木造アパートへの投資を検討する際、多くの方が「新築と中古、どちらを選ぶべきか」という悩みに直面します。新築は魅力的に見えますが価格が高く、中古は安いものの修繕費が心配になるでしょう。実は、この選択は投資目的や資金状況によって最適解が大きく変わります。この記事では、木造アパートの新築と中古それぞれのメリット・デメリットを徹底的に比較し、あなたに合った投資判断ができるよう具体的な数値とともに解説していきます。
木造アパート投資の基本的な特徴

木造アパートは不動産投資の中でも特に初心者に人気の高い投資対象です。その理由は、鉄筋コンクリート造に比べて初期投資額が抑えられ、減価償却期間が短いため節税効果が高いという特徴にあります。
国土交通省の建築着工統計によると、2025年の賃貸住宅着工戸数のうち約40%が木造となっており、依然として主要な建築構造として選ばれています。木造の法定耐用年数は22年と定められており、これは鉄筋コンクリート造の47年と比べて半分以下です。この短い耐用年数が、税務上の減価償却を早期に進められるメリットとなります。
建築コストの面では、木造は1坪あたり50万円から70万円程度が相場です。一方、鉄筋コンクリート造では80万円から100万円以上かかることが一般的です。つまり、同じ規模の物件を建てる場合、木造なら約30%から40%のコスト削減が可能になります。
ただし、木造には耐久性や遮音性で劣る面もあります。適切なメンテナンスを行えば50年以上の使用も可能ですが、定期的な修繕計画が欠かせません。このような木造の特性を理解した上で、新築と中古の比較を進めていきましょう。
新築木造アパートの魅力と投資メリット

新築木造アパートの最大の魅力は、当初10年程度は大規模修繕がほとんど不要という点です。建物の瑕疵担保責任により、構造上の問題があれば10年間は保証されるため、予期せぬ修繕費用の心配が少なくなります。
入居者募集の面でも新築は圧倒的に有利です。不動産情報サイトSUUMOの調査では、賃貸物件を探す人の約60%が「築年数5年以内」を希望条件としています。新築というブランド力により、周辺相場より5%から10%高い家賃設定でも入居者が決まりやすい傾向があります。さらに、最新の設備や省エネ性能を備えているため、長期的な競争力も期待できます。
融資条件も新築は有利です。金融機関は新築物件に対して積極的に融資を行う傾向があり、物件価格の80%から90%程度まで借り入れが可能なケースが多くなっています。金利も中古物件より0.2%から0.5%程度低く設定されることが一般的です。例えば、5000万円を30年ローンで借りる場合、金利が0.3%違うだけで総返済額は約200万円も変わってきます。
税制面では、新築は減価償却を最大限活用できます。木造の法定耐用年数22年で計算すると、建物価格の約4.5%を毎年経費として計上できます。5000万円の物件なら年間約225万円の減価償却費となり、高所得者にとっては大きな節税効果が得られます。
中古木造アパートの実質的な投資価値
中古木造アパートの最大のメリットは、初期投資額を大幅に抑えられることです。築10年の物件なら新築の70%から80%程度、築20年なら50%から60%程度の価格で購入できます。例えば、新築で6000万円の物件が、築15年なら3500万円から4000万円程度で手に入る計算です。
利回りの面では中古が圧倒的に有利です。不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」の2025年データによると、木造アパートの平均表面利回りは新築で5%から6%程度ですが、築15年以上の中古では8%から10%に達します。この高利回りにより、投資回収期間を大幅に短縮できる可能性があります。
実際の運用実績を確認できるのも中古の大きな強みです。新築では入居率や実際の家賃収入が予測に過ぎませんが、中古なら過去の稼働実績や修繕履歴を確認できます。前オーナーの確定申告書や管理会社の報告書を見れば、空室率や実質的な収支が明確になります。この透明性により、投資判断の精度が高まります。
減価償却の面でも中古には独特のメリットがあります。築年数が法定耐用年数を超えている場合、簡便法により耐用年数を4年として計算できます。これにより、短期間で大きな減価償却費を計上でき、高い節税効果が得られます。例えば、築25年の木造アパートを3000万円で購入した場合、建物部分2000万円を4年で償却すると年間500万円もの経費計上が可能になります。
