不動産投資を始めようと金融機関に相談したとき、「収入証明書を提出してください」と言われて戸惑った経験はありませんか。特に副業で収入を得ている方にとって、本業の源泉徴収票だけでは全体の収入を証明できず、審査で不利になるのではと不安を感じることでしょう。実は、副業収入の証明方法を正しく理解し、適切な書類を準備することで、金融機関からの信頼を得ることができます。この記事では、源泉徴収票しかない状況で副業収入をどう説明すればよいのか、具体的な方法と注意点を詳しく解説していきます。
源泉徴収票だけでは副業収入を証明できない理由

金融機関が不動産投資ローンの審査を行う際、最も重視するのは申込者の返済能力です。そのため、すべての収入を正確に把握する必要があります。しかし、源泉徴収票に記載されるのは、その会社から支払われた給与所得のみです。
副業で得た収入は、本業の源泉徴収票には一切反映されません。たとえば、会社員として年収500万円を得ながら、副業で年間200万円の収入がある場合、本業の源泉徴収票には500万円しか記載されないのです。つまり、源泉徴収票だけを提出すると、実際の年収700万円のうち200万円分が金融機関に伝わらないことになります。
この状況は審査において大きな問題となります。金融機関は提出された書類に基づいて融資額を決定するため、副業収入を証明できなければ、本来借りられるはずの金額よりも少ない融資しか受けられない可能性があります。さらに、後から副業収入の存在が発覚した場合、虚偽申告とみなされるリスクもあるのです。
国税庁の統計によると、2024年分の確定申告者数は約2,200万人に達しており、そのうち給与所得以外の所得を申告している人は年々増加しています。副業が一般化している現代において、金融機関も副業収入の存在を前提とした審査体制を整えつつあります。だからこそ、適切な方法で副業収入を証明することが重要になってきます。
副業収入を証明するために必要な書類とは

副業収入を金融機関に正しく伝えるためには、確定申告書の提出が最も確実な方法です。確定申告書には、給与所得だけでなく、事業所得や雑所得など、すべての所得が記載されます。これにより、金融機関はあなたの総収入を正確に把握できるのです。
確定申告書を提出する際は、直近2〜3年分を用意することが一般的です。複数年分の申告書を提出することで、副業収入が一時的なものではなく、継続的に得られる安定した収入であることを証明できます。金融機関は返済期間が長期にわたる不動産投資ローンを扱うため、収入の安定性を特に重視します。
確定申告書に加えて、青色申告決算書や収支内訳書も有効な証明書類となります。これらの書類には、副業の収入と経費の詳細が記載されており、事業の実態をより具体的に示すことができます。特に青色申告を行っている場合は、税務上の信頼性が高いと評価され、審査においてプラスに働くことがあります。
さらに、副業の内容によっては、取引先からの支払調書や売上台帳、通帳のコピーなども補足資料として提出できます。たとえば、フリーランスとして複数のクライアントから報酬を得ている場合、各クライアントからの支払調書を提出することで、収入の裏付けを強化できます。ただし、これらの書類はあくまで補足的なものであり、確定申告書に代わるものではありません。
確定申告をしていない場合の対処法
副業収入があるにもかかわらず確定申告をしていない場合、まずは速やかに申告を行うことが必要です。所得税法では、給与所得以外の所得が年間20万円を超える場合、確定申告が義務付けられています。申告していない状態は税法違反となり、金融機関の審査以前に税務上の問題を抱えることになります。
過去の未申告分については、税務署で期限後申告を行うことができます。期限後申告には無申告加算税や延滞税が課される可能性がありますが、自主的に申告することで、税務調査を受けるよりも負担を軽減できます。国税庁のデータによると、2023年度の期限後申告件数は約45万件に上り、多くの人が後から申告を行っている実態があります。
期限後申告を行った後は、その申告書を金融機関に提出することで、副業収入を証明できます。ただし、申告から融資申込までに一定の期間を置くことが望ましいでしょう。申告直後に融資を申し込むと、金融機関から「融資を受けるために慌てて申告した」と疑われる可能性があります。理想的には、申告から半年から1年程度の期間を空けることで、より信頼性の高い証明となります。
確定申告を行う際は、税理士に相談することをおすすめします。税理士は適切な申告方法をアドバイスしてくれるだけでなく、金融機関が求める書類の形式についても助言してくれます。税理士費用は発生しますが、不動産投資という大きな投資を成功させるための必要経費と考えるべきでしょう。
金融機関への説明で押さえるべきポイント
副業収入について金融機関に説明する際は、収入の安定性と継続性を強調することが重要です。金融機関が最も懸念するのは、一時的な収入を恒常的な収入として申告されることです。そのため、副業を何年続けているのか、今後も継続する予定があるのかを明確に伝える必要があります。
