不動産投資で資産を拡大したいと考えたとき、多くの投資家が直面するのが「次の物件をどう購入するか」という課題です。手元の現金が限られている中で、すでに所有している投資用物件を担保に活用できれば、新たな物件購入への道が開けます。実は、この手法は不動産投資の世界では一般的に行われており、適切な知識と準備があれば初心者でも実現可能です。この記事では、投資用物件を担保にした追加購入の具体的な進め方から、金融機関との交渉術、リスク管理まで、成功に必要な情報を分かりやすく解説していきます。
投資用物件を担保にした追加購入とは

投資用物件を担保にした追加購入とは、すでに所有している賃貸物件の資産価値を活用して、新たな不動産を購入する投資手法です。この方法を理解するには、まず不動産担保の仕組みを知ることが重要になります。
不動産を担保にするということは、金融機関に対して「もし返済できなくなったら、この物件を売却して返済に充てても良い」という約束をすることを意味します。金融機関はこの担保があることで、貸し倒れリスクを軽減できるため、融資を実行しやすくなります。つまり、あなたが所有する投資用物件に十分な資産価値があれば、それを担保として新たな融資を受け、次の物件購入資金を調達できるのです。
この手法の最大のメリットは、手元の現金を大きく減らすことなく投資規模を拡大できる点にあります。例えば、3000万円で購入した物件の残債が1500万円まで減っていれば、その差額である1500万円分の資産価値(エクイティ)が生まれています。金融機関はこのエクイティを評価し、新たな融資の判断材料とします。
ただし、この方法にはリスクも伴います。追加で融資を受けるということは、返済負担が増えることを意味します。既存物件と新規物件の両方で空室が発生したり、金利が上昇したりすると、返済が困難になる可能性があります。したがって、慎重な収支計画と余裕を持った資金繰りが不可欠です。
担保評価の仕組みと融資可能額の計算方法

金融機関が投資用物件を担保として評価する際には、独自の基準を用いて融資可能額を算出します。この評価の仕組みを理解することが、追加購入を成功させる第一歩となります。
担保評価で最も重要なのは「担保掛目」という概念です。これは物件の評価額に対して、実際に融資できる金額の割合を示すもので、一般的に60〜80%程度に設定されます。例えば、あなたの投資用物件が3000万円と評価され、担保掛目が70%であれば、最大2100万円までの融資枠が理論上可能になります。ただし、ここから既存の住宅ローン残債を差し引いた金額が、実際に新たに借りられる上限となります。
物件の評価方法には主に2つのアプローチがあります。1つ目は「積算評価」で、土地と建物それぞれの価値を計算して合計する方法です。土地は路線価や固定資産税評価額を基準とし、建物は再調達価格から経年劣化分を差し引いて算出します。2つ目は「収益還元法」で、物件が生み出す家賃収入を基に価値を算定します。金融機関は通常、これら両方の評価を行い、低い方の金額を採用する傾向があります。
融資可能額を具体的に計算してみましょう。3000万円で購入した物件の残債が1500万円、現在の評価額が2800万円、担保掛目が70%の場合、2800万円×70%=1960万円が担保枠となります。ここから残債1500万円を引くと、460万円が新たに借りられる可能性のある金額です。ただし、これはあくまで担保面からの計算であり、実際の融資額は借り手の返済能力も考慮して決定されます。
返済能力の評価では、既存物件と新規物件を合わせた総収入に対する返済比率(返済負担率)が重視されます。一般的に、年間返済額が年収の35〜40%以内に収まることが望ましいとされています。さらに、家賃収入の安定性や空室リスクも考慮されるため、稼働率の高い物件ほど有利な条件で融資を受けやすくなります。
金融機関選びと融資申請の進め方
投資用物件を担保にした追加購入を実現するには、適切な金融機関を選び、効果的に融資申請を進めることが重要です。金融機関によって融資姿勢や条件が大きく異なるため、複数の選択肢を比較検討することが成功への近道となります。
