不動産の税金

東京で相続税評価を下げる不動産活用術

東京都内では相続税の申告割合が約15%に達しており、全国平均を大きく上回っています。令和7年分の路線価は東京都で前年比8.1%上昇し、2025年の公示地価も住宅地で5.7%、商業地で10.4%の伸びを記録しました。こうした地価の上昇傾向が続く中、何も対策を講じなければ相続税評価額は年々膨らみ、納税負担が想定以上に重くなる恐れがあります。

本記事では、不動産を活用して相続税評価を下げる方法を中心に、2025年12月時点の制度に基づいて解説します。具体的な計算式やシミュレーション事例を交えながら、節税効果だけでなく空室リスクや流動性の低さといった落とし穴についても詳しく取り上げます。初心者の方でも理解しやすいよう、基本から順を追って整理していきますので、ぜひ最後までお読みください。

相続税評価の基礎知識を押さえる

相続税評価の基礎知識を押さえる

相続税の計算において、財産の評価方法を正しく理解することは欠かせません。土地の評価には主に「路線価方式」と「倍率方式」の二つがあり、どちらを適用するかは地域によって異なります。路線価方式は国税庁が毎年公表する路線価に基づいて評価する方法で、都市部の宅地に多く適用されます。一方、倍率方式は固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて計算するもので、路線価が設定されていない地域で用いられます。

建物については固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となるのが原則です。固定資産税評価額は建築費の50〜60%程度になることが多いため、現金で保有するよりも建物に変えた方が評価額を圧縮しやすいという特徴があります。つまり、現金1億円をそのまま相続すれば1億円として課税されますが、同額で建物を建てれば評価額は5,000万〜6,000万円程度に下がる可能性があるわけです。

ただし、評価額が下がるからといって安易に不動産を購入するのは危険です。土地や建物は売却しにくく、いざ納税資金が必要になったときにすぐ現金化できないリスクがあります。また、賃貸物件であれば空室が発生すると収益が減少し、ローン返済が苦しくなる事態も想定しなければなりません。評価減のメリットとリスクを天秤にかけながら、慎重に判断することが求められます。

貸家建付地の評価計算で節税効果を可視化する

貸家建付地の評価計算で節税効果を可視化する

不動産を活用した相続対策の中でも特に効果が大きいのが「貸家建付地」の活用です。貸家建付地とは、自分が所有する土地の上に賃貸用の建物を建てて第三者に貸している状態の土地を指します。この場合、土地の評価額は以下の計算式で求められます。

貸家建付地の評価額=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

借地権割合は地域ごとに異なり、東京都心部では60〜70%に設定されていることが多いです。借家権割合は全国一律で30%、賃貸割合は相続開始時点で実際に貸し出されている床面積の割合を表します。仮に自用地評価額が1億円、借地権割合70%、借家権割合30%、賃貸割合100%の場合、貸家建付地の評価額は7,900万円となり、2,100万円の評価減が実現します。

さらに、建物部分も「貸家」として評価されるため、固定資産税評価額から借家権割合30%を差し引くことができます。建物の固定資産税評価額が5,000万円であれば、貸家としての評価額は3,500万円になります。土地と建物を合わせて考えると、現金1億5,000万円で賃貸マンションを建てた場合、相続税評価額は1億1,400万円程度に圧縮できる計算です。

ただし、ここで注意すべきなのは賃貸割合の要件です。空室があると賃貸割合が下がり、評価減の効果も薄れてしまいます。相続開始直前に駆け込みで入居者を募集しても、一時的な入居と判断されれば賃貸割合に含められない場合があります。安定した賃貸経営を継続していることが、評価減を受けるための大前提となるのです。

シミュレーション事例で効果を比較する

ここで具体的なシミュレーションを見てみましょう。相続財産が現金1億円の場合と、同額で東京23区内に賃貸マンションを購入した場合を比較します。現金1億円をそのまま相続すると、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を差し引いた残額に対して相続税が課されます。法定相続人が配偶者と子ども1人の2人だった場合、基礎控除は4,200万円となり、課税対象は5,800万円です。この金額に対する相続税額は約770万円となります。

一方、現金1億円で賃貸マンションを購入した場合を考えます。土地の路線価評価額が6,000万円、建物の固定資産税評価額が3,000万円だったとしましょう。土地を貸家建付地として評価すると、借地権割合70%・借家権割合30%・賃貸割合100%の条件で4,740万円に下がります。建物も貸家として評価すれば2,100万円となり、合計の相続税評価額は6,840万円です。基礎控除4,200万円を差し引くと課税対象は2,640万円となり、相続税額は約264万円まで圧縮されます。

このように、不動産を活用することで相続税を約500万円以上軽減できる可能性があります。ただし、これはあくまで評価額だけを見た計算です。賃貸マンションの購入には諸費用がかかりますし、空室期間が長引けば家賃収入が減少します。また、将来的に物件を売却しようとしても、買い手が見つかるまで時間がかかることもあります。節税効果と経営リスクの両面を考慮したうえで判断することが重要です。

小規模宅地等の特例を最大限活用する

相続税評価を下げるうえで見逃せないのが「小規模宅地等の特例」です。この特例は、被相続人が居住していた土地や事業に使っていた土地について、一定の面積まで評価額を大幅に減額できる制度です。特定居住用宅地等の場合、330平方メートルまでの部分について80%の減額が認められます。仮に路線価評価額が5,000万円の自宅敷地であれば、特例適用後の評価額は1,000万円となり、4,000万円もの評価減が実現します。

