築30年を超えた賃貸物件を持つと、「空室が増えそう」「修繕費が読めない」と不安になりがちです。しかし適切な管理と投資を重ねれば、築古でも安定したキャッシュフローを生み出せます。本記事では、市場動向の理解から劣化診断、リフォーム戦略、管理会社との付き合い方、さらに2025年度に利用できる補助制度までを順序立てて解説します。読了後には、自分の物件に合った具体策が描けるはずです。
築古物件を取り巻く最新市場動向

重要なのは、築30年以上の物件が必ずしも不利とは限らない現状を知ることです。国土交通省の「住宅市場動向調査2025」によると、都心部では築40年超でも稼働率90%を維持するエリアが存在します。また、地方都市でも再開発が進む駅前では築古へのニーズが高まり、家賃水準が底堅いという報告があります。
まず、人口動態と再開発計画を合わせて確認しましょう。周辺に大学や大型病院があるエリアは、ファミリー向けよりワンルームの需要が長期的に残ります。一方で郊外の団地群は空室率が上昇傾向にあり、管理方法を強化しなければ早期に収益が縮小します。つまり、築年数より立地とターゲットの分析が成否を分けるわけです。
さらに、築古物件を好む入居者像を把握することも重要です。リモートワーカーやクリエイターは、広さや天井高を求め、意外にも築古の味わいを好む傾向があります。リフォームでデザイン性を高めると、こうした層を呼び込めるという事例が増えています。
まず押さえておきたい劣化診断の進め方

ポイントは、表面的な修繕より構造と設備の健全性を数値で確認することです。日本建築防災協会の指針では、築30年時点で初回の詳細点検を行い、その後10年ごとに再調査することが推奨されています。劣化診断は専門家による一次調査と詳細調査の二段階に分けると、無駄な工事を避けられます。
最初の段階では、共用部のひび割れや漏水跡を目視し、建物カルテを作成します。カルテに修繕履歴と費用を整理すると、将来の資金計画を立てやすくなります。そのうえで、耐震性や配管の腐食度を計測機器で測定し、具体的な補強案を数値で示してもらいましょう。
また、配管更新の判断は水質検査と漏水発生率が鍵です。築35年を超えると給水管の赤水発生率が急増するというデータがありますが、ステンレス巻き替えやライニング工法で延命できる場合もあります。診断結果を客観的に比較し、長期修繕計画に反映させる姿勢が不可欠です。
資産価値を高めるリフォーム戦略
実は、空室対策と修繕計画を別々に考えるとコストが膨らみます。工事を一度にまとめる「バリューアップ改修」は、施工費を10〜15%圧縮できるケースが多いです。たとえば外壁塗装と共にバルコニー防水を行えば、足場を共有できるため追加費用が抑えられます。
デザイン面では、築古の弱点を強みに変える方法が有効です。天井の梁をあえて見せるスケルトン天井や、無垢材の床に張り替える工事は、若年層の入居期間を平均1.5年延長させたという調査結果があります。家賃を1割上げても成約した事例も珍しくありません。
一方で、水回り設備は最低限の更新が必要です。国土交通省の「賃貸住宅管理実態調査2024」では、築30年以上で浴室とキッチンを同時更新した物件の稼働率が5ポイント向上したと報告されています。費用を抑えるために、キッチンは扉交換と水栓更新にとどめ、浴室はユニットごとに交換するといったメリハリが効果的です。
実は運用コストを左右する管理会社選び
まず押さえておきたいのは、築古物件に強い管理会社とそうでない会社の差です。築年数が若い物件中心の会社では、老朽化に伴うトラブル対応が遅れがちです。年間修繕費が家賃収入の15%を超えると赤字に転落しやすいので、費用を抑える提案ができる管理会社を選びましょう。
管理契約を見直す際は、報告体制と長期修繕計画の作成支援があるかを確認します。共用灯のLED化やスマートロック導入など、小規模投資でランニングコストを削減する提案を受けられると理想的です。また、退去時の原状回復費用を細かく査定する会社は、入居者トラブルを減らす効果も期待できます。
さらに、管理委託料の水準だけで決めてしまうと、結果的にコスト高になる恐れがあります。入居率保証やAIによる賃料査定など、付加価値サービスを比較し、総合的な経営効率に着目する視点が欠かせません。
2025年度補助制度の活用ポイント
ポイントは、適用条件を満たすための計画を早めに立てることです。2025年度は「長期優良住宅化リフォーム推進事業」が継続し、耐震補強や省エネ改修に対して最大250万円の補助が受けられます。また、自治体によっては高齢者向け設備改修に対する上乗せ補助もあり、実質負担を3分の1まで圧縮できるケースがあります。
ただし、補助金は事前申請が必須で、交付決定前の着工は対象外になります。施工会社とスケジュールを共有し、申請書類の準備期間を含めて工程表を組むことが肝心です。さらに、省エネ性能を示す「建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)」の星取得で加点が付くため、窓の断熱改修を同時に行うと採択率が上がります。
最後に、税制優遇も見逃せません。固定資産税の減額措置は、新耐震基準に適合する耐震改修を行い、申告すると翌年度から3年間最大1/2が減額されます。築古物件のキャッシュフローを改善するうえで、補助金と税制の両輪を活用する視点が求められます。
まとめ
築30年以上 管理方法の核心は、立地に合わせたターゲット設定、数値に基づく劣化診断、バリューアップ改修の実行、そして管理会社とのパートナーシップにあります。補助制度や税制優遇を活用すれば、修繕費を抑えながら家賃を維持・向上させることも可能です。まずは物件カルテを整え、長期修繕計画を専門家と共有し、次の一歩を具体化してみてください。適切な管理を続けることで、築古でも安定した資産形成が十分に実現できます。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅局「住宅市場動向調査2025」 – https://www.mlit.go.jp
- 国土交通省「賃貸住宅管理実態調査2024」 – https://www.mlit.go.jp
- 日本建築防災協会「既存建築物の耐震診断指針」 – https://www.kenchiku-bosai.or.jp
- 独立行政法人住宅金融支援機構「フラット35リフォーム融資統計2025」 – https://www.jhf.go.jp
- 一般社団法人リノベーション協議会「リノベーション白書2025」 – https://www.renovation.or.jp