まず検討すべきは、既存物件の融資を受けている金融機関です。すでに取引実績があり、あなたの返済状況や物件の収益性を把握しているため、審査がスムーズに進む可能性が高くなります。また、既存顧客への優遇金利が適用されるケースもあります。ただし、1つの金融機関に融資が集中すると、その機関の方針変更によって影響を受けやすくなるため、リスク分散の観点から他の選択肢も検討する価値があります。
地方銀行や信用金庫は、不動産投資に積極的な姿勢を示すことが多く、柔軟な審査を期待できます。特に物件所在地の地域金融機関は、その地域の不動産市場に精通しており、適切な評価を受けやすい傾向があります。一方、メガバンクは金利が低い反面、審査基準が厳しく、属性や物件の質が高くないと融資を受けにくいという特徴があります。
融資申請の準備では、説得力のある事業計画書の作成が不可欠です。既存物件の運営実績を数字で示し、新規物件を加えることで収益がどう改善するかを明確に説明します。具体的には、現在の家賃収入と経費、返済額を整理し、新規物件購入後の収支シミュレーションを作成します。このとき、空室率を20%程度、金利上昇を1〜2%程度見込んだ保守的なシナリオも用意すると、金融機関からの信頼を得やすくなります。
必要書類の準備も重要なステップです。既存物件の登記簿謄本、賃貸借契約書、確定申告書(過去3期分)、源泉徴収票、購入予定物件の資料(レントロール、修繕履歴など)を揃えます。特に既存物件の運営が黒字であることを証明する資料は、返済能力を示す重要な証拠となります。また、自己資金の証明として預金通帳のコピーも求められることが一般的です。
金融機関との面談では、不動産投資に対する真剣な姿勢と長期的なビジョンを伝えることが大切です。単に「儲かりそうだから」という動機ではなく、資産形成の具体的な計画や、リスク管理の考え方を説明できると好印象を与えます。また、複数の金融機関に同時に申し込むことで、条件を比較しながら最適な選択ができます。
追加購入を成功させるための物件選びのポイント
投資用物件を担保にした追加購入では、新たに購入する物件の選び方が成功を左右します。既存物件との相乗効果を考えながら、収益性とリスクのバランスを取ることが重要になります。
物件選びで最優先すべきは、安定したキャッシュフローを生み出せるかどうかです。追加購入によって返済負担が増えるため、新規物件は確実に収益を上げる必要があります。具体的には、表面利回りが8%以上、実質利回りが5%以上を目安とし、さらに空室リスクの低い立地を選ぶことが望ましいでしょう。駅から徒歩10分以内、周辺に商業施設や学校がある、人口が安定または増加している地域といった条件を満たす物件が理想的です。
既存物件との分散投資も考慮すべき重要なポイントです。同じエリアに物件を集中させると、その地域の経済状況や災害リスクの影響を大きく受けてしまいます。例えば、既存物件が都心のワンルームマンションであれば、追加購入では郊外のファミリー向け物件を検討するなど、立地や物件タイプを分散させることでリスクを軽減できます。また、異なる入居者層をターゲットにすることで、景気変動の影響も受けにくくなります。
物件の築年数と修繕状況も慎重に確認する必要があります。築古物件は価格が安く利回りが高い傾向がありますが、突発的な修繕費用が発生するリスクも高まります。追加購入では返済負担が増えているため、予期せぬ出費に対応する余裕が少なくなっています。したがって、築15〜20年程度で大規模修繕が完了している物件や、築浅で当面大きな修繕が不要な物件を選ぶと安心です。
管理のしやすさも見落とせない要素です。複数物件を所有すると管理の手間が増えるため、信頼できる管理会社が入っている物件や、管理体制が整っている物件を選ぶことが重要です。また、既存物件と同じ管理会社が対応できるエリアの物件を選べば、管理の効率化とコスト削減が期待できます。さらに、入居率が高く、長期入居者が多い物件は、安定した収益を見込めるだけでなく、管理の負担も軽減されます。
リスク管理と資金繰りの注意点
投資用物件を担保にした追加購入では、リスクが増大するため、より慎重な資金管理とリスク対策が必要になります。成功する投資家は、楽観的なシナリオだけでなく、最悪の事態も想定した準備を怠りません。
