不動産の税金

耐久性を収益に変える!SRC造 家賃設定の実践ガイド

不動産投資を始めたばかりの方の多くが、「鉄筋コンクリート造(RC造)と鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は何が違うのか」「SRC造なら家賃を高めに設定できると聞くけれど根拠は?」と迷います。実際、初期費用が大きくなるSRC造は家賃設定を誤るとキャッシュフローが一気に悪化します。しかし、建物の特性を正しく理解し、需要データとコストを丁寧に分析すれば、長期安定収益を得ることは十分可能です。本記事では、SRC造の特徴から家賃設定の具体的手順、2025年度の制度活用までを体系的に解説します。読み終えた時、自信を持って賃料を決められる視点と数字の裏付けが手に入るはずです。

SRC造の基本と投資家に有利な点

SRC造の基本と投資家に有利な点のイメージ

まず押さえておきたいのは、SRC造が「鉄骨」と「鉄筋コンクリート」の長所を併せ持つ構造だという事実です。国土交通省の技術資料によると、SRC造は耐震性・耐火性がRC造より高く、耐用年数も60年以上に及ぶケースが一般的とされています。この耐用年数は、住宅ローン控除や減価償却期間にも影響し、長期保有戦略に適します。

耐用年数が長いということは、修繕周期が緩やかになり、キャッシュフローの安定度が向上する点も見逃せません。実際、2024年度の「民間住宅ストック実態調査」では、築30年時点での主要構造部補修費がRC造比で約15%低いという結果が報告されています。長い時間軸で見ると、SRC造は高めの初期投資を家賃で回収しやすい素地があるわけです。

ただし、耐用年数の長さは必ずしも高家賃を保証しません。居住者が評価するのは、耐震性能や遮音性などの“体感できる価値”であり、築年数だけで決まるわけではないからです。したがって、家賃設定には物件スペックの訴求ポイントと市場の受容限度を丁寧に整理する姿勢が欠かせません。

家賃設定の基本と市場調査の進め方

家賃設定の基本と市場調査の進め方のイメージ

重要なのは、家賃を決める時に「建物コストの回収額」ではなく「入居者が支払える額」から逆算することです。まず、物件が所在するエリアで過去一年の成約家賃を把握し、SRC造とRC造、木造の差異を洗い出します。国土交通省が公開する「不動産取引価格情報」や、不動産情報サイトの成約統計を組み合わせると精度が上がります。

次に、築年数別・専有面積別の平均成約賃料を折れ線グラフにすると、自分の物件がどのポジションにあるか俯瞰できます。例えば都心三区のワンルームでは、2025年上期の平均成約賃料がSRC造で月14.8万円、RC造で14.1万円、木造で13.2万円というデータが出ています。この差は「SRC造だから1割高くできる」という安易な結論ではなく、「耐震性や遮音性を評価する層には8,000円程度の上乗せが許容される」事実を示していると理解しましょう。

さらに、競合物件の空室期間も調べると、家賃弾力性の実態が見えます。平均空室期間が45日を超える場合、賃料が市場想定より高い可能性が高まります。SRC造でも60日以上空いているなら、共用部リニューアルやWi-Fi無料化など付加価値を足してから賃料を維持する手段を検討するべきです。

SRC造特有のコスト構造と家賃の関係

ポイントは、SRC造が投資家に“長期目線のキャッシュフロー”をもたらす一方、短期的には維持コストがRC造よりやや高い点です。定期点検や大規模修繕の周期が延びる分、一回あたりの工事費が大きくなる傾向にあります。日本建築学会の修繕費モデルでは、築30年時点の大規模修繕費が専有面積1㎡あたり約1万5,000円で、RC造の約1.2倍と試算されています。

言い換えると、家賃設定では「月額1,000円の上乗せが修繕積立に何年で充当できるか」を逆算する視点が不可欠です。仮に30㎡の住戸で月1,000円アップできれば、年間3万6,000円、築15年までに54万円が積み上がります。これが同面積の修繕費45万円をカバーすると分かれば、家賃設定に自信が持てるはずです。