初期費用と資金計画の具体的な違い
新築と中古では、物件価格以外の諸費用にも大きな違いがあります。新築の場合、物件価格に対して8%から10%程度の諸費用が必要です。内訳は、登記費用、不動産取得税、火災保険料、融資手数料などです。6000万円の新築物件なら、諸費用だけで480万円から600万円かかる計算になります。
中古物件の諸費用は物件価格の6%から8%程度と、やや低めです。ただし、購入後すぐに必要となる修繕費用を別途考慮する必要があります。築15年の物件なら外壁塗装や屋根の補修で200万円から300万円、築20年を超えると給排水設備の更新も含めて500万円以上かかるケースもあります。
自己資金の準備額も異なります。新築は融資比率が高いため、物件価格の10%から20%の自己資金で始められることが多いです。6000万円の物件なら600万円から1200万円の自己資金が目安となります。一方、中古は融資比率が70%から80%程度に抑えられるため、より多くの自己資金が必要です。4000万円の中古物件でも800万円から1200万円の自己資金を用意すべきでしょう。
月々のキャッシュフローも重要な比較ポイントです。新築は家賃収入が高い反面、ローン返済額も大きくなります。一方、中古は購入価格が安いため月々の返済額が少なく、利回りが高いことから手元に残る現金が多くなる傾向があります。例えば、同じ8戸のアパートで比較すると、新築は月々のキャッシュフローが5万円から10万円程度ですが、中古なら15万円から25万円になることも珍しくありません。
維持管理費用と長期的なコスト比較
新築木造アパートの維持管理費用は、当初10年間は比較的少額で済みます。年間の修繕費は家賃収入の5%程度を見込めば十分です。月額家賃6万円の8戸アパートなら、年間収入576万円に対して修繕費は約29万円となります。主な支出は、共用部の清掃費、消防設備の点検費、エアコンや給湯器の小規模な修理程度です。
しかし、築10年を過ぎると大規模修繕が必要になってきます。外壁塗装は築12年から15年で実施するのが一般的で、費用は200万円から300万円です。屋根の補修も同時期に必要となり、100万円から150万円かかります。さらに築20年前後では給排水設備の更新が必要で、300万円から500万円の出費を覚悟しなければなりません。
中古物件は購入時点で既に修繕が必要な状態のことが多くなります。築15年の物件を購入する場合、外壁塗装や屋根補修を購入後すぐに実施するケースが一般的です。ただし、これらの費用を購入価格の交渉材料にできる可能性があります。売主に修繕費用分の値引きを求めることで、実質的な負担を軽減できます。
長期的な視点で見ると、新築は30年間の総コストが高くなる傾向があります。購入価格が高い上に、10年ごとの大規模修繕費用が積み重なるためです。一方、中古は初期の修繕費用こそかかりますが、購入価格が安いため総コストは抑えられます。ただし、築年数が古すぎる物件は修繕頻度が高くなり、かえってコスト増になるリスクもあります。築15年から20年程度の物件が、コストバランスの面で最も優れていると言えるでしょう。
空室リスクと収益性の実態
新築物件の空室リスクは、当初数年間は極めて低いのが特徴です。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の調査によると、新築物件の1年目の入居率は平均95%以上を維持しています。新しい設備と清潔感により、入居希望者が途切れることは少なく、安定した収入が期待できます。
しかし、築年数が経過するにつれて競争力は低下していきます。周辺に新しい物件が建つと、相対的に古く見えてしまい、家賃を下げざるを得なくなります。一般的に、新築時の家賃は10年で10%から15%程度下落すると言われています。月額6万円の家賃なら、10年後には5万1000円から5万4000円程度になる計算です。
中古物件の空室リスクは、立地と物件の状態によって大きく変わります。駅から徒歩10分以内の好立地で、適切にリフォームされた物件なら、築20年でも高い入居率を維持できます。実際、リノベーション済みの中古物件は「リノベ物件」として人気があり、新築並みの家賃設定でも入居者が決まるケースが増えています。
