札幌で収益物件を探す初心者の多くは、「本当に安定収入が得られるのか」と不安を抱えています。特に首都圏に比べて情報が限られ、雪国ならではの維持費や空室リスクも気になるところでしょう。本記事では、2025年12月時点の信頼できるデータをもとに、札幌市場の特徴、エリア選定、物件評価、融資・支援策、管理のコツまで体系的に解説します。読み終える頃には、自分に合った投資判断の軸を持てるはずです。
札幌で収益物件を探す前に知るべき市場動向

重要なのは、札幌が人口減少社会の中で例外的に緩やかな増加を続けている点です。総務省「住民基本台帳人口移動報告」によると、2024年の札幌市転入超過は約8,200人で、政令市トップクラスでした。この背景には、道内外からの進学・就職需要に加え、テレワーク普及による移住ニーズがあります。
一方で、札幌市は2025年春に地下鉄東豊線の延伸計画が具体化し、中心部へのアクセス改善が見込まれています。アクセス向上は賃料の底上げ要因になる反面、開発が進むエリアでは新築供給が増え、競合も激しくなります。つまり、人口増の数字だけでなく、新規供給量や交通計画を合わせて読む姿勢が欠かせません。
北海道新幹線の札幌延伸は2030年度予定ですが、すでに周辺地価には期待値が織り込まれています。日本不動産研究所の調査では、2024年から2025年にかけて札幌駅北口周辺の商業地が前年比7.1%上昇しました。過度な将来期待で高値掴みしないよう、家賃相場と利回りのバランスをチェックしておきましょう。
キャッシュフローを左右するエリア選定のポイント

まず押さえておきたいのは、札幌の賃貸需要は「中心部集中型」になりつつあることです。市営地下鉄南北線・東西線・東豊線の駅徒歩5分圏では、2025年10月時点の平均空室率が3%台と低水準で推移しています。一方、徒歩15分超の物件では7〜9%台まで跳ね上がるため、空室リスクはエリア格差が大きいと言えます。
次に雪害リスクを考慮したメンテナンス費です。豪雪地帯の札幌は除雪費が年間15〜30万円かかるケースもあります。地下鉄駅近は除雪範囲が行政管理道路に限定されるため、オーナー負担が軽く済む点がキャッシュフローに直結します。また、築古木造よりRC造(鉄筋コンクリート)のほうが断熱性能が高く、冬季の光熱費を抑えられるため入居者の継続率が高い傾向があります。
最後に学生需要の取り込みです。札幌駅北口の北海道大学をはじめ、市内には10を超える大学が点在します。2025年の北海道大学公表データでは留学生数が過去最高の2,400人を突破しました。国際寮不足が指摘される中、家具家電付きのワンルームは高い入居率を維持しています。こうした需要の源泉を把握したうえで、駅距離・構造・ターゲットを組み合わせると、安定したキャッシュフローが見込めます。
利回りだけに頼らない物件評価の考え方
実は札幌の表面利回りは全国平均より高めで、アットホーム調べでは2025年7月時点の区分マンション平均利回りが8.3%です。しかし、数字が高いほど運営コストも上がる傾向があります。投資判断では、表面利回りから経費率を差し引いた「実質利回り」を必ず計算しましょう。札幌の経費率は除雪・暖房設備のメンテ費を加味すると、おおむね25〜30%が目安です。
言い換えると、表面利回り10%の物件でも実質利回りは7%前後まで低下する場合があります。さらに修繕積立金や大規模改修費を積み立てていない築古アパートは、築25年で屋根防水やボイラー交換が必要になり、一度に100〜300万円かかることも珍しくありません。購入前に長期修繕計画の有無を確認し、キャッシュフロー表に10年分の修繕費を織り込むと、見かけ倒しの高利回りを回避できます。
また、短期譲渡税にも注意が必要です。不動産を5年以内で売却すると、譲渡益に対し約39%が課税されます。札幌中心部では地価上昇局面に乗じた転売益を狙う投資家もいますが、税金と仲介手数料を差し引くと手残りが大幅に減るケースがあります。長期保有か短期売却か、あらかじめ戦略を明確にしてから購入することが大切です。