また、SRC造は固定資産税評価額が高めに算定される傾向があります。2025年度税制では、耐震性向上や省エネ改修を行うと固定資産税が3年間半額になる措置が継続していますが、対象工事に該当しない限り税負担は重いままです。したがって、家賃に固定資産税・都市計画税の年間合計を転嫁するシミュレーションも忘れずに行いましょう。

家賃設定を成功させる実践ステップ

まず、物件周辺の賃料帯を把握したら、オンライン広告に掲載される前の新築・リノベ案件も含めて比較表を作ります。ここで役立つのが、不動産調査会社が提供する「予告物件レポート」です。競合の先行募集賃料が分かれば、募集開始時点で高すぎる設定を避けられます。

次に、ターゲット入居者のペルソナを描きます。例えば、駅徒歩5分のSRC造1LDKなら「30代前半の共働きカップル、月手取り合計50万円、賃料負担率25%」という想定を置くと、上限賃料は12万円〜13万円が道理に合います。家賃設定を「上限×0.9」にすると、募集開始から1カ月以内に申し込みが入る確率が高まり、空室コストを最小化できます。

さらに、家賃保証やサブリース契約を検討する場合は、保証料が実質賃料の5%前後削られる点を差し引きます。ここを忘れて市場賃料でシミュレーションすると、利回りが1ポイント以上ブレることも珍しくありません。

最後に、賃料改定のルールを購入時点で決めておきます。SRC造は築20年を過ぎても構造躯体が劣化しにくく、表面利回りの低下を緩やかに抑えられます。しかし、水回り設備や内装の陳腐化は免れないため、「築15年で表層リノベを実施し、家賃を5%戻す」という計画を先に盛り込むと、銀行の評価も得やすくなります。

2025年度の税制・インセンティブと収支最適化

実は、2025年度にはSRC造オーナーにとって追い風となる制度がいくつか続きます。まず、2023年から延長されている「グリーン住宅の省エネ改修減税」は、一定の断熱改修を行った場合に所得税の特別控除が受けられます。SRC造は壁厚があるため断熱性を高めやすく、補助対象になりやすい点がメリットです。

また、長期優良住宅化リフォーム推進事業(2025年度版)は、耐震性・省エネ性能向上を伴う大規模改修費のうち、最大250万円の補助を受けられます。SRC造は構造計算書が保存されているケースが多く、耐震性の証明がしやすいため申請通過率が高いとされています。補助金を原資に共用部のLED化や太陽光設置を行えば、ランニングコストが下がり、空室率低下に直結します。

さらに、東京都では2024年度から続く「賃貸住宅省エネ化促進事業」が2025年度も継続され、断熱改修や高効率給湯器導入に対する助成率が1/3に引き上げられました。SRC造の重厚な躯体は断熱材追加の自由度が高く、RC造以上に省エネ効果が数字に表れやすいです。助成によって年間光熱費を1住戸あたり2万円削減できれば、その分を家賃据え置きで競合よりコストパフォーマンスを高める戦略が取れます。

まとめ

結論として、SRC造 家賃設定の核心は「高い構造価値を数字と市場データで裏付ける」ことに尽きます。耐用年数の長さや耐震性能は確かに魅力ですが、それだけでは入居者が家賃を上乗せしてくれる保証にはなりません。市場調査で需要と競合賃料を把握し、修繕費や固定資産税を巻き込んだキャッシュフローを逆算することで、適正家賃が導き出せます。さらに、2025年度の省エネ改修補助や税制優遇を活用すれば、実質利回りを高めながら入居者満足度も向上できます。今日からは、築年数や構造だけに頼らず、データ・制度・リノベ戦略を組み合わせて、長期的に競争力のある賃料体系を構築していきましょう。

参考文献・出典

  • 国土交通省 不動産取引価格情報検索 – https://www.land.mlit.go.jp
  • 国土交通省 住宅・建築物の長寿命化に関する技術資料 – https://www.mlit.go.jp
  • 日本建築学会 修繕費モデル研究報告書 – https://www.aij.or.jp
  • 東京都 賃貸住宅省エネ化促進事業 公式サイト – https://www.metro.tokyo.lg.jp
  • こどもエコすまい支援事業 2025年度版ガイドライン – https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/jutakukentiku

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