収益性の面では、中古物件が有利な場合が多くなります。購入価格が安いため、多少の空室や家賃下落があっても投資利回りは高水準を保てます。例えば、4000万円で購入した中古物件が年間400万円の家賃収入を生むなら、表面利回りは10%です。一方、6000万円の新築物件が年間480万円の収入でも、利回りは8%にとどまります。空室率が10%になった場合、中古は実質利回り9%を維持できますが、新築は7.2%まで低下します。
融資条件と金融機関の評価基準
新築木造アパートへの融資は、金融機関にとってリスクが低いと判断されます。そのため、融資条件は比較的緩やかです。メガバンクや地方銀行では、物件価格の80%から90%まで融資するケースが一般的で、金利は1.0%から1.5%程度に設定されます。返済期間も30年から35年と長期で組めることが多く、月々の返済負担を抑えられます。
審査基準も明確です。年収700万円以上、自己資金20%以上、他の借入がないことが基本条件となります。会社員や公務員なら、勤続年数3年以上で審査に通る可能性が高くなります。さらに、新築は担保評価が高いため、万が一の際も金融機関は損失を最小限に抑えられると考えます。
中古物件への融資は、築年数によって条件が大きく変わります。築15年以内なら新築に近い条件で借りられることもありますが、築20年を超えると融資比率は70%程度に下がり、金利も1.5%から2.5%と高めに設定されます。返済期間も、法定耐用年数から築年数を引いた年数が上限となるため、築20年の物件なら最長2年しか借りられない計算です。
ただし、中古物件でも収益性が高ければ有利な条件で融資を受けられます。実質利回りが10%を超える物件や、過去の稼働実績が優れている物件は、金融機関も積極的に融資します。また、ノンバンクや信用金庫は、メガバンクより柔軟な審査基準を持っているため、築古物件でも融資を受けやすい傾向があります。金利は高めですが、複数の金融機関を比較することで、より良い条件を引き出せる可能性があります。
節税効果と減価償却の戦略的活用
新築木造アパートの減価償却は、22年間にわたって均等に経費計上できます。建物価格が4000万円なら、年間約182万円の減価償却費となります。この金額が所得から差し引かれるため、所得税率が33%の人なら年間約60万円の節税効果が得られる計算です。さらに、住民税も含めると年間約73万円の税負担軽減になります。
新築の減価償却は長期的に安定した節税効果をもたらします。22年間毎年同じ金額を経費計上できるため、長期的な税務計画が立てやすいのが特徴です。高所得のサラリーマンや経営者にとって、この安定性は大きなメリットとなります。また、新築は設備部分の減価償却も大きく、エアコンや給湯器などを15年で償却できます。
中古物件の減価償却は、短期間で大きな効果を得られる可能性があります。築年数が法定耐用年数を超えている場合、簡便法により耐用年数を4年として計算できます。建物価格2000万円の築25年物件なら、年間500万円もの減価償却費を計上できます。所得税率33%なら年間165万円、住民税を含めると約200万円の節税効果です。
ただし、中古の減価償却は短期集中型のため、償却期間終了後の税負担増加に注意が必要です。4年間で大きな節税効果を得られますが、5年目以降は減価償却費がなくなり、課税所得が急増します。この対策として、償却期間終了前に物件を売却し、新たな物件に買い替える戦略を取る投資家も多くいます。売却益には譲渡所得税がかかりますが、5年超保有すれば長期譲渡所得として税率が約20%に抑えられます。
出口戦略と資産価値の将来性
新築木造アパートの出口戦略は、長期保有を前提とするのが基本です。購入後10年から15年は安定した収益を得ながら、ローン残高を減らしていきます。築15年程度になったタイミングで売却すれば、ある程度の資産価値を維持したまま次の投資に移れます。国土交通省の中古住宅流通促進に関する調査では、築15年の木造物件は新築時の50%から60%程度の価格で取引されています。
売却時の注意点は、大規模修繕の実施時期です。外壁塗装や屋根補修を済ませた直後なら、買主にとって魅力的な物件となり、高値で売却できる可能性が高まります。逆に、修繕が必要な状態で売却すると、その分値引きを求められます。修繕費用300万円をかけて売却価格が500万円上がるなら、修繕してから売る方が得策です。
