突然の空室や修繕費の高騰を想像すると、不動産投資は怖いと感じる人が多いはずです。実際、物件を買ったものの家賃が下がり、ローン返済が重荷になるケースは珍しくありません。しかし、主要なリスクと対策を事前に押さえれば、安定した家賃収入を得ながら資産形成を進めることは十分可能です。本記事では「不動産投資 注意点」をキーワードに、立地選びから資金計画、2025年の税制までを体系的に解説します。読み終えた頃には、初めての物件購入へ踏み出すための判断軸が整理できているでしょう。
不動産投資を始める前に知るべきリスク

重要なのは、収益と支出の変動幅を具体的にイメージすることです。家賃は契約期間中でも下落する場合があり、長期的には建物の劣化によって修繕費が増加します。また、金利が上昇すると返済額も膨らみます。日本銀行の統計によれば、2025年6月の住宅ローン変動金利は平均0.63%ですが、2013年と比較すると0.2ポイント上昇している点に注目してください。
まず空室リスクを考えます。国土交通省の「賃貸住宅市場景況調査」では、都市中心部でも平均空室期間は1.8か月です。けれど郊外になると3か月を超えるエリアもあり、キャッシュフローへの影響が大きくなります。空室期間が延びてもローン返済は止まらないため、手元資金の厚みが重要になります。
次に修繕リスクです。築20年を過ぎると、外壁防水や設備交換で一度に100万円単位の出費が発生します。家賃収入の10%程度を毎月積み立てる「修繕積立口座」を作ると、急な出費にも慌てずに対応できます。つまり収入の最大化より、支出の平準化を意識する姿勢が長期安定経営には不可欠です。
物件選びで押さえたい立地と需給

ポイントは、長期にわたり「住みたい人」が減らないエリアを選ぶことに尽きます。人口動態と交通利便性を合わせて確認すれば、将来の賃貸需要をかなりの精度で推測できます。総務省の「住民基本台帳人口移動報告」によると、2024年から2025年にかけて都心5区の転入超過は3.2万人で横ばいでしたが、郊外ベッドタウンの一部では転出超過が拡大しています。
まず駅徒歩10分以内という基準は依然として強力です。国交省の調査でも、駅距離が徒歩15分を超えると平均家賃が約8%下落しています。加えて生活利便施設、具体的にはスーパーや小学校までの距離が1km以内かを確認しましょう。ファミリー層をターゲットにする場合、この2条件が揃えば定着率が高まり、長期入居が期待できます。
一方、築浅・高家賃のワンルームは競合が増えやすく、賃料改定の際に下落幅が大きくなりがちです。築20年前後のファミリータイプを割安で仕入れ、リノベーションで付加価値をつける戦略も検討に値します。つまり立地と築年数のバランスをとりながら、将来の空室リスクを抑えることが成功の鍵となります。
資金計画と融資の落とし穴
まず押さえておきたいのは、自己資金割合が低いほど返済総額が増えるという単純な事実です。仮に3,000万円の物件を金利1.5%、期間30年でフルローンを組むと総返済額は約3,720万円です。しかし物件価格の20%を自己資金で入れれば、返済総額は約3,228万円まで圧縮できます。つまり600万円の自己資金が約500万円の利息削減につながる計算です。
また、2025年時点で投資用ローンは変動金利が主流ですが、日銀が金融正常化を示唆しており将来的な金利上昇リスクは無視できません。返済比率(年間返済額÷家賃収入)は35%以内に収め、金利が1%上昇しても45%を超えないか試算しておくと安心です。
諸費用にも注意が必要です。仲介手数料、登記費用、火災保険のほか、取得時には不動産取得税がかかります。東京都の場合、評価額2,500万円の住宅用地付き建物なら約70万円です。これらを含めた「総投資額」で利回りを計算しないと、実際の収益が机上の計算と乖離します。
法律・税制の最新ポイント
実は、法改正や制度変更を見落とすと、収支が大きく狂うことがあります。2025年度の固定資産税評価替えでは、耐震基準適合済み中古マンションの評価額が平均5%上昇しました。評価額上昇は税負担増に直結するため、購入前に自治体の資産税課で最新評価額を確認しておきましょう。
減価償却の耐用年数も見直されています。木造は22年から24年に延長され、築古戸建てを購入して短期間で償却を取り切る節税手法のメリットが薄れています。国税庁の「令和7年版耐用年数表」を参照し、計画的な節税策を練る必要があります。
補助金については、賃貸住宅の省エネ化を支援する「2025年度 既存賃貸住宅省エネ改修支援事業」が注目されています。登録された断熱材や高効率給湯器を導入すれば、最大120万円の補助が受け取れますが、募集枠には上限があり申請は先着順です。投資判断の前に、自治体窓口で受付状況を確認するようにしてください。
なお、有名な住宅ローン減税は居住用が対象であり、投資用物件には適用されません。こうした適用範囲の違いを踏まえ、節税目的での制度利用は無理をしないことが賢明です。
管理と出口戦略で利益を守る
まず、賃貸管理会社の選定が長期収益を大きく左右します。管理手数料は家賃の5%前後が相場ですが、入居者対応の質やリフォーム提案力は会社ごとに差があります。入居者アンケートを公開している管理会社も増えているので、成約率や平均入居期間を比較して選びましょう。
次にリフォーム計画です。築15年を過ぎると水回り設備の不具合が増えますが、全面交換ではなく部分補修で延命できるケースもあります。日本建築学会の報告では、ユニットバスの平均耐用年数は20〜25年ですが、換気扇や水栓金具は10年で交換するだけでもカビ発生率が約30%下がるとされています。段階的な設備更新で費用を平準化するとキャッシュフローが安定します。
最後に出口戦略です。将来売却益を狙うのか、家賃収入を長く受け取るのかで、購入時の選択基準は変わります。例えば、駅近の区分マンションは売却流動性が高い一方、土地付きアパートは更地売却が難しいこともあります。2025年の健美家データでは、築30年超の木造アパート売却期間が平均10か月と長期化しています。保有期間中に付加価値を高め、需要が落ちにくいタイミングで売却する計画を持つことが、想定外の損失を防ぐ近道です。
まとめ
不動産投資で成功するかどうかは、購入前の情報収集と計画の緻密さにかかっています。本記事で取り上げた空室・修繕・金利という三大リスクを意識し、立地選定や資金計画を保守的に組む姿勢が大切です。さらに、2025年度の税制改正や補助制度を正しく理解し、管理と出口戦略を最初から描いておけば、長期的に安定した収益が期待できます。まずは収支シミュレーションを複数パターン作成し、リスク耐性を数字で確認することから始めてみましょう。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅局「賃貸住宅市場景況調査(2025年春)」 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省「住民基本台帳人口移動報告(2025年版)」 – https://www.soumu.go.jp
- 日本銀行「貸出約定平均金利等(2025年6月)」 – https://www.boj.or.jp
- 国税庁「令和7年版 耐用年数表」 – https://www.nta.go.jp
- 日本建築学会「住宅設備の耐用年数に関する調査報告(2024)」 – https://www.aij.or.jp