不動産の税金

築古アパート利回り9%は本当?相場を検証

新築アパートの表面利回りが低下している今、「築古なら9%超を狙える」という話に心が動く投資家は少なくありません。手頃な価格で購入でき、毎月のキャッシュフローも良く見えるからです。しかし、その数字は本当に「手元に残るお金」を示しているのでしょうか。この記事では最新の市場データをもとに築古アパートの利回りを表面と実質の両面から検証し、見落としがちなリスクや融資の実情、成功に近づくための戦略までお伝えします。

そもそも「築古」とは何年からを指すのか

不動産投資において「築古」という言葉は頻繁に使われますが、明確な定義があるわけではありません。業界では一般的に築20年以上を築古と呼ぶことが多いものの、実務上は木造で築30年、RC造であれば築40年を超えても売買が成立しています。税法上の法定耐用年数は木造22年、RC造47年と定められていますが、これは減価償却を計算するための期間であり、建物が使えなくなる年数ではありません。適切な修繕が施されていれば、法定耐用年数を超えても十分に賃貸運営が可能です。

ここで押さえておきたいのが中古物件の税務上の耐用年数です。国税庁によると、法定耐用年数の全部を経過した中古建物は「法定耐用年数の20%」に相当する年数、一部を経過した場合は「残存年数に経過年数の20%を加えた年数」で計算する簡便法が認められています。たとえば築22年を超えた木造なら4年程度の短い耐用年数となり、その分だけ減価償却を大きく取れる可能性があります。これは築古投資の隠れたメリットの一つといえるでしょう。

一方で法的な制約にも注意が必要です。国土交通省は、昭和56年(1981年)以前に建築された「旧耐震基準」の建物について、耐震性が不十分なものが多く存在すると説明しています。旧耐震物件は金融機関によって融資期間が短縮されたり、出口での売却が難しくなったりすることがあります。築古を検討する際は建築時期を必ず確認し、耐震性の問題がないかを見極めることが大切です。

築古アパートの利回りを最新データで検証する

築古物件が「儲かる」と言われる最大の根拠は利回りの高さにあります。しかし「9%」という数字だけが独り歩きしがちなので、まずは実際の市場データから相場観を掴んでおきましょう。

「築古ならどこでも9%」ではない

まず重要なのは、利回りはエリアによって大きく異なるという事実です。一棟アパートの平均表面利回りは、都市の中核に近づくほど低下する傾向があります。都市部では全国平均よりも低い水準となり、東京23区ではさらに低下します。築20年以上に絞っても、地域によって利回りに大きな差が生じます。つまり「築古だからどこでも9%」というわけではありません。

もっとも、築古9%台という数字自体が幻というわけでもありません。市場全体では確かに存在する水準です。ただし、その高利回りが地方の築古物件に偏っている点には注意が必要です。地域別に見ると、高利回りと築古化がセットになっている傾向があります。数字の高さだけで判断せず、修繕負担や流動性まで含めて考える必要があります。

表面利回りと実質利回りの違い

利回りには「表面利回り」と「実質利回り」の2種類があり、意味を正しく理解しておく必要があります。表面利回りは年間家賃収入を購入価格で割っただけの数値で、管理費や修繕費、税金などの経費は一切含まれていません。一方の実質利回りは、家賃収入から管理費や固定資産税、原状回復費などの経費を差し引いた純収益を購入価格で割った数値です。手元に残るお金に近いのは、当然ながら実質利回りのほうです。

専門家の指摘によれば、相場より著しく高い利回り、たとえば都内で10%、地方で15%以上といった物件には必ず背景や理由が存在します。空室が慢性化している、大規模修繕が近い、立地が悪い、融資が付きにくいといった要因が価格を押し下げ、見かけの利回りを高くしているケースが多いのです。表面利回り9%の物件でも、経費や空室を織り込むと実質では6〜7%程度に落ち着くことは珍しくありません。必ず実質利回りベースで収支をシミュレーションしてから判断してください。

築古投資で見落としがちな3つのリスク

利回りの高さだけに目を奪われると、築古特有のリスクを見落としてしまいます。ここでは特に注意すべき3つのリスクを解説します。

大規模修繕費用の突発的な発生

築古物件には修繕リスクがつきものです。屋根や外壁の塗り替え、給排水管の更新、エアコンや給湯器の交換など、築30年を超えると設備の寿命が次々と訪れます。木造アパートの場合、屋根と外壁の塗装だけでまとまった費用がかかり、給排水管の全面更新となればさらに大きな出費になることも珍しくありません。こうした費用を想定せずに購入すると、高い利回りが一気に相殺され、数年以内に赤字転落するリスクがあります。

対策として有効なのが購入前のインスペクション(建物診断)です。専門家が建物の状態を調査し、残存使用年数や修繕の優先度を報告してくれます。費用はかかりますが、購入後に想定外の出費で後悔することを考えれば安い投資といえます。診断結果をもとに向こう数年分の修繕費を見積もり、収支計画に織り込んでから購入を判断しましょう。表面利回り9%が実質何%残るのかは、この修繕見積もり次第で大きく変わります。

