不動産の税金

鉄骨造 相続対策の実践ガイド

不動産を相続するとき、評価額が思った以上に高くて税負担に驚く人は少なくありません。特に都心部の土地を持つ家庭では、課税評価が現金よりも跳ね上がりやすく、納税資金の確保が悩みの種になります。そこで注目されているのが「鉄骨造 相続対策」です。鉄骨造の賃貸マンションを建て、賃料収入を得ながら相続税評価額を抑える方法は、現金や空き地で所有するよりも税務上のメリットが大きいとされています。本記事では、鉄骨造がなぜ相続対策に向くのか、2025年度の最新税制を踏まえてわかりやすく解説します。

鉄骨造が相続対策に向く理由

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まず押さえておきたいのは、鉄骨造の建物が評価減効果と収益安定性を同時に期待できる点です。国税庁の財産評価基本通達によれば、賃貸用建物は自用と比べて評価基準が下がり、さらに土地も貸家建付地として減額されます。そのため、同じ土地に現金を置いておくより、鉄骨造の賃貸物件を建てるほうが相続税評価額を圧縮しやすいのです。

次に耐用年数の長さが魅力になります。鋼材を用いる鉄骨造は構造的に強く、法定耐用年数は34年と木造より長めです。耐用年数が長いと金融機関の評価も高まり、長期ローンを組みやすくなります。長期の融資期間は月々の返済額を抑え、将来のキャッシュフローを安定させる効果を生みます。

さらに建築コストと賃料水準のバランスもポイントです。鉄骨造は木造より建築費が上がる一方、防音性や耐震性で差別化しやすく、家賃単価を高めに設定しやすい傾向があります。つまり、相続税が下がりつつ収益も確保しやすいため、資産承継と投資の両立を図れるのです。

最後に維持管理の観点です。鉄骨造は構造体の劣化が緩やかで、大規模修繕サイクルが長くなるケースがあります。長期的に見れば修繕の計画が立てやすく、相続人が管理を引き継いだ後も予算計画が立てやすい点が安心材料になります。

減価償却と課税評価のギャップを生かす

減価償却と課税評価のギャップを生かすのイメージ

重要なのは、減価償却が進むほど帳簿価額が下がり、課税評価との差が開くメカニズムです。鉄骨造の法定耐用年数は34年ですが、賃貸開始後数年で加速度的に簿価が落ちる定額法を適用できます。帳簿上の価値が下がっても市場価値や家賃は急激に下落しないため、キャッシュフローは維持されやすいのが特徴です。

一方、相続税評価は原則として固定資産税評価額を基に計算され、減価償却とは別の尺度で動きます。実は建物の相続税評価額は毎年じわじわと下がるものの、土地ほど大きく変動しません。そこで、建物部分の評価を抑えつつ、土地の貸家建付地評価も減額を受ける「二重の効果」が得られるわけです。

数字でイメージするとわかりやすいでしょう。例えば建築費1億2千万円、延床面積600㎡の鉄骨造マンションを賃貸に出した場合、完成時の相続税評価は建築費の60〜70%程度で、さらに賃貸割合や借入金控除を反映すると評価圧縮率は50%を切ることもあります。帳簿上は減価償却で年300万円程度の経費計上が続き、所得税・住民税の節税にも寄与します。

もっとも、過度な節税目的だと税務署から否認される恐れがあります。家賃が相場より著しく低い、入居実態がない、といったケースは不適切と判断されるため、賃貸経営としての合理性を持たせることが大前提です。

資金調達とキャッシュフロー管理の要点

ポイントは、融資条件と家賃収入のバランスをいかに設計するかです。2025年時点でメガバンクのアパートローン金利は変動型で年1.0〜1.5%が中心ですが、鉄骨造の場合は構造評価が高く0.1%ほど優遇される例もあります。返済期間は最長35年が一般的で、長期固定金利を選べば金利上昇リスクを抑えられます。