副業の内容についても、具体的かつ正直に説明しましょう。たとえば、「Webデザインのフリーランスとして5年間活動しており、現在3社と継続的な取引関係にあります」といった説明は、金融機関に安心感を与えます。一方で、曖昧な説明や実態と異なる説明は、後々トラブルの原因となります。
収入の変動についても、事前に説明しておくことが賢明です。副業収入は本業の給与と異なり、月ごとや年ごとに変動することが一般的です。この変動を隠すのではなく、「繁忙期と閑散期があり、年間を通じて平均するとこの金額になります」と説明することで、金融機関の理解を得やすくなります。
また、副業収入の使途についても触れておくとよいでしょう。「副業収入は全額貯蓄に回しており、不動産投資の頭金として活用する予定です」といった説明は、計画性のある投資家として評価されます。金融機関は単に収入額だけでなく、資金管理能力も審査の対象としているのです。
副業収入を含めた審査通過のための準備
不動産投資ローンの審査を有利に進めるためには、副業収入の証明以外にも、総合的な準備が必要です。まず、本業と副業を合わせた総収入に対する返済比率を計算しておきましょう。一般的に、年間返済額が年収の30〜35%以内に収まることが望ましいとされています。
自己資金の準備も重要な要素です。物件価格の20〜30%程度の頭金を用意できれば、金融機関からの評価は大きく向上します。副業収入を貯蓄に回してきた実績があれば、それを通帳のコピーなどで示すことで、計画的な資金管理ができる人物として認識されます。
信用情報の確認も忘れてはいけません。クレジットカードの支払い遅延や他のローンの延滞があると、審査に大きく影響します。CICやJICCなどの信用情報機関で自分の信用情報を開示し、問題がないか事前に確認しておくことをおすすめします。もし過去に延滞があった場合は、その理由と現在は改善されていることを説明できるよう準備しておきましょう。
物件選びも審査通過の鍵となります。金融機関は物件の収益性や担保価値も審査対象とします。駅から近い、築年数が浅い、周辺環境が良いといった条件を満たす物件を選ぶことで、融資を受けやすくなります。また、物件の収支シミュレーションを作成し、空室リスクや修繕費用を考慮しても収益が見込めることを示すことも効果的です。
副業の種類別に見る証明方法の違い
副業の形態によって、収入証明の方法や金融機関の評価は異なります。まず、給与所得として副業を行っている場合、つまり複数の会社から給与を受け取っている場合は、それぞれの会社から源泉徴収票を取得できます。この場合、すべての源泉徴収票を提出することで、総収入を証明できます。
フリーランスや個人事業主として副業を行っている場合は、事業所得または雑所得として確定申告を行います。この場合、青色申告を選択することで、税務上の信頼性が高まり、金融機関からの評価も向上します。青色申告特別控除を受けることで節税効果もあるため、副業収入が継続的にある方は青色申告の申請を検討すべきでしょう。
不動産所得がある場合、つまり既に賃貸物件を所有している場合は、その収入も審査でプラスに働きます。ただし、不動産所得は減価償却費などの経費を差し引いた後の金額となるため、実際のキャッシュフローと申告上の所得に差が生じることがあります。この点については、金融機関に丁寧に説明する必要があります。
株式投資やFXなどの投資収入がある場合は、特定口座の年間取引報告書や確定申告書で証明します。ただし、投資収入は変動が大きいため、金融機関によっては安定収入として認めないケースもあります。複数年にわたって安定した利益を出している実績があれば、評価される可能性が高まります。
金融機関選びで重要な視点
副業収入を含めた融資を受ける際は、金融機関の選択も重要です。都市銀行、地方銀行、信用金庫、ノンバンクなど、それぞれ審査基準や副業収入への対応が異なります。一般的に、都市銀行は審査が厳しい傾向にありますが、金利が低いというメリットがあります。
地方銀行や信用金庫は、地域密着型の営業を行っているため、個別の事情に柔軟に対応してくれることがあります。特に、長年取引のある金融機関であれば、信頼関係を基に審査を進めてもらえる可能性が高まります。副業収入についても、丁寧に説明すれば理解を得やすいでしょう。
ノンバンクは審査基準が比較的緩やかで、副業収入も積極的に評価してくれる傾向にあります。ただし、金利が高めに設定されているため、総返済額が増える点には注意が必要です。自己資金が少ない場合や、他の金融機関で審査が通らなかった場合の選択肢として検討するとよいでしょう。
複数の金融機関に相談することも有効な戦略です。金融機関によって審査基準が異なるため、一つの金融機関で断られても、別の金融機関では融資を受けられることがあります。ただし、短期間に多数の金融機関に申し込むと、信用情報に記録が残り、かえって審査に不利になる可能性があります。2〜3行程度に絞って相談することをおすすめします。
確定申告の際に注意すべき経費計上
副業収入を確定申告する際、適切な経費計上を行うことで、所得税を抑えながら実態に即した収入を示すことができます。ただし、過度な経費計上は金融機関の審査でマイナスに働く可能性があるため、バランスが重要です。