空室リスクと立地の重要性

築古物件は「家賃を下げれば入居が決まる」と思われがちですが、実際にはそう単純ではありません。人口が減少しているエリアでは、いくら家賃を下げても空室が埋まらないことがあります。逆に駅から徒歩10分以内や大学・病院の近くといった好立地であれば、築古でも高い入居率を維持できます。前述の地方高利回り物件が魅力的に見えても、流動性や賃貸需要まで確認しないと危険なのはこのためです。

重要なのは購入前にエリアの人口動態と競合物件を調査することです。自治体が公表している人口推計や、ポータルサイトでの競合物件の募集状況を確認してください。三大都市圏では単身世帯が増加しており、単身向けの築古物件の需要は底堅い傾向があります。一方で郊外では空室率が高止まりする地域もあります。立地選びを誤ると利回りどころか元本すら回収できなくなるため、慎重な調査が欠かせません。

融資条件の厳格化

築古物件は融資を受けにくいという現実があります。とくに木造は法定耐用年数22年を超えると、融資期間が「耐用年数−経過年数」で制限されることが多く、築30年ともなれば長期融資が組みにくくなります。融資期間が短くなると毎月の返済額が増え、せっかくの高利回りがキャッシュフローに反映されにくくなるのです。旧耐震物件であれば、この傾向はさらに強まります。

ただし金融機関ごとに姿勢は大きく異なり、築古でも収益還元評価によって融資が通るケースは増えています。次の章で主要な金融機関の実情を見ていきましょう。

築古アパートの融資はどこで受けられるか

築古投資では、どの金融機関を選ぶかが成否を分けます。物件の築年数や自分の属性に合った融資先を見極めることが重要です。

民間金融機関の融資条件を比較する

民間の金融機関には、それぞれ得意とする物件タイプがあります。オリックス銀行の公式情報によると、不動産投資ローンは借入額2,000万円以上2億円以下、保証料不要で団体信用生命保険つき、借入期間は最長35年・完済時85歳未満とされています。金利は2026年7月1日時点で変動金利型が年2.425%〜4.425%です。属性が良ければフルローンに近い融資が組める傾向もあり、資金効率を重視する投資家に選ばれています。

借換えも視野に入れるなら、SBJ銀行のANY住宅ローンも選択肢になります。公式の商品概要説明書によると、賃貸用不動産の購入・建築・借換資金を対象とし、借入額100万円〜2億円、売買金額の90%以内、期間3年〜35年の変動金利で提供されています。ただし事務取扱手数料が融資金額の2.200%、繰上返済手数料が2.000%かかり、賃料入金口座を同行に指定する必要がある点は事前に理解しておきましょう。

築古や狭小物件で銀行の審査が通りにくい場合は、セゾンファンデックスのようなノンバンクが受け皿になります。公式情報によると、融資金額は500万円〜5億円、金利は団信なしで4.4%〜5.2%、団信ありで4.9%〜5.8%、返済期間は5年〜30年です。同社は築古・狭小物件・借地権付き建物も相談可能とし、共同担保があればフルローンに対応できる場合もあると明示しています。金利は銀行より高めですが、銀行で断られた物件を検討する際の有力な選択肢です。りそな銀行のアパート・マンションローンも最高5億円・最長35年で、変動金利型または固定金利選択型を選べます。

公庫はアパート経営に使えるのか

ここで注意したいのが日本政策金融公庫の扱いです。かつては築古投資の定番融資先と紹介されることもありましたが、公式FAQを確認すると実態は異なります。公庫の中小企業事業では、投資(投機)目的の不動産取得資金も、アパート・マンション経営のための資金も対象外と明記されています。事業用資金のみが対象なのです。

一方、国民生活事業には一定要件を満たす不動産賃貸業が対象になる制度もあります。一般貸付の融資限度額は4,800万円、設備資金の返済期間は10年以内が目安です。公庫を検討する場合は、自分の事業が対象になるかどうかを事前に窓口で確認することが欠かせません。「公庫なら誰でも築古アパートを買える」という理解は正確ではない点に注意してください。

利回りを維持・向上させるリノベーション戦略

築古物件の魅力を最大限に引き出す方法の一つがリノベーションです。古い間取りや設備を刷新することで、家賃アップと空室対策を同時に実現できます。

リノベーションで最も重要なのは「かけた費用を何年で回収できるか」という視点です。たとえば古い2Kの間取りを1LDKに変更し、家賃を月2万円アップできたとします。リノベ費用が200万円であれば、回収期間は約8年4か月です。この回収期間が10年以内であれば投資として合理的と判断できます。逆に費用をかけすぎると回収期間が15年、20年と長引き、その間に別の修繕が必要になるリスクもあります。

成功のコツは、見栄えの良いデザインに凝りすぎず、家賃アップに直結する水回りや内装のリフォームに絞ることです。補助金制度を活用できる場合もありますが、制度の内容や予算枠は年度によって変わるため、最新情報は国土交通省や各自治体の公式サイトで必ず確認してください。管理会社やリフォーム業者が申請をサポートしてくれることも多いので、購入前から相談しておくと安心です。

