキャッシュを最大化するシナリオを早期に検討することが、家族の資産を守る近道です。

まとめ

本記事ではRC造マンションを活用した相続対策の仕組みと実践ポイントを解説しました。評価額を圧縮しつつ安定収益を得られるRC造は魅力的ですが、建築コストと管理の質を見誤ると家族の負担が増えます。小規模宅地等の特例や減価償却を正しく活用し、長期修繕計画と出口戦略を家族で共有することが成功の鍵です。まずは信頼できる税理士と金融機関に相談し、自身の資産規模に合ったプランを具体化する一歩を踏み出してみてください。

参考文献・出典

  • 国税庁「財産評価基本通達」 – https://www.nta.go.jp
  • 国税庁「相続税の申告のしかた(令和7年版)」 – https://www.nta.go.jp
  • 国土交通省「建築着工統計調査報告 2024年度」 – https://www.mlit.go.jp
  • 国土交通省「賃貸住宅市場データブック2024」 – https://www.mlit.go.jp
  • 日本銀行「主要銀行貸出動向アンケート調査 2025年9月」 – https://www.boj.or.jp
  • 法務省「家族信託に関するガイドライン2025」 – https://www.moj.go.jp

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