鉄骨と鉄筋コンクリートを組み合わせたSRC造(Steel Reinforced Concrete)は、耐震性と耐久性に優れる一方、価格や管理コストの高さが気になり二の足を踏む方も多いはずです。実は、構造特性を正しく理解し、資金計画と管理体制を整えれば、長期安定収益を狙える投資対象になります。本記事では、初心者でもSRC造で失敗しにくい具体的な戦略を解説します。読むことで、物件選定から融資、運営、2025年度の制度活用まで一貫した判断軸が得られるでしょう。
SRC造の基本と選ばれる理由

まず押さえておきたいのは、SRC造が鉄骨造とRC造の長所を併せ持つ構造である点です。鉄骨の柔軟性とコンクリートの圧縮強度が組み合わさり、高い耐震性と遮音性を実現します。
一般的にSRC造は10階以上の中高層マンションに多く採用され、国土交通省の統計でも2024年末時点で新築マンションの約27%を占めました。重量が増すぶん基礎工事が大がかりになり、建築コストはRC造より平均15%ほど高いとされます。しかし、耐用年数は法定で47年とRC造より2年長く、実際には60年以上使われるケースも珍しくありません。つまり取得価格の高さを長期収益で回収できるポテンシャルがあります。
遮音性の高さはファミリー層の入居満足度に直結し、郊外エリアでも長期入居が期待できます。加えて管理組合が長期修繕計画をしっかり立てやすい点も賃貸オーナーにとって安心材料です。一方で建物が重いぶん地盤調査の結果が厳しくなるため、立地選定では地耐力の確認が欠かせません。
耐震・劣化リスクを見抜くチェックポイント

重要なのは、SRC造でも築年数とメンテナンス履歴によってリスクが大きく変わることです。新耐震基準が適用された1981年6月以降の物件であっても、定期的な外壁タイルの打診調査や鉄骨部の防錆処理が行われていなければ、思わぬ修繕費を招きます。
まず建築確認日を確認し、2000年以降に強化された構造計算適合性判定の対象かどうかを把握します。そのうえで長期修繕計画書と過去の実施履歴を照らし合わせ、計画倒れになっていないかチェックしましょう。国土交通省の「マンション総合調査」(2024年)によると、大規模修繕を予定通り実施した管理組合は全体の58.4%にとどまります。計画未達の物件は将来の一時金徴収リスクが高く、家賃収支を圧迫する恐れがあります。
また、SRC造は柱梁が太いため、室内の有効面積がRC造より若干狭くなることがあります。間取りの使い勝手が悪いと入居付けに苦戦するため、モデルルームや空室状態での採寸確認が欠かせません。耐震補強済かどうかは、図面上の壁量や鋼材補強の内容を専門家に調査依頼すると安心です。
キャッシュフローを強くする融資戦略
ポイントは、低金利かつ長期の融資条件を確保して、初期のキャッシュフローを安定させることです。SRC造は耐用年数が長いため、融資期間を30年以上に設定しやすい利点があります。2025年時点でメガバンクの投資用ローンは固定1.7〜2.1%が目安ですが、地方銀行や信用金庫では物件所在地と顧客属性次第で1.5%前後も狙えます。
自己資金は物件価格の25%程度を用意すると、融資審査の通過率が高まり、返済比率も30%台に抑えやすくなります。一般財団法人住宅金融普及協会の試算では、金利が0.3%下がるだけで30年総返済額が1億円借入時に約500万円縮小しました。つまり金利交渉は空室対策と同じくらい重いテーマといえます。
団体信用生命保険(団信)は地震補償付きタイプを選ぶと保険料が上がりますが、首都圏の築古SRCを攻める場合は検討価値があります。また、繰上返済は初期5年を避け、減価償却による節税効果が薄れる8年目以降に集中させると税効果とキャッシュフローを両立しやすくなります。
賃貸運営で差がつく管理と修繕計画
まず押さえておきたいのは、SRC造は大規模修繕サイクルが12〜15年とやや長めな一方、工事費が高額になりやすい点です。外壁タイルの張替えや高層足場のコストがかさむため、共用部修繕積立金が不足しがちです。オーナーとしては管理組合総会に積極参加し、修繕積立金の段階増額方式を提案する姿勢が求められます。
内装部分では、梁型が太いことで天井高が部分的に下がる場合があります。LED間接照明やアクセントクロスでデザイン的にカバーすると、築20年超でも競争力を保てます。東京23区の事例では、デザインリフォームで月額家賃を8%上乗せできたケースも確認されています。
入居者募集は、遮音性の高さと耐震性を訴求ポイントに据えると反応が良いです。特に子育て世帯やテレワーク需要を意識した訴求は、2021年以降の在宅率上昇で効果が実証されています。管理会社には24時間駆け付けサービスの実施状況や、リーシング担当者のネット広告運用実績を確認し、募集速度を数値化してモニタリングしましょう。
2025年度制度を活用した資産価値向上
実は、2025年度も活用できる国の支援策を上手に組み合わせると、SRC造の資産価値を高めつつコストを抑えられます。代表的なのが「長期優良住宅化リフォーム推進事業」です。耐震・省エネ・劣化対策をまとめて行うと、1戸当たり最大250万円の補助が受けられます。補助対象の必須工事には断熱改修が含まれるため、空調効率を高めてランニングコスト削減にも寄与します。
加えて、2025年度住宅ローン減税は賃貸併用住宅のオーナーにも一部適用されるため、自宅部分を設けたプランで購入を検討している人は節税メリットを把握しておくべきです。減税期間は最長13年、控除率は1.0%ですが、カーボンニュートラル基準を満たすと控除限度額が拡大します。
環境性能を示すBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)取得も視野に入れましょう。BELS★3以上を取ると、地方銀行で金利優遇が0.1〜0.3%上乗せされるプランが増えてきました。つまり補助金と金利優遇を同時に享受できれば、リフォーム投資の回収期間を大幅に短縮できます。
まとめ
SRC造は取得価格と修繕コストが高いものの、耐震性と静音性による長期入居、そして長い法定耐用年数という強みがあります。築年の確認とメンテ履歴のチェックで思わぬ修繕リスクを避け、金利交渉と長期融資でキャッシュフローを安定させることが最初のハードルです。そのうえで、遮音性や安全性を武器にした訴求と、2025年度の補助制度を組み合わせたリフォーム戦略を実行すれば、高値での出口や相続対策にもつながります。今日の記事を参考に、まずは気になる物件の構造図と修繕計画を取り寄せ、数字と現場を結び付ける行動を始めてみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅着工統計 2024年版 – https://www.mlit.go.jp
- 国土交通省 マンション総合調査 2024年 – https://www.mlit.go.jp
- 一般財団法人住宅金融普及協会 住宅ローンデータ 2025年 – https://www.jfpa.jp
- 東京都都市整備局 マンション修繕ガイドライン 2024年 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp
- 住宅性能評価・表示協会 BELSガイド 2025年版 – https://www.hyoukakyoukai.or.jp