人口減少や金利上昇のニュースを聞くたびに、「これからアパート経営を始めても本当に利益が出るのだろうか」と不安になる方は多いはずです。しかし、実際に市場を細かく見ると、条件を満たした物件は依然として安定した収益を生み出しています。本記事では、立地選定こそが成功法の核である理由を丁寧に解説し、2025年9月時点のデータを用いて具体的な判断基準を示します。読み終えるころには、どのエリアに目を向け、どんな指標を見れば良いかが明確になるでしょう。
なぜ立地がアパート経営の命綱になるのか

重要なのは、家賃収入の大半を左右するのが入居者ニーズであり、その根幹が立地にある点を理解することです。国土交通省住宅統計によれば、2025年7月の全国アパート空室率は21.2%で前年より0.3ポイント改善しましたが、地方の一部では30%を超えるエリアも依然残っています。つまり、好立地を選べば平均より低い空室率を維持でき、逆を選べば想定以上の空室リスクを抱えることになります。立地選定は「いくらで買うか」よりも「いかに埋めるか」を先に考える工程だと認識してください。
まず押さえておきたいのは、都心と郊外でリスク構造が異なる点です。都心は物件価格こそ高いものの、転勤や進学による単身世帯の流動が多く、賃料下落が緩やかです。一方で郊外は初期投資を抑えられますが、人口減少スピードが加速する市町村では想定利回りが一気に崩れかねません。投資額だけでなく、維持管理コストや将来的な出口戦略まで視野に入れ、立地に割ける予算を検討することが成功への第一歩です。
エリア分析の基本と最新データの読み解き方

ポイントは、統計データと現場感覚を組み合わせて需要を数値化することです。総務省の住民基本台帳によると、2024年から2025年にかけて地方中核都市の20代人口は平均1.1%増加しましたが、郊外のベッドタウンでは逆に1.8%減少しています。この差を的確に把握するだけで、入居者ターゲットの姿が大きく変わります。
エリアを選定する際は、まず駅徒歩10分圏内の賃貸物件をインターネットで検索し、築20年以内・同規模のアパートに絞って平均募集賃料を算出します。そのうえで、同じ条件の成約賃料を地元不動産会社に確認し、乖離率が5%以内であれば市場は安定、10%以上なら家賃下落局面と判断できます。2025年現在、東京23区西部では乖離率が4%台にとどまる一方、北関東の一部では12%を超えるエリアが散見されるため、数字で見極める姿勢が欠かせません。
さらに、通勤通学のアクセスと生活インフラの充実度も評価軸になります。駅の乗降客数、バス本数、24時間営業のスーパーやドラッグストアの数は、国勢調査や自治体公開資料で確認可能です。これらの指標が揃えば短期の転勤族にも長期のファミリー層にも訴求でき、空室期間を最小化できるでしょう。
競合と需要を見極める現地調査の進め方
実は、統計データだけでは掴めない競合状況が現地には潜んでいます。週末を利用して候補エリアを歩き、募集看板の数と張り替え頻度に注目すると、供給過多かどうかが直感的に分かります。同時に、コンビニの陳列棚をチェックし、弁当や冷凍食品が充実していれば単身者需要が高いと判断でき、ベビーフードや紙おむつが多ければファミリー層が主要顧客だと推測できます。
加えて、夕方の時間帯に街灯の明るさや人通りを確認することも重要です。防犯面で不安が残る立地は女性の入居を取り込めず、長期的な空室リスクが高まります。2025年度の警察白書によると、街灯設置数と侵入窃盗発生率には逆相関があり、街灯が少ない通りは発生率が平均の1.7倍に達しています。こうした定性的情報を踏まえ、競合物件との差別化ポイントを具体化していきましょう。
最後に、地元の賃貸仲介会社でヒアリングを行い、「いま一番問い合わせが多い間取りは何か」「築年数はどこまで許容されるか」を確認してください。ヒアリングを3社以上で行えば、狭いサンプルでも傾向が浮かび上がり、リフォームや設備投資の優先順位が明確になります。
成功法を形にする物件選定と資金計画
まず、家賃収入を最大化するためには、想定利回りではなく実質利回りに基づいて物件を比較することが欠かせません。実質利回りとは、年間家賃収入から管理費・修繕費・税金など運営コストを差し引いた額を購入価格で割った指標です。2025年時点で金融機関が重視するのもこの実質利回りであり、6%前後を確保できれば融資姿勢は概ね前向きになります。
資金計画の作成では、自己資金を物件価格の25%まで投入できると返済比率が下がり、金利1.8%・融資期間25年の条件でもキャッシュフローが安定します。また、築20年以上のアパートを取得する際は、大規模修繕のタイミングが早く訪れるため、別途200万円程度の修繕積立を確保すると安心です。近年は耐震補強や断熱改修への需要が高く、入居者満足度を高める施策として効果を発揮します。
融資交渉では、都市銀行だけでなく、地元信用金庫やノンバンクを含めた3〜4行に事業計画を提示し、金利と融資期間の両面で条件を比較する姿勢が重要です。金利差が0.3%でも25年間で200万円以上の総返済額差になるケースは珍しくありません。さらに、2025年度の住宅ローン減税は賃貸目的には適用されませんが、個人名義で取得後に賃貸へ転用するケースでは適用可否が複雑になるため、税理士への確認を忘れないようにしてください。
リスク管理と長期保有戦略のコツ
ポイントは、短期的な利回りだけで判断せず、出口戦略までを含めた長期シミュレーションを作ることです。たとえば、空室率が平均並みの10%から15%に悪化し、金利が1%上昇したシナリオでも10年間の累積キャッシュフローがプラスであれば、予期せぬトラブルにも耐えられます。空室率や金利の変動幅は、国土交通省の過去20年平均を参考に設定すると現実的な数字になります。
また、物件の価値を維持するためには、5年ごとに入居者アンケートを実施し、設備更新の優先順位を可視化する方法が有効です。具体的には、Wi-Fi無料化や宅配ボックスの設置が若年層に響きやすく、ファミリー層には断熱性能の向上が支持されやすいといった傾向があります。実際に、2025年の賃貸住宅市場調査では、無料インターネット付き物件の成約スピードが平均1.4倍に向上したと報告されています。
最後に、定期的な資産組み換えも視野に入れましょう。築30年を超える物件は、修繕費が家賃収入を圧迫しやすくなるため、市場価格が大きく下がる前に売却し、築浅物件へ乗り換える戦略が奏功します。長期にわたってキャッシュフローを最大化するには、保有と売却のタイミングをデータで裏付ける姿勢が不可欠です。
まとめ
この記事では、アパート経営の成否を分ける立地選定の考え方から、データ分析、現地調査、資金計画、リスク管理までを一連の流れで解説しました。家賃は入居者需要が決め、その需要を左右するのが立地である点を忘れないでください。次の休日には候補エリアを歩き、数字と肌感覚をすり合わせる行動を起こしてみましょう。準備を重ねた先に、安定したキャッシュフローと資産拡大の未来がきっと待っています。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅統計調査(https://www.mlit.go.jp)
- 総務省 住民基本台帳に基づく人口動態調査(https://www.soumu.go.jp)
- 警察庁 2025年度版警察白書(https://www.npa.go.jp)
- 不動産流通推進センター 賃貸住宅市場調査2025(https://www.retpc.jp)
- 日本銀行 金融システムレポート2025年4月号(https://www.boj.or.jp)