不動産の税金

SRC造で改善するキャッシュフロー術

不動産投資に興味はあるものの、「建物構造まで気にしたことがない」「毎月の収支が不安定で踏み出せない」と悩む方は多いでしょう。本記事では、堅牢さで知られるSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)に注目し、長期的なキャッシュフローを安定させる方法を解説します。ポイントは構造の特徴と収支の関係を正しく理解し、2025年時点で活用できる融資や税制を味方につけることです。最後まで読むことで、物件選びから出口戦略までの一連の流れがイメージできるようになります。

SRC造とは何か

SRC造とは何かのイメージ

まず押さえておきたいのは、SRC造が鉄骨と鉄筋コンクリートを組み合わせたハイブリッド構造である点です。国土交通省の資料によれば、耐震性や耐火性に優れ、平均的な法定耐用年数は47年とRC造より2年長いと示されています。つまり、物件を長期保有するほど減価償却期間が延び、毎年の経費計上額が増えるメリットが生まれます。

次に、構造強度が高いことから金融機関の評価が安定しやすい点も重要です。2025年の主要メガバンクでは、SRC造の収益物件に対し最長35年の長期融資を認めるケースが増えています。融資期間が延びると月々の元利返済額が抑えられ、キャッシュフローに余裕が生まれます。

さらに、保険料の面でも利点があります。火災保険は構造区分によって料率が異なり、SRC造は木造より年間1〜2割安くなることが一般的です。保険料は固定費として長期にわたり発生するため、わずかな差でも総額で見れば大きな節約効果となります。

キャッシュフロー計算の基本

キャッシュフロー計算の基本のイメージ

ポイントは、表面利回りではなく実際に手元に残るキャッシュフロー(CF)を把握することです。CFは家賃収入から空室損失、運営費、返済、税金を差し引いた後の純現金収支を指します。初心者の多くは「家賃10万円、返済7万円だから月3万円プラス」と単純計算しがちですが、実際には管理費や修繕積立、賃貸広告費など多岐にわたる支出があります。

まず、運営費比率を試算する際は家賃収入の20〜30%を目安に設定すると保守的です。東京都内のワンルーム調査では、2025年の平均運営費率は24%と報告されています。これを下回る数字で計画すると、実際の空室増加や金利上昇に耐えられないリスクが高まります。

次に、将来の大規模修繕を見越した積立も欠かせません。SRC造は外壁タイルや共有配管の更新周期がRC造より若干長い傾向にありますが、30年目には1戸あたり100万円規模の大規模工事が必要になることも珍しくありません。毎月のCFのうち1〜2万円を修繕準備金として別口座で確保する習慣が、資金ショートを防ぐ鍵となります。

言い換えると、キャッシュフローは「家賃収入―運営費―返済―税金」に加え、「将来の修繕準備」を含んだ純粋な手残りで評価すべきです。見かけの黒字に惑わされず、保守的なシミュレーションを行う姿勢が長期安定への第一歩です。

SRC造がキャッシュフローに与える三つの効果

重要なのは、SRC造が「融資条件」「運営コスト」「入居需要」の三方向でCFに好影響をもたらすことです。ここでは具体的な数値を交えながら、その仕組みを解説します。

最初に挙げられるのが、長期融資による月次返済額の低下です。例えば利率1.9%、借入額1億円の場合、25年返済と35年返済では月額約13万円の差が生じます。SRC造は構造評価が高いため35年融資を引きやすく、この差がそのままCFの向上に直結します。

二つ目は、運営コストの抑制です。日本損害保険協会の料率比較では、同規模の木造アパートと比べ、SRC造マンションの火災保険料は年間でおおむね8万円低いとされています。さらに耐用年数が長い分、減価償却費を多く計上できるため、課税所得が圧縮され所得税・住民税が軽減される効果も期待できます。