融資と資金計画を成功させるポイント

築古投資では、融資条件と自己資金の設計が長期の安定を左右します。無理な借入をすると金利上昇局面でキャッシュフローが一気に悪化するため、慎重な計画が求められます。

自己資金は物件価格の20%程度を目安にしてください。これに諸費用を加えると、総額のおよそ3割を自己資金として用意することになります。フルローンに近い融資が組める金融機関もありますが、返済負担を軽くし空室や修繕に耐えられる体制を作るには、一定の頭金があるほうが安全です。実際、オリックス銀行の実務系情報では、LTV100%の一例として「年収1,000万円以上かつ金融資産1,500万円以上、借入なし」といった高い属性が示されており、フルローンは誰でも組めるものではありません。

さらに重要なのが「余裕枠」の確保です。突発的な修繕や空室期間に備えて、年間家賃収入の一部を修繕積立に回し、手元には家賃6か月分程度のキャッシュを確保しておくと安心です。想定外の出費が発生しても慌てずに対応でき、長期的な安定運営につながります。金利については、変動で借りる場合、金利が1%上昇しても返済を続けられるかを必ずシミュレーションしておきましょう。最新の金利動向は各金融機関の公式サイトで確認するのが確実です。

出口戦略を見据えたエリア選定

築古投資で利益を確定させるには、購入時点から「どのように売却するか」という出口戦略を描いておく必要があります。出口を意識することで、購入すべきエリアや物件の条件も明確になります。

購入前には必ず自治体の人口推計や将来予測を確認し、10年後、20年後の賃貸需要を見通すことが大切です。三大都市圏では単身世帯が増加を続けているため単身向け物件の需要は底堅い一方、人口減少が顕著なエリアでは、いくら利回りが高くても出口で買い手がつかないリスクがあります。旧耐震物件は買い手の融資が付きにくく、売却先が限られることも念頭に置いておきましょう。

出口の方針には大きく2つのパターンがあります。1つ目は長期保有型で、家賃収入を積み上げながら建物価値がゼロに近づいた時点で土地値で売却する方法です。収益を十分に回収してから売るため、売却価格が低くても損失が出にくいのがメリットです。2つ目は早期売却型で、リノベーションで物件の魅力を高め、利回りを下げた状態で売却してキャピタルゲインを狙う方法です。たとえば表面利回り10%で購入した物件を利回り7%で売却できれば、物件価格は理論上およそ1.4倍になります。ただしリノベ費用と売却時期の見極めが難しく、経験が求められます。

売却時には譲渡所得税も考慮する必要があります。所有期間や税率の詳細は個別事情によって異なるため、最新の制度は国税庁の公式サイトで確認するか、税理士に相談することをおすすめします。取得価格が低い築古物件は売却益が出やすい傾向があるため、税負担を織り込んだ手取りベースで計画を立てることが大切です。

まとめ:築古アパート投資で成功するために

築古アパートは取得価格が低く、市場データ上も全国平均で9%台の表面利回りが存在する魅力的な投資対象です。しかし一都三県や東京23区では7%前後まで下がり、地方の高利回り物件は築古化と流動性リスクを抱えています。表面利回りだけを見て飛びつくと、修繕費用や空室、融資条件の厳しさに足元をすくわれかねません。

成功への第一歩は、実質利回りで収支を検証し、インスペクションで建物状態を把握し、立地を慎重に選ぶことです。融資については、オリックス銀行やSBJ銀行、セゾンファンデックスなど、物件と属性に合った先を複数比較しましょう。公庫がアパート経営に使えるとは限らない点にも注意が必要です。自己資金は3割程度を目安に用意し、家賃6か月分の余裕資金を確保しておくと安心です。

制度や金利、税率は時期によって変わります。本記事で触れた融資条件や利回りデータも参考値であり、実際の判断にあたっては各金融機関や国税庁、国土交通省などの公式サイトで最新情報を確認してください。準備と計画次第で、築古アパート投資は十分に成果を出せる手法です。自分の資金力とリスク許容度に合った一歩を、慎重に踏み出してみてください。

参考文献・出典

  • 国税庁 No.5404 中古資産の耐用年数 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5404.htm
  • 国土交通省 住宅・建築物の耐震化について – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr_000043.html
  • 日本政策金融公庫 中小企業の方(中小企業事業)FAQ – https://www.jfc.go.jp/n/faq/a300.html
  • 日本政策金融公庫 融資制度一覧 – https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/index_k_02.html
  • オリックス銀行 不動産投資ローン – https://www.orixbank.co.jp/personal/property/
  • SBJ銀行 ANY住宅ローン 商品概要説明書 – https://www.sbjbank.co.jp/
  • セゾンファンデックス 不動産投資ローン – https://www.fundex.co.jp/personal/investment/
  • りそな銀行 アパート・マンションローン – https://www.resonabank.co.jp/kojin/apaman/

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