事業に直接関係する経費は、領収書やレシートを保管した上で適切に計上しましょう。たとえば、Webデザインの副業であれば、パソコンやソフトウェアの購入費、インターネット回線費用、打ち合わせの交通費などが経費として認められます。これらの経費を計上することで、課税所得を減らし、税負担を軽減できます。
一方で、家賃や光熱費などの家事関連費を経費として計上する場合は、事業使用割合を合理的に算出する必要があります。たとえば、自宅の一室を仕事部屋として使用している場合、その部屋の面積割合に応じて家賃の一部を経費とすることができます。ただし、この割合が不自然に高いと、税務調査の対象となる可能性があります。
金融機関の審査では、経費を差し引いた後の所得金額が評価対象となります。そのため、節税を重視しすぎて経費を多く計上すると、所得が少なく見えてしまい、融資額が減る可能性があります。不動産投資を計画している場合は、節税と融資のバランスを考えた経費計上を心がけるべきでしょう。
税理士に相談することで、適切な経費計上のアドバイスを受けられます。税理士は税務の専門家であると同時に、金融機関の審査基準にも精通していることが多いため、両方の観点から最適な申告方法を提案してくれます。税理士費用は発生しますが、長期的に見れば投資価値のある支出といえます。
副業収入の安定性をアピールする方法
金融機関が副業収入を評価する際、最も重視するのは収入の安定性と継続性です。一時的な収入ではなく、長期的に得られる収入であることを証明することが、審査通過の鍵となります。
まず、副業の継続年数を明確に示しましょう。3年以上継続している副業であれば、一時的なものではなく、本格的な収入源として認識されやすくなります。確定申告書を複数年分提出することで、収入の推移を示すことができます。収入が年々増加している場合は、成長性のある事業として評価される可能性が高まります。
取引先との契約書や継続的な取引実績も、安定性を示す有効な資料です。たとえば、特定のクライアントと年間契約を結んでいる場合、その契約書を提出することで、今後も一定の収入が見込めることを証明できます。また、複数のクライアントと取引している場合は、リスク分散ができていると評価されます。
副業の将来性についても説明できると良いでしょう。市場の成長性や自身のスキルアップ計画など、今後も収入が維持または増加する見込みがあることを伝えることで、金融機関の信頼を得やすくなります。ただし、根拠のない楽観的な予測は逆効果となるため、現実的な範囲での説明を心がけましょう。
副業収入の使途実績も重要なポイントです。副業で得た収入を貯蓄に回している、または既に不動産投資の勉強や準備に使っているといった実績があれば、計画的な資金管理ができる人物として評価されます。通帳のコピーや資産状況を示す書類を準備しておくと効果的です。
まとめ
源泉徴収票だけでは副業収入を証明できないため、不動産投資ローンの審査では確定申告書の提出が必須となります。副業収入がある場合は、年間20万円を超える所得について確定申告を行い、直近2〜3年分の申告書を準備することが重要です。
確定申告をしていない場合は、速やかに期限後申告を行い、税務上の問題を解決してから融資申込を行いましょう。金融機関への説明では、副業の内容、継続年数、収入の安定性を具体的に伝えることで、信頼を得ることができます。
副業の種類によって証明方法は異なりますが、いずれの場合も正確な記録と適切な書類準備が審査通過の鍵となります。また、金融機関選びも重要で、自分の状況に合った金融機関を選ぶことで、融資を受けられる可能性が高まります。
不動産投資は長期的な資産形成の手段として有効ですが、融資を受けるためには適切な準備が必要です。副業収入を正しく証明し、金融機関からの信頼を得ることで、理想的な物件への投資を実現できるでしょう。不安な点があれば、税理士やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することをおすすめします。
参考文献・出典
- 国税庁 – 確定申告に関する手続き https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/index.htm
- 国税庁 – 所得税の確定申告書等作成コーナー https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kakutei.htm
- 金融庁 – 金融機関の融資審査に関するガイドライン https://www.fsa.go.jp/
- 日本政策金融公庫 – 創業融資・事業資金に関する情報 https://www.jfc.go.jp/
- 全国銀行協会 – 住宅ローン・不動産投資ローンに関する統計データ https://www.zenginkyo.or.jp/
- 国土交通省 – 不動産市場動向に関する統計情報 https://www.mlit.go.jp/
- 中小企業庁 – 副業・兼業に関する調査報告 https://www.chusho.meti.go.jp/