投資としてアパート経営に興味はあるものの、「自分に本当に向いているのか」と悩む方は少なくありません。失敗したくない気持ちは当然ですし、ローンや空室といったリスクが頭をよぎるでしょう。本記事では、向いている人の具体的な特徴から資金計画、物件選び、リスク対策までを基礎から丁寧に解説します。最後まで読むことで、自分がアパート経営に適性があるかを判断でき、次に取るべき行動が明確になります。
アパート経営が投資として注目される背景

まず押さえておきたいのは、なぜ今アパート経営が改めて注目されているかという点です。国土交通省住宅統計によれば、2025年10月の全国アパート空室率は21.2%で前年より0.3ポイント改善しました。つまり需給バランスが緩やかに改善しており、適切な立地と運営ができれば安定収入を得られる可能性が高いということです。
一方で株式や仮想通貨の値動きが激しい昨今、長期でインカムゲイン(家賃収入)を狙える不動産は分散投資として機関投資家からも支持されています。また、2025年度も新築賃貸住宅に対する固定資産税の軽減措置(1/2が3年間)が継続しており、キャッシュフロー改善に寄与します。こうした制度面の後押しも個人投資家の参入を促しているのが実情です。
加えて低金利環境は続いており、日本政策金融公庫のアパートローン金利は2025年12月時点で年1%台半ばが主流です。金利が1%上下するだけで30年返済総額は数百万円変わるため、今の水準を活用できるかどうかは大きな分かれ道となります。
重要なのは、空室率の数字だけで悲観も楽観もせず、自分が管理できる範囲のエリアと物件を選ぶことです。背景を理解したうえで、次のセクションでは「アパート経営 向いている人」の共通点を具体的に見ていきます。
向いている人の3つの共通点

実はアパート経営がうまくいく人には共通する行動特性があります。ポイントは「計画性」「コミュニケーション力」「継続学習」の三つです。ここでは各特性を身近な例で確認し、自分に当てはまるかを考えてみてください。
最初の計画性は、家賃収入と支出の見える化を続けられるかどうかで測れます。毎月の家計簿を付ける習慣がある人、または給与明細をエクセルで管理する人は、収支表やキャッシュフロー計算書を作成する際に抵抗がありません。逆に数字の入力を後回しにしがちなタイプは、管理会社や税理士との連携を早めに決める工夫が必要です。
次にコミュニケーション力ですが、これは入居者や管理会社と円滑にやり取りする能力を指します。たとえば賃貸借契約の更新案内を送る際、冷たい定型文だけではなく、郵送封筒に「いつもご入居ありがとうございます」と一言添えられる人は退去率を下げやすい傾向があります。言い換えると、対人ストレスを最小限にして関係を築ける人ほど空室期間が短くなるのです。
最後の継続学習は、税制改正や入居者ニーズの変化をキャッチアップし続ける姿勢を示します。2025年度の所得税法改正では、設備投資向けの即時償却要件が緩和され、一部の省エネ設備が対象になりました。こうした情報をセミナーや公的サイトで把握し、早期に導入できるかどうかが収益力に直結します。
数字に強くなくても身につけたい資金管理術
ポイントは、難しい計算より「シンプルな指標」を継続して追うことです。代表的なのが年間現金収支(税引き前)で、家賃総額からローン返済・管理費・固定資産税・修繕費を引いた金額を指します。ここがプラスであれば経営は大きく崩れません。
まず自己資金ですが、物件価格の20%を目安に用意できると融資条件が有利になります。例えば5000万円のアパートであれば1000万円を自己資金とし、諸費用300万円、緊急予備費200万円も合わせると余裕を持ったスタートが切れます。さらに家賃の3カ月分程度を運転資金として別口座に置いておくと、空室や修繕に慌てずに済みます。
一方、金利タイプの選択も資金管理に直結します。変動金利は低水準ですが、25年後に1.5%上昇しても返済が可能かというシミュレーションを必ず行いましょう。金融機関の担当者は返済比率を年収の30%以内に抑えるよう助言しますが、自分で保守的な試算を持つことが信頼につながります。
