不動産投資を始めようと物件情報を見ていると、「築浅・高利回り」という魅力的な文字が目に飛び込んでくることがあります。しかし、築浅物件の表面利回りだけを見て投資判断をするのは危険です。実は、表面利回りの数字だけでは見えない重要なポイントがいくつも存在します。この記事では、築浅物件の表面利回りの正しい見方と、失敗しないための投資判断基準について、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
表面利回りとは何か?基本を理解する

不動産投資において、利回りは物件の収益性を測る最も基本的な指標です。特に表面利回りは、物件情報サイトや広告で必ず目にする数字ですが、その意味を正確に理解している投資家は意外と少ないのが現状です。
表面利回りとは、物件価格に対する年間家賃収入の割合を示す指標です。計算式は「年間家賃収入÷物件価格×100」となります。例えば、3000万円の物件で年間家賃収入が150万円なら、表面利回りは5%となります。この計算はシンプルで分かりやすいため、物件の収益性を素早く比較する際に便利です。
しかし、表面利回りには大きな落とし穴があります。それは、実際の運営にかかる経費が一切考慮されていないという点です。管理費、修繕積立金、固定資産税、都市計画税、火災保険料、管理委託費など、不動産投資には様々なコストが発生します。さらに、空室期間の家賃損失や、入居者募集にかかる広告費なども実際には必要になります。
つまり、表面利回りは「理論上の最大収益率」を示しているに過ぎません。実際の手取り収益を知るには、これらの経費を差し引いた「実質利回り」を計算する必要があります。特に築浅物件の場合、表面利回りと実質利回りの差が大きくなる傾向があるため、注意が必要です。
築浅物件の表面利回りが低めになる理由

築浅物件を検討する際、多くの投資家が「思ったより利回りが低い」と感じることがあります。実は、これには明確な理由があり、不動産市場の構造を理解する上で重要なポイントとなります。
まず、築浅物件は物件価格そのものが高く設定されています。建物の資産価値が高く、設備も最新であるため、中古物件と比べて販売価格が高額になるのは当然です。2026年2月時点の東京23区のデータを見ると、築浅ワンルームマンションの平均表面利回りは4.2%程度となっており、築20年以上の物件と比べて1〜2%低い水準です。
一方で、家賃設定は築年数によってそれほど大きく変わらないケースも多くあります。特に都心部の人気エリアでは、築浅でも築10年でも、同じ立地・同じ間取りなら家賃の差は月数千円程度ということも珍しくありません。結果として、分子である家賃収入はあまり変わらないのに、分母である物件価格が高くなるため、表面利回りは低くなります。
さらに、築浅物件は新築プレミアムの影響も受けています。新築時は販売会社の利益や広告費が上乗せされているため、実際の市場価値より高い価格で販売されることがあります。この新築プレミアムは、物件を購入した瞬間に消失し、数年後には中古市場の相場に収束していきます。
ただし、表面利回りが低いことが必ずしもデメリットとは限りません。築浅物件には、修繕費が少ない、空室リスクが低い、融資条件が有利といったメリットがあります。これらの要素を総合的に判断することが、賢明な投資判断につながります。
築浅物件投資のメリットとデメリット
築浅物件への投資を検討する際は、表面利回りだけでなく、総合的なメリットとデメリットを理解することが重要です。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
築浅物件の最大のメリットは、当面の修繕費用が少なく済むという点です。給湯器やエアコンなどの設備は新しく、外壁や屋上防水も良好な状態のため、購入後数年間は大きな修繕費用が発生しにくいのが特徴です。一般的に、築10年未満の物件であれば、設備の大規模な交換は不要と考えられます。これにより、実質的なキャッシュフローは安定しやすくなります。
入居者募集の面でも築浅物件は有利です。賃貸市場では築年数が浅い物件ほど人気が高く、空室期間が短くなる傾向があります。特に若い世代や女性の入居希望者は、新しく清潔な物件を好む傾向が強いため、安定した入居率を維持しやすいのです。実際、築5年以内の物件の平均空室率は10%程度と、築20年以上の物件の20%と比べて半分程度に抑えられています。