ただし建築費の回収には時間がかかるため、初年度から手残りを最大化しようとすると無理が生じます。家賃収入の20%程度を修繕積立として確保し、さらに年間家賃収入の1〜2ヶ月分を運営予備費としてプールする習慣が重要です。これにより、エレベーター更新や外壁塗装など高額修繕にも対応できます。

また、借入金は相続時に債務控除の対象となります。相続発生時に残債が6千万円あれば、その金額分だけ課税評価が差し引かれます。債務控除は現行の税制で明確に認められているため、借入を上手に活用することが“攻め”の相続対策になります。

家族内で共有持分を設定する場合、金融機関の同意が必要になる点にも注意しましょう。特に複数の相続人が関わる場合は、建物管理の意思決定とキャッシュフロー配分を事前に合意しておくことで、トラブルを未然に防げます。

2025年度税制と活用できる優遇策

まず、2025年度も継続している代表的な制度が「住宅取得等資金の非課税贈与特例」です。子や孫が住宅を取得する際、一定額まで贈与税が非課税になる制度で、賃貸併用住宅にも適用が可能です。今年度の非課税枠は省エネ基準クリア物件で1,000万円、一般住宅で500万円となっています。

さらに、登録免許税と不動産取得税には軽減措置があります。賃貸住宅でも要件を満たせば、登録免許税は「所有権保存0.15%」、不動産取得税は「課税標準から1,200万円控除」が受けられます。なお、固定資産税の新築減額は原則として賃貸用住宅にも適用され、建物部分の税額が3年間1/2となります。

一方でグリーン住宅ポイントなどすでに終了した制度を期待してコスト計算を組むのは禁物です。必ず2025年度の施行状況を確認し、施工会社や税理士と最新情報を共有しましょう。将来制度変更があっても柔軟に対応できるよう、収支計画は保守的にシミュレートしておくと安心です。

最後に、相続時精算課税制度も健在です。60歳以上の親から子へ、累計2,500万円まで贈与税を非課税で移転し、その後の相続時にまとめて精算する仕組みです。鉄骨造を建てる前に土地を子へ移転し、建物を子名義で建築するスキームでは、この制度が効果を発揮します。

失敗を避ける物件選びと運用管理

実は、鉄骨造でも立地選択を誤ると空室リスクが一気に高まります。総務省の住民基本台帳によれば、2025年時点で人口が増えているのは都心5区と政令指定都市の駅近エリアが中心です。学生や単身者向けの需要が継続しているエリアを選ぶことで、築年数が進んでも賃料下落を最小限に抑えられます。

施工会社の選定では、長期修繕計画書を提示できるかが判断材料になります。工事費を抑えても、10年後に想定外の改修費が発生すればキャッシュフローが崩れ、相続対策どころか資金繰りに追われかねません。施工保証の年数やアフターサービス体制も確認しておくと安心です。

さらに、建築後の管理会社選びも重要です。入居者募集力、家賃集金システム、修繕提案力の3点を比較することで、長期の収益力が大きく変わります。管理手数料だけで決めず、リーシング実績や空室期間の短さを重視しましょう。

相続開始後のトラブル防止として、遺言書や民事信託契約を活用する例が増えています。法定相続分と異なる配分を考える場合や、複数の子に賃貸経営を任せる場合は、専門家を交えて早めに仕組みを整えることが円満承継のカギとなります。

まとめ

鉄骨造 相続対策は、評価減・安定収益・長期耐用年数という三つの利点が同時に得られる実践的な手法です。減価償却と債務控除を活用すれば税負担を抑えつつキャッシュフローを守れますが、立地選びと資金計画の精度が成功を左右します。2025年度の税制優遇を最大限に利用し、家族で情報を共有しながら早めに行動を起こすことが、将来の安心につながる第一歩です。

参考文献・出典

  • 国税庁 – https://www.nta.go.jp/
  • 総務省 住民基本台帳人口移動報告 – https://www.soumu.go.jp/
  • 国土交通省 住宅市場動向調査 – https://www.mlit.go.jp/
  • 東京都都市整備局 住宅市場分析 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/
  • 日本銀行 金融システムレポート – https://www.boj.or.jp/

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