また家賃が年間2%下落するシナリオも組み込み、空室率は国交省統計の21.2%を上限に設定して計算すると現実的です。数字の苦手意識がある場合は、管理会社が提供する収支シートを毎月チェックし、疑問点をメールで確認するところから始めると無理なく習慣化できます。
物件選びで失敗しないためのチェックポイント
まず押さえておきたいのは「立地とターゲット入居者をセットで考える」姿勢です。駅徒歩10分以内で単身者向けならば周辺大学や工業団地の従業員数を、市郊外でファミリー向けなら近隣小学校の児童数推移を調べると空室リスクを定量的に把握できます。
立地が固まったら建物構造を比較します。木造は建築費を抑えやすい反面、修繕周期が早いという弱点があります。RC(鉄筋コンクリート)は初期費用が高いものの耐用年数が長く、減価償却費を計画的に計上できる魅力があります。どちらが良いかは融資期間と自己資金のバランスで判断しましょう。
さらに重要なのが利回りの罠を見抜く視点です。表面利回り10%超と聞くと魅力的ですが、固定資産税が高い工業地域や修繕履歴が未整備の旧耐震物件では実質利回りが半分になることもあります。仲介業者が提示する試算表には、必ず自らの数値を上書きして再計算するクセを付けると安全です。
最後に、将来的な出口戦略も同時に考えます。国税庁の路線価や近隣の成約事例を調べ、10年後にいくらで売却できそうかを把握すると、ローン残高との関係で売却益・損が試算できます。計画的な出口こそ、疲弊せずにアパート経営を続ける秘訣です。
賃貸経営を長く続けるためのリスク対策
重要なのは、リスクをゼロにするのではなく「許容範囲内に抑える」視点です。空室、家賃下落、修繕費、災害の四つを想定し、それぞれに対策を講じておくことでダメージを分散できます。
空室対策としては、募集開始を退去予告の翌日には行い、内装工事の見積もりを即時に取るスピード感が求められます。日本賃貸住宅管理協会の調査では、募集開始が遅れた物件は平均空室期間が1.4倍に伸びたというデータもあります。入居申し込みが入ったら即日審査に移るフローを管理会社と共有しておきましょう。
家賃下落リスクは周辺相場のモニタリングで抑えます。具体的には四半期に一度、ポータルサイトで同エリア・同築年の成約賃料を確認し、5%を超える差が出た段階でリフォームや家賃改定を検討します。早期に手を打つことで大幅な下落を回避できます。
修繕費と災害リスクは保険と積立で備えます。共用部の塗装や屋上防水は10〜15年周期でまとまった費用が必要になるため、家賃収入のうち毎月3%を修繕・災害用口座に振り分けると良いでしょう。さらに、火災保険に加え2025年度も継続適用されている「地震保険料控除」を生かし、コストを抑えながら補償を厚くしておくと安心です。
まとめ
ここまで「アパート経営 向いている人」の特徴と準備ステップを見てきました。計画性・コミュニケーション力・継続学習の三つを備え、資金管理と物件選びを数字で裏付ける姿勢があれば、空室率21.2%という現実を踏まえても十分戦えます。リスクは分散とスピード対応で小さくできますから、まずは自己資金と収支シミュレーションを作り、信頼できる金融機関と管理会社を探す行動から始めてみてください。学び続ける限り、アパート経営は長期的な資産形成の心強い味方になるはずです。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅統計調査 2025年10月速報値 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省統計局 住宅・土地統計調査 2025年版 – https://www.stat.go.jp
- 日本政策金融公庫 融資情報 2025年12月 – https://www.jfc.go.jp
- 財務省 租税特別措置法令等解説 2025年度 – https://www.mof.go.jp
- 日本賃貸住宅管理協会 賃貸住宅市場景況感調査 2025年10月 – https://www.jpm.jp