不動産投資を始めようと思っても、「本当に利益が出るのだろうか」と不安になる方は多いはずです。物件価格や家賃だけを見て判断すると、あとで思わぬ修繕費や税金に悩まされることがあります。そこで必要になるのが、購入前に行う丁寧な収支計算です。この記事では、初心者でも実践できる「収支計算 手順」をわかりやすく解説し、数字に基づいた判断力を身につける方法を紹介します。最後まで読めば、投資判断に自信を持てるようになるでしょう。
収支計算が欠かせない理由

重要なのは、収支計算が単なる数字合わせではなく、長期的なリスク管理の第一歩だという点です。国土交通省の「不動産投資市場調査」(2024年版)によると、運用開始後3年以内に資金繰りに行き詰まった個人投資家の約6割が、購入前に詳細なキャッシュフローを検討していませんでした。つまり、事前に数字を積み上げるだけで多くの失敗を防げるわけです。
まず収支計算を行うと、手取り利回りや返済比率などの重要指標が明確になり、融資審査での説明にも説得力が増します。また、複数物件を比較する際の共通尺度として機能するため、感情ではなくデータで判断できるようになります。一方で、計算手順を誤ると過度な楽観シナリオを信じてしまい、空室や金利上昇への耐性が弱いポートフォリオを組むことになりかねません。
収支計算 手順の全体像
まず押さえておきたいのは、収支計算を「見込み家賃-総支出」で単純に済ませないことです。実際には資金の動きを四つの段階に分けて捉えると、漏れがなくなります。
以下の手順を頭に入れておくと、計算ミスを減らせます。
- 想定賃料を決め、入居率を見込む
- 運営費(管理費・修繕積立金・広告費)を積算する
- 融資条件を入れて年間返済額を算出する
- 税金・保険料・固定資産税を加える
- 減価償却など税務上の調整を行う
- キャッシュフローと利回りを検証する
この流れはシンプルですが、途中で安易に「平均値」を使うと誤差が拡大します。たとえば地方のワンルームと都心のファミリー向けでは、空室期間や修繕周期に大きな差があるため、個別データを用いる姿勢が欠かせません。
収支項目を正確に把握するコツ
ポイントは、支出を「変動費」と「固定費」に分けて考えることです。変動費とは入居率によって上下する広告料や水道光熱費を指し、固定費には管理委託料や固定資産税が含まれます。この区分を明確にすると、空室が続いたときにどの費用が削減できるか見極められます。
実は、修繕費の見積もりが甘いケースが多いのが現実です。国交省の長期修繕計画ガイドラインでは、築20年を超えるRC造マンションの大規模修繕費を1㎡あたり12,000〜18,000円としています。専有面積50㎡の区分所有なら、1回の大規模修繕だけで60万円以上かかる計算になります。この数字を反映せずに利回りを算出すると、実際の手取りが大きく目減りする原因となります。
さらに、2025年度の住宅ローン減税や地方自治体の空き家活用補助金を活用する場合でも、受給要件や期限を満たさなければ想定キャッシュフローに反映できません。制度はあくまで「上乗せの利益」として扱い、基本の計算には盛り込まないほうが安全です。
シミュレーションでリスクを数値化する
一方で、数字は変動するものだと理解しておく必要があります。家賃下落率や金利上昇率を設定し、複数シナリオを用意することで、最悪ケースでも資金ショートしないか確認できます。たとえば、空室率20%・金利上昇2%のストレスシナリオで毎年50万円の赤字になるなら、その補填資金を準備しておくか、購入を見送る判断ができます。
また、金融機関によっては返済比率や自己資金比率の基準が異なります。日本政策金融公庫の資料では、自己資金が物件価格の10%未満だと審査通過率が2割以下に落ち込む傾向が示されています。つまり、シミュレーションと並行して融資条件を比べることで、より現実的な利回りを得られるわけです。
家賃保証会社の利用可否や火災保険のプラン変更も、リスクシナリオに組み込むと精度が上がります。保険料が年間3万円上がるだけで、10年後には手取りキャッシュフローが30万円以上減るケースもあります。数字を俯瞰して初めて、リスクとリターンのバランスを定量的に語れるようになるのです。
計算結果をいかす購入・運営判断
まず、手元に残るキャッシュフローが年間いくらになるかを基準に、投資目的と照らし合わせます。老後資金として月5万円の上積みを狙うなら、家賃収入が高くても管理コストが大きいファミリー向けより、空室リスクの低い築浅ワンルームが合う場合があります。逆に売却益を狙うなら、再開発エリアで将来的な地価上昇が見込める物件を選ぶ戦略が有効です。
次に、計算で見えた弱点を運営計画に落とし込みます。たとえば、10年後に大規模修繕が集中するなら、毎年のキャッシュフローから積立を行い、追加借入を回避する仕組みを作ります。また、金利上昇に備えて繰上返済の原資をプールしておくと、想定外の市場変動が起きても持ちこたえやすくなります。
最後に、計算結果を金融機関やパートナーに共有すると、適切なアドバイスが得やすくなります。数字で根拠を示せる投資家は、融資担当者との信頼関係を築きやすく、より有利な条件を引き出す可能性が高まるからです。収支計算はゴールではなく、戦略を磨き続けるためのコンパスだと心得ましょう。
まとめ
ここまで、収支計算 手順の全体像と具体的な検討方法を見てきました。要するに、購入前に家賃、費用、税金、融資の四つを漏れなく数字化し、悲観シナリオに耐えられるかをチェックすることが成功への近道です。計算した数字を運営計画に反映し、定期的に見直すことで、不測の事態が起きても慌てずに対処できます。今日紹介した手順を実践し、自信を持って次の物件選びに進んでください。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産投資市場調査2024 – https://www.mlit.go.jp
- 国土交通省 長期修繕計画ガイドライン – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku
- 日本政策金融公庫 生活衛生融資統計2025 – https://www.jfc.go.jp
- 総務省 住宅・土地統計調査2023 – https://www.stat.go.jp
- 独立行政法人住宅金融支援機構 住宅ローンデータレポート2025 – https://www.jhf.go.jp