ただし、この特例を受けるためにはいくつかの要件を満たす必要があります。配偶者が取得する場合は無条件で適用されますが、子どもが取得する場合は同居要件や家なき子要件などの条件が課されます。二世帯住宅については、構造上の区分がなく内部で行き来できる場合は同居とみなされますが、完全に分離された別棟の場合は適用外となる可能性があります。

貸付事業用宅地等についても特例の対象となりますが、減額割合は50%にとどまり、面積上限も200平方メートルまでです。さらに、相続開始前3年以内に新たに貸付事業を始めた土地は原則として対象外となるため、駆け込みでの賃貸物件購入は注意が必要です。特例の適用を受けるためには、相続発生の数年前から計画的に準備を進めておくことが求められます。

物件別の戦略で効果的な対策を組み立てる

相続対策に適した不動産は一様ではなく、物件の種類や活用方法によって効果が異なります。たとえば、賃貸併用住宅は自宅部分と賃貸部分を一つの建物に組み合わせたもので、自宅部分には小規模宅地等の特例(80%減額)、賃貸部分には貸家建付地の評価減が適用されます。うまく設計すれば、両方のメリットを同時に享受できるのです。

また、広い土地を所有している場合は分筆という選択肢も検討に値します。分筆とは一つの土地を複数に分けて登記することで、相続時に各相続人へ明確に分配しやすくなります。分筆後の土地それぞれに小規模宅地等の特例を適用できるケースもあり、結果的に評価減の効果を高められる可能性があります。

一方、築古物件を保有している場合は売却も視野に入れるべきです。建物の固定資産税評価額は築年数とともに下がりますが、維持管理費や修繕費は増加します。空室リスクも高まるため、収支が悪化する前に売却して現金化し、より収益性の高い物件への買い替えを検討することも有効な戦略です。売却シミュレーションを行い、譲渡所得税を差し引いた手残り額と保有し続けた場合の収支を比較してから判断しましょう。

リスクと回避策を把握しておく

不動産を活用した相続対策には節税効果がある反面、いくつかのリスクが伴います。まず挙げられるのが空室リスクです。賃貸物件は入居者がいなければ家賃収入を得られず、ローン返済や固定資産税の支払いが重くのしかかります。空室率が15%を超えると収支がマイナスに転じる物件も珍しくありません。購入前には周辺の人口動態や競合物件の状況を調査し、空室率を高めに見積もった収支シミュレーションを行うことが大切です。

次に、流動性の低さも見逃せません。不動産は売却までに数か月から半年以上かかることがあり、相続税の納付期限(相続開始から10か月以内)に間に合わない恐れがあります。納税資金を不動産売却で賄おうとすると、希望価格より安く売却せざるを得ない状況に追い込まれることもあります。現金や換金しやすい金融資産とのバランスを考慮して、資産構成を設計しましょう。

税制改正リスクも念頭に置いておく必要があります。贈与税と相続税の一体化が議論されており、将来的に暦年贈与の基礎控除が縮小される可能性も指摘されています。現行制度を前提に立てた計画が、数年後には効果を失うこともあり得るのです。専門家と定期的に情報を共有し、制度変更に柔軟に対応できる体制を整えておきましょう。

専門家チームで対策を実行に移す

相続対策を成功させるためには、税理士・司法書士・不動産会社といった専門家の連携が欠かせません。税理士は相続税の試算や節税プランの設計を担い、司法書士は不動産の名義変更や家族信託の契約書作成をサポートします。不動産会社は物件の選定や売却、賃貸管理のアドバイスを行います。それぞれの専門知識を組み合わせることで、抜け漏れのない対策を構築できます。

対策の第一歩は財産目録の作成です。土地・建物・預貯金・有価証券・生命保険など、すべての財産をリストアップし、それぞれの評価額と負債額を一覧化します。この作業を通じて、名義が古いままの土地や隠れた負債が見つかることもあります。現状を正確に把握することで、どこに手を打つべきかが明確になります。

計画は3年ごとに見直すことをおすすめします。税制改正は毎年行われますし、家族の状況も変化します。子どもが独立したり、被相続人の健康状態が変わったりすれば、最適な対策も変わってきます。定期的な点検を習慣化することで、急な法改正や予期せぬ事態にも柔軟に対応できるようになります。

そして何より重要なのは、家族全員で情報を共有することです。相続の話題はデリケートですが、曖昧にしたまま先送りにすると、いざというときにトラブルが起きやすくなります。財産状況や対策方針を家族会議で共有し、全員が納得したうえで進めることが、いわゆる「争族」を防ぐ最善策となります。

まとめ

東京都内では地価と路線価の上昇が続いており、相続税評価額は放置すれば膨らむ一方です。不動産を活用した対策は評価額を下げる有効な手段ですが、空室リスクや流動性の低さを十分に考慮しなければなりません。貸家建付地の計算式や小規模宅地等の特例の要件を正しく理解し、シミュレーションで効果を可視化することが大切です。

物件の選定から購入、運用、そして将来の売却まで、長期的な視点で計画を立てましょう。税理士や司法書士、不動産会社と連携し、3年ごとに対策を見直すことで、税制改正にも柔軟に対応できます。家族と情報を共有しながら、今日から一歩ずつ準備を進めていくことが、安心できる相続への近道です。

参考文献・出典

  • 国税庁「相続税法基本通達」 – https://www.nta.go.jp
  • 国税庁「令和7年分路線価」 – https://www.nta.go.jp
  • 国土交通省「令和7年地価公示」 – https://www.mlit.go.jp
  • 東京都主税局「相続税の申告状況」 – https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp
  • 総務省統計局「国勢調査」 – https://www.stat.go.jp

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