最も重要なのは、十分な現金を手元に残しておくことです。追加購入後は、既存物件と新規物件の両方で空室や修繕が発生する可能性があります。一般的には、物件価格の10〜15%程度、最低でも100万円以上の予備資金を確保することが推奨されます。この資金は、空室時の返済や突発的な修繕費用に充てるためのものであり、絶対に他の用途に使わないという強い意志が必要です。
金利上昇リスクへの備えも欠かせません。変動金利で融資を受けている場合、金利が1%上昇するだけで月々の返済額が数万円増える可能性があります。現在の低金利環境が永続するとは限らないため、金利が2〜3%上昇しても返済を続けられるかシミュレーションしておくべきです。不安がある場合は、一部を固定金利に切り替えるなど、金利変動リスクを軽減する対策を検討しましょう。
空室リスクの管理では、複数物件を所有することで分散効果が得られる一方、同時に複数の空室が発生するリスクも考慮する必要があります。入居者募集の時期をずらす、異なるターゲット層の物件を組み合わせる、家賃保証サービスを活用するなど、空室リスクを最小化する工夫が重要です。また、家賃収入の20〜30%程度を空室や修繕の予備費として積み立てる習慣をつけると、長期的な安定経営につながります。
返済計画の見直しも定期的に行うべきです。追加購入後は、全物件の収支を統合して管理し、キャッシュフローの状況を常に把握します。もし収支が悪化する兆候が見られたら、早めに対策を講じることが重要です。具体的には、家賃の見直し、経費の削減、場合によっては物件の売却も選択肢に入れます。特に、収益性の低い物件を売却して借入を減らすことで、全体のリスクを下げられることもあります。
保険の見直しも忘れてはいけません。火災保険や地震保険はもちろん、家賃保証保険や施設賠償責任保険など、リスクに応じた適切な保険に加入することで、予期せぬ事態に備えられます。複数物件を所有する場合、保険をまとめることで保険料を削減できるケースもあるため、保険会社に相談してみる価値があります。
まとめ
投資用物件を担保にした追加購入は、不動産投資の規模を拡大し、資産形成を加速させる有効な手法です。既存物件のエクイティを活用することで、手元の現金を大きく減らすことなく新たな物件を購入できます。ただし、この方法を成功させるには、担保評価の仕組みを理解し、適切な金融機関を選び、収益性の高い物件を見極める必要があります。
重要なのは、追加購入によって返済負担が増えることを十分に認識し、保守的な収支計画を立てることです。空室リスクや金利上昇リスクを想定し、十分な予備資金を確保しながら進めることで、長期的に安定した不動産投資が実現できます。また、複数物件を所有することで得られる分散効果を活かしつつ、管理の効率化にも気を配ることが大切です。
不動産投資は長期的な視点で取り組むべき資産形成の手段です。焦らず、一つひとつのステップを確実に進めながら、自分に合ったペースで投資規模を拡大していきましょう。適切な知識と準備があれば、投資用物件を担保にした追加購入は、あなたの資産形成を大きく前進させる強力な武器となるはずです。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産市場動向 – https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000085.html
- 金融庁 金融機関の融資姿勢に関する調査 – https://www.fsa.go.jp/
- 日本銀行 貸出約定平均金利の推移 – https://www.boj.or.jp/statistics/dl/loan/prime/index.htm
- 公益財団法人 不動産流通推進センター 不動産投資ガイド – https://www.retpc.jp/
- 一般社団法人 全国賃貸住宅経営者協会連合会 賃貸住宅市場データ – https://www.zenchin.com/
- 住宅金融支援機構 不動産投資ローンの動向 – https://www.jhf.go.jp/