2025年度の融資環境と活用できる支援策
ポイントは、全国的に融資審査が厳格化する中でも、札幌の収益物件には地方銀行や信用金庫が積極的に取り組んでいる点です。北海道銀行は2025年4月から、RC造一棟マンション向けの最長35年ローンを提供し、金利は変動1.2〜1.6%で推移しています。さらに、JAバンクは自己資金2割以上の個人投資家に対し、固定1.5%前後の長期融資を継続中です。
2025年度に実際に利用できる国の支援策としては、以下の軽減措置が挙げられます。
- 登録免許税の軽減措置(2026年3月31日取得分まで):住宅用区分マンション登記の税率が通常2.0%→1.5%
- 不動産取得税の軽減措置(同期限):新築住宅の課税標準が1,200万円控除
これらは居住用部分に適用されるため、区分マンション投資で特に有効です。また、国土交通省の「賃貸住宅省エネ改修促進事業2025」は、ZEH水準の断熱改修に対して上限150万円の補助が出るため、築古物件の価値向上にも役立ちます。
ただし、補助金は予算上限に達すると受付終了となるため、物件取得後すぐに申請準備を始める必要があります。金融機関によっては、省エネ改修計画を提出すると金利優遇を受けられるケースもあるので、事前に相談しておくと資金繰りがスムーズです。
毎月の運営を安定させる管理戦略
まず、雪国特有のトラブルを未然に防ぐ管理会社選びが不可欠です。札幌市内の管理会社は約350社ありますが、日本賃貸住宅管理協会の調査では、24時間駆け付けサービスを提供している会社の平均入居率が93.8%と高い傾向があります。入居者が夜間に暖房や水道凍結のトラブルに遭った場合、迅速な対応が退去抑制につながるからです。
次に、賃料設定の柔軟性です。REINS(不動産流通標準情報システム)のデータでは、札幌中心部のワンルーム平均募集期間は37日ですが、築20年以上で賃料を2,000円下げると平均24日まで短縮できると報告されています。長期空室による損失は月額家賃の値下げ幅を簡単に上回るため、機動的な価格調整がキャッシュフローを守ります。
最後に、原状回復と差別化リフォームの線引きが収益に直結します。壁紙を全面張り替える場合、1㎡あたり約1,200円が相場ですが、アクセントクロスを15%だけ入れても費用増は2〜3万円にとどまります。札幌の賃貸検索サイト「SMAPLA」の閲覧数分析によると、アクセントクロス付き物件は標準仕様比で検索ヒット率が約1.4倍に向上しました。小さな工夫で入居付けが早まるため、費用対効果を意識したリフォームが鍵となります。
まとめ
札幌 収益物件で安定した成果を上げるには、人口動態と交通計画を踏まえた市場分析、除雪費や修繕費を織り込んだ実質利回りの把握、そして地元金融機関と補助金を活用した資金計画が欠かせません。加えて、雪国特有の管理ノウハウを持つ会社と連携し、入居者満足度を高める施策を続けることが長期的なキャッシュフローを守ります。今後も新幹線開業をはじめとするインフラ整備が進む札幌で、データに基づいた判断と迅速な行動を心がけ、理想のポートフォリオを築いてください。
参考文献・出典
- 総務省統計局 住民基本台帳人口移動報告 2024年版 – https://www.stat.go.jp
- 日本不動産研究所 2025年地価動向調査 – https://www.rein.or.jp
- アットホーム 収益物件利回りデータ 2025年7月レポート – https://www.athome.co.jp
- 北海道銀行 プレスリリース 2025年4月 – https://www.hokkaidobank.co.jp
- 国土交通省 賃貸住宅省エネ改修促進事業2025 – https://www.mlit.go.jp