三つ目は、入居需要の安定です。総務省の2025年住民基本台帳人口移動報告では、都心部への転入超過が続く一方で、防災意識の高まりから耐震性の高い物件を選ぶ入居者が増加しています。SRC造は耐震等級や耐火性能をアピールしやすく、長期的に空室率を低く保ちやすい構造です。空室損失が1%下がれば、年間家賃収入300万円の物件で3万円のCF改善になります。

2025年時点の融資と減価償却のポイント

実は、2025年度の金融環境と税制を理解するだけでもCFは大きく変わります。ここでは、現在有効な制度のうち、不動産投資家が押さえておきたい項目を紹介します。

まず融資面では、金融庁の監督指針に沿った「エビデンス重視」の審査が定着しています。以前のような収益還元評価のみならず、物件の耐用年数と返済期間の整合性がより厳格に見られるようになりました。SRC造は法定耐用年数47年、築30年の中古でも残存耐用年数17年を根拠に20年超の融資を引けるケースがあり、RC造や木造より優位に立ちやすい点が特徴です。

税制面では、減価償却方法が2020年改正以降「定額法」に一本化され、2025年も継続しています。中古取得の場合、耐用年数は「(法定耐用年数−築年数)+築年数×0.2」で算出する簡便法が認められており、SRC造なら築20年物件で残存耐用年数13年となります。減価償却費を多く計上できる初期数年間は、所得税率20%の投資家なら年間数十万円の節税効果が期待できます。

また、2025年度の住宅ローン減税は自己居住用に限られるため、投資用物件には適用されません。補助金についても、賃貸マンション向けの国費補助は現時点で存在しないため、怪しい情報には注意が必要です。確かな制度のみを前提にCFを組むことが、計画倒れを防ぐ秘訣と言えます。

リスク管理と出口戦略

ポイントは、CFを守るだけでなく、物件売却までを視野に入れて総合的にリスク管理することです。SRC造は長寿命ゆえに売却時点で築30年を超えても市場価値が残りやすく、出口の選択肢が広がります。

まず、保有期間中のリスクとして金利上昇が挙げられます。日本銀行は2025年もマイナス金利を解除していませんが、物価上昇目標2%が達成されれば段階的な利上げが議論される可能性があります。固定金利型の借り換えを早めに検討し、シミュレーション上2%上昇してもCFが黒字を保てるか確認しておきましょう。

次に、設備更新リスクです。SRC造は躯体が頑強な一方、給排水管やEVなどの設備は耐用年数20〜30年で限界を迎えます。更新コストは戸当たり平均80万円とされ、計画的な積立が不可欠です。長期修繕計画をオーナー主体で作成し、毎年見直すことで突発的なCF悪化を防げます。

最後に出口戦略です。築40年超のSRC造でも、耐震改修済みであれば相続対策を目的とする個人投資家に売却しやすい傾向にあります。売却時期を固定資産税評価額の見直しタイミング(3年ごと)に合わせると、買主の節税メリットを提示でき、価格交渉を有利に進められることがあります。言い換えると、CFと売却益の両面を計算に入れたトータルリターン思考が、不動産投資成功のカギとなります。

まとめ

ここまで、SRC造の特徴とキャッシュフローの関係を具体的に見てきました。耐用年数の長さがもたらす減価償却効果、長期融資による返済負担の軽減、そして耐震性による空室率低下が、CFを下支えする三本柱です。さらに2025年の融資基準や税制を正しく理解し、保守的なシミュレーションでリスクを管理すれば、長期的に安定した収益が期待できます。まずは気になるエリアのSRC造物件を調べ、試算表を自分で作成するところから一歩を踏み出してみてください。

参考文献・出典

  • 国土交通省 建築着工統計調査 – https://www.mlit.go.jp/statistics/
  • 金融庁 監督指針(2025年度版) – https://www.fsa.go.jp/
  • 日本損害保険協会 火災保険料率比較表 – https://www.sonpo.or.jp/
  • 総務省 住民基本台帳人口移動報告 2025年版 – https://www.soumu.go.jp/
  • 日本銀行 金融政策決定会合資料 – https://www.boj.or.jp/

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