中古物件の出口戦略は、より柔軟な選択肢があります。短期間で高利回りを享受した後、5年から10年で売却するケースが一般的です。購入価格が安いため、多少値下がりしても投資回収できている可能性が高くなります。例えば、3500万円で購入した物件を10年後に2500万円で売却しても、その間に得た家賃収入と節税効果を考えれば十分な利益が出ます。
建て替えという選択肢も視野に入れるべきです。築30年を超えた木造アパートは、建物の資産価値がほぼゼロになりますが、土地の価値は残ります。好立地の物件なら、建物を解体して新築アパートを建てることで、資産価値を大きく向上させられます。また、土地だけを売却して他の投資に資金を振り向けることも可能です。このように、中古物件は出口戦略の選択肢が多く、状況に応じた柔軟な対応ができます。
投資目的別の最適な選択基準
安定収入を重視する投資家には、新築木造アパートが適しています。会社員や公務員で本業がある方、老後の安定収入を確保したい方にとって、新築の低リスク・安定収益は魅力的です。当初10年間は修繕費がほとんどかからず、入居率も高いため、手間をかけずに運用できます。月々のキャッシュフローは少なめですが、長期的に安定した収入が期待できます。
高利回りを追求する投資家には、中古物件が向いています。不動産投資を本格的に事業として取り組む方、短期間で資産を増やしたい方にとって、中古の高利回りは大きな武器となります。表面利回り8%から10%なら、10年から12年で投資額を回収できる計算です。その後は実質的な利益が積み上がっていきます。ただし、物件選びの目利きと、修繕計画の立案能力が求められます。
節税効果を最優先する高所得者には、築古の中古物件が最適です。年収1500万円以上で所得税率が高い方は、短期間で大きな減価償却費を計上できる築古物件により、大幅な節税が可能になります。4年間で建物価格の全額を償却できれば、その間の税負担を大きく軽減できます。償却期間終了後は売却して次の物件に買い替えることで、継続的な節税効果を維持できます。
資産形成の初心者には、築10年から15年程度の中古物件がバランスが良いでしょう。新築ほど高額ではなく、築古ほど修繕リスクが高くないため、初めての不動産投資に適しています。利回りも7%から8%程度確保でき、融資条件も比較的良好です。まずはこのクラスの物件で経験を積み、次のステップとして新築や築古物件にチャレンジするのが賢明な戦略と言えます。
まとめ
木造アパート投資における新築と中古の選択は、投資目的と資金状況によって最適解が変わります。新築は初期費用が高く利回りは低めですが、安定性と管理の手軽さが魅力です。一方、中古は高利回りで初期投資を抑えられますが、修繕計画と物件選びの目利きが成功の鍵となります。
重要なのは、表面的な数字だけでなく、長期的な収支とリスクを総合的に判断することです。新築なら30年間の修繕計画を、中古なら購入後10年間の収支シミュレーションを作成し、複数のシナリオで検証しましょう。また、出口戦略も購入前に明確にしておくことで、より確実な投資判断ができます。
どちらを選ぶにしても、立地条件は最重要です。駅から徒歩10分以内、周辺に商業施設や学校がある、人口が維持または増加している地域を選ぶことで、新築でも中古でも長期的な収益性を確保できます。自分の投資スタイルと目的を明確にした上で、最適な物件を選択してください。
参考文献・出典
- 国土交通省 建築着工統計調査 – https://www.mlit.go.jp/statistics/details/jutaku_list.html
- 公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会 賃貸住宅市場景況感調査 – https://www.jpm.jp/
- 国土交通省 中古住宅流通促進・活用に関する研究会 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000088.html
- 不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家 – https://www.kenbiya.com/
- SUUMO 賃貸住宅に関する調査データ – https://suumo.jp/
- 国税庁 減価償却資産の耐用年数等に関する省令 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
- 一般社団法人 不動産流通経営協会 既存住宅流通量推計 – https://www.frk.or.jp/