金融機関からの融資条件も築浅物件は有利です。建物の担保評価が高いため、融資額が大きくなりやすく、金利も低めに設定される傾向があります。自己資金が少ない投資家にとって、これは大きなメリットとなります。
一方、デメリットとしては、やはり初期投資額の大きさが挙げられます。物件価格が高いため、同じ予算で複数の中古物件を購入できる場合と比べて、リスク分散がしにくくなります。また、前述の通り表面利回りは低めになるため、短期的なキャッシュフローを重視する投資家には向かない場合があります。
さらに、新築プレミアムによる価格下落リスクも考慮が必要です。購入後数年で物件価値が10〜15%程度下落することもあるため、短期での売却を考えている場合は注意が必要です。長期保有を前提とした投資戦略が、築浅物件には適しています。
実質利回りで見る本当の収益性
表面利回りだけで投資判断をすることの危険性は、実質利回りを計算してみると明確になります。実際の手取り収益を正確に把握するためには、この実質利回りの理解が不可欠です。
実質利回りは、年間家賃収入から実際にかかる経費を差し引いた純収益を、物件価格で割って算出します。具体的には「(年間家賃収入−年間経費)÷物件価格×100」という計算式になります。ここで差し引く経費には、管理費、修繕積立金、固定資産税、都市計画税、火災保険料、管理委託費、空室損失などが含まれます。
例えば、3000万円の築浅ワンルームマンションで考えてみましょう。月額家賃が12万円なら年間家賃収入は144万円、表面利回りは4.8%となります。しかし、実際には管理費月1万円、修繕積立金月8000円、固定資産税・都市計画税年12万円、火災保険料年2万円、管理委託費が家賃の5%で年7.2万円かかります。さらに空室率を10%と見込むと、年間経費の合計は約60万円になります。
この場合、純収益は84万円となり、実質利回りは2.8%まで下がります。表面利回りとの差は2%にもなり、これは投資判断に大きな影響を与える数字です。特に築浅物件の場合、管理費や修繕積立金が比較的高めに設定されていることが多く、この差が大きくなる傾向があります。
重要なのは、実質利回りでも十分な収益が見込めるかどうかを判断することです。一般的に、都心部の築浅物件で実質利回り2.5〜3.5%程度が相場とされています。この水準で投資する場合、キャピタルゲイン(売却益)や節税効果なども含めた総合的な投資戦略が必要になります。
また、将来的な経費の増加も考慮に入れる必要があります。修繕積立金は築年数とともに段階的に上昇するのが一般的で、築10年を過ぎると月額が1.5〜2倍になることもあります。長期的な収支シミュレーションを作成し、20年後、30年後の実質利回りがどうなるかまで見通すことが、成功する不動産投資の鍵となります。
築浅物件を選ぶ際の具体的なチェックポイント
築浅物件への投資を成功させるには、表面利回りだけでなく、様々な角度から物件を評価する必要があります。ここでは、実際に物件を選ぶ際の具体的なチェックポイントを紹介します。
立地条件は最も重要な要素です。駅からの距離は徒歩10分以内が理想的で、できれば5分以内であればさらに有利です。また、周辺環境も重要で、スーパーやコンビニ、病院などの生活施設が充実しているか確認しましょう。将来的な再開発計画や人口動態も調査し、10年後、20年後も賃貸需要が見込めるエリアかどうかを見極めることが大切です。
建物の管理状態も必ず確認してください。築浅物件でも、管理が行き届いていないと早期に劣化が進みます。エントランスや共用部分の清掃状態、掲示板の管理状況、駐輪場の整理整頓などをチェックすることで、管理会社の質を判断できます。また、長期修繕計画が適切に策定されているか、修繕積立金が計画的に積み立てられているかも重要なポイントです。
間取りと設備のバランスも見逃せません。ワンルームの場合、20㎡以上の広さがあり、独立洗面台やバス・トイレ別などの設備があると入居者に人気です。ファミリータイプなら、収納スペースの充実度や日当たり、風通しなどが重要になります。ターゲットとなる入居者層のニーズに合った物件かどうかを考えましょう。
管理費と修繕積立金の水準も慎重に確認が必要です。相場と比べて極端に安い場合、将来的に大幅な値上げが予想されます。逆に高すぎる場合は、実質利回りが低下する原因となります。同じエリアの類似物件と比較し、適正な水準かどうかを判断してください。
さらに、現在の入居状況と家賃設定も重要です。オーナーチェンジ物件の場合、現在の家賃が相場と比べて適正かどうかを確認しましょう。相場より高い場合、次の入居者募集時に家賃を下げざるを得ない可能性があります。空室物件の場合は、前の入居者の退去理由や空室期間の長さも確認し、物件に何か問題がないかチェックすることが大切です。
表面利回りと実質利回りの差を最小化する方法
築浅物件投資で成功するには、表面利回りと実質利回りの差をできるだけ小さくする工夫が重要です。経費を適切にコントロールすることで、実質的な収益性を高めることができます。
管理会社の選定は、経費削減の第一歩です。管理委託費は一般的に家賃の5%程度が相場ですが、会社によって3〜8%と幅があります。複数の管理会社から見積もりを取り、サービス内容と費用のバランスを比較検討しましょう。ただし、安さだけで選ぶのは危険です。入居者対応の質や空室時の募集力なども考慮し、総合的に判断することが大切です。
火災保険の見直しも効果的です。不動産会社が勧める保険をそのまま契約するのではなく、複数の保険会社を比較することで、年間数万円の節約になることもあります。特に築浅物件の場合、建物の評価額が高いため保険料も高額になりがちです。必要な補償内容を精査し、過剰な補償を削ることで適正な保険料に抑えられます。
空室対策も実質利回りを高める重要な要素です。築浅物件の強みを活かし、適切な家賃設定と効果的な募集活動を行うことで、空室期間を最小限に抑えられます。相場より少し高めの家賃設定でも、築浅という付加価値があれば入居者は見つかりやすいものです。ただし、欲張りすぎて空室期間が長引くと、かえって収益が悪化するため、市場動向を見ながら柔軟に対応することが求められます。
税金対策も見逃せません。不動産所得は給与所得などと損益通算できるため、適切な経費計上により節税効果が期待できます。減価償却費、修繕費、管理費、交通費など、認められる経費を漏れなく計上することで、手取り収益を増やすことができます。ただし、税務上のルールを守ることが前提ですので、不安な場合は税理士に相談することをお勧めします。
さらに、長期的な視点での修繕計画も重要です。築浅物件は当面の修繕費が少ないというメリットがありますが、将来に備えて計画的に資金を準備しておく必要があります。修繕積立金とは別に、自己資金でも修繕費用を積み立てておくことで、突発的な支出にも対応できます。これにより、長期的に安定した実質利回りを維持することが可能になります。
まとめ
築浅物件の表面利回りは、一見すると中古物件より低く見えますが、実際の投資価値は数字だけでは判断できません。重要なのは、表面利回りの背景にある様々な要素を理解し、実質利回りベースで総合的に評価することです。
築浅物件には、修繕費が少ない、空室リスクが低い、融資条件が有利といった明確なメリットがあります。これらのメリットを活かしながら、管理費や保険料などの経費を適切にコントロールすることで、長期的に安定した収益を得ることができます。
物件選びでは、立地条件、建物の管理状態、間取りと設備、管理費・修繕積立金の水準など、多角的な視点でチェックすることが成功の鍵となります。表面利回りだけに惑わされず、実質利回りや将来の資産価値まで見据えた投資判断を心がけましょう。
不動産投資は長期的な視点が必要な投資です。築浅物件の特性を正しく理解し、自分の投資目的や資金計画に合った物件を選ぶことで、安定した資産形成が可能になります。まずは複数の物件を比較検討し、実質利回りを計算してみることから始めてみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産市場動向マンスリーレポート – https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000085.html
- 日本不動産研究所 不動産投資家調査 – https://www.reinet.or.jp/
- 総務省統計局 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/
- 国税庁 不動産所得の計算方法 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm
- 東京都 固定資産税・都市計画税 – https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/
- 公益財団法人 不動産流通推進センター 不動産統計集 – https